国立科学博物館など5施設 休館継続決まる 東京都の要請を受け

12日からの緊急事態宣言の延長に合わせて再開するとしていた、国立科学博物館など都内にある国立の5つの施設について、文化庁は、東京都からの要請を受け、引き続き休館とすることを決めたと発表しました。

12日からの再開を取りやめ、休館を継続することになったのは
▼国立科学博物館、
▼東京国立近代美術館、
▼国立新美術館、
▼国立映画アーカイブ、
▼東京国立博物館の都内にある国立の5つの文化施設です。

政府は、緊急事態宣言の延長を受け、床面積の合計が1000平方メートルを超える博物館や美術館について、休業要請から営業時間の短縮に緩和しましたが、都は休館を続けるよう要請しています。

文化庁は、大型連休を含む期間は人の流れを抑えるため休館が必要だったとする一方、12日からの宣言の延長にあたり、博物館や美術館は館内で話す機会が少なく感染リスクが低いことや、同じ都内にある国立の劇場は無観客から緩和されることとの対応の違いについて、合理的な理由が都から示されていないことなどから再開の準備を進めてきました。

これに対し東京都は、宣言の延長後も休館を続けるよう10日夜、文化庁に要請していて、協議の結果、「人流抑制の観点から1か所でも人が集まる場所を減らしたい」などとする都の強い要請を受け入れ、文化庁は5つの施設を引き続き休館とすることを決めました。

文化庁の平山直子企画調整課長は「少しでも文化に触れる機会を確保したいと準備をしてきたが感染拡大を抑えたいという思いは国も都も同じなので、要請を踏まえ休館を決定した」と話しています。

文化庁と東京都 異なった対応の背景に何が

都内にある国立の5つの施設について、再開の準備を進めていた文化庁と休館の継続を要請していた東京都。両者の間でなぜ異なった対応が生まれていたのか。

文化庁幹部「劇場は開いていい 美術館は休業 合理的な理由を」

東京都の要請に対し、休館を決定する前、文化庁の幹部は「同じ都内にある国立劇場や新国立劇場は開いていいとする一方、美術館や博物館の休業を求める都の意図をはかりかねている。文化庁は国民に文化芸術を提供するために施設を設置しており、国民に説明できる合理的な理由があれば都の要請に応えてもよいが、現状では合理的な理由が示されていない」と話しています。

東京都 「継続」と「緩和」の違いはなぜ生まれたのか

緊急事態宣言の延長にあわせて、都は▼博物館や美術館などには休業の継続を要請する一方、▼劇場やテーマパークは措置を緩和して一定の客を入れたうえで開催時間を午後9時までとしました。

「継続」と「緩和」という違いはなぜ生まれたのか。

緊急事態宣言を延長するにあたって、国と都の考え方に違いがあったためです。

3回目の緊急事態宣言を出すにあたり、国は先月23日に宣言下で都道府県が行う措置の対象とする施設を示しました。

このうち▼博物館や美術館、百貨店や映画館などの「その他集客施設」は床面積の合計が1000平方メートルを超える場合、休業を要請することとしています。

一方で、▼劇場やテーマパークなどの「イベント関連施設」は原則、無観客での開催を要請することとしています。

このため、都は、先月25日から始まった緊急事態宣言で▽博物館や美術館には休業を要請し、▽劇場などには原則、無観客での開催を要請しました。

ところが、「『劇場で無観客』『テーマパークで無観客』だと実質、休業状態だ」などと困惑する声が施設側から上がったことから、都は、休業を選択した中小の事業者には独自の支援金を出しました。

そして、今回の宣言の延長。

国は「基本的対処方針」で措置を緩和し、▼これまで休業要請を行うとしてきた「その他集客施設」には営業時間を午後8時までとする時短要請を、▼原則、無観客での開催を要請してきた「イベント関連施設」には人数の上限を5000人かつ収容人数の半分までとした上で午後9時までの開催を要請するとしました。

しかし、都は、緩和せず引き続き強い対策が必要だとして▼「その他集客施設」の博物館や美術館、百貨店や映画館などには休業の継続を要請することを決めました。

その一方で、▼「イベント関連施設」の劇場やテーマパークなどは、措置を緩和することを決めました。

なぜ、「イベント関連施設」は措置を緩和したのか。

その理由について、都は、「無観客開催の要請を続けたかったが、テーマパークは無観客では開けないなど課題が噴出していた。このため当面、暫定的には国の基本的対処方針に従って措置を緩和した」と話しています。

その上で、今後、人の流れが抑制できなかったり感染状況が悪化したりした場合、「イベント関連施設」に休業を求めるなどより強い措置を検討するとしています。

文化庁長官が声明

文化庁の都倉俊一長官は11日、「文化芸術活動に関わるすべての皆様へ」という声明を出し、3回目の緊急事態宣言に伴う文化芸術関係への休業要請などで大変な混乱と負担をかけ、非常に心苦しく思うとしています。

そのうえで「感染拡大のリスクをできる限り抑えながら、文化芸術活動を続けていくことは不可能なことでは決してなく、休止を求めることはあらゆる手段を尽くした上での最終的な手段であるべきと考えます」としたうえで、可能なかぎり活動を継続してほしいと呼びかけています。

また、専門家会合の提言では、演劇など観客が大声を出さない公演や、静かな環境で鑑賞する博物館や美術館、映画館などは対策を徹底すればリスクを最小限にできるとしているとして、対策が適切に講じられている公演や展示で、来場者間で感染が広がった事例は報告されていないと伝えています。

そして「未曽有の困難と不安の中、安らぎと勇気、あすへの希望を与えてくれたのが文化であり芸術であり、断じて不要でもなければ不急でもありません。このような状況だからこそ私たちが生きていく上で必要不可欠なものであると確信しています」としています。

今回、東京都の要請を踏まえ都内の博物館など5つの国立の文化施設の再開を取りやめ、休館を継続する決断はしたものの、文化庁としての基本的な考え方を改めて明示した形です。