コロナ禍の高校生の就活 離職増える可能性も 相談窓口開設

新型コロナウイルスの影響で求人が減少したため、この春、高校を卒業後、当初の希望とは違う業種に就職したケースも出ています。
仕事になじむことができず早期の離職が増える可能性があるとして就職を支援する会社は専用の相談窓口を開設しました。

高校生の就職活動を支援する大阪の会社「ジンジブ」によりますと、ことし3月までの1年間に寄せられた高校生からの進路相談は932件で、新型コロナウイルスの影響で前の年よりおよそ30%増加しました。

「家計が苦しく進学を諦めた」という相談のほかに、当初は飲食業や宿泊業などへの就職を希望していたが「求人が少なくどうすればいいか分からない」という内容が目立ったということです。

また、希望とは違う業種への就職を決めたケースも例年より多いということです。

進学諦め就職した女性「支え大切」

この春、高校を卒業し東京都内の食品卸会社に就職した川口美織さん(20)は、母と兄の母子家庭で育ち現在、母親と2人で暮らしています。

小さいころに救急搬送された祖母の治療にあたった看護師の姿に憧れ、高校に入ってからは看護分野への進学に向けて勉強していました。

しかし海外からの輸入品を扱う会社で働いていた母親が新型コロナウイルスの影響で退職を余儀なくされ、収入がほぼなくなりました。

進学するためには入学費や授業料など少なくとも50万円は必要で、川口さんは受験勉強をしながら週に5日、夕方から夜中まで居酒屋などでのアルバイトを続けました。

収入は月に10万円から15万円ほどでぎりぎりまで進学の道をさぐりました。

しかし母親の再就職がすぐには決まらない中、家賃や光熱費など生活費のほとんどを川口さんのバイト代でまかなわなくてはならず、去年12月、進学を断念しました。

当時の心境について川口さんは、「昼勉強して、夜はバイト、朝3時までバイトしてそのあとちょっと寝て起きて勉強してという感じでとても大変でした。当時は看護師になったらコロナと闘っている一員になって頑張っているだろうなと将来のことをずっと考えてました。諦めたくはなかったですが母親にこれ以上無理はさせないほうがいいなと思い進学を断念しました」と、ときおり涙を流しながら話していました。

川口さんは進学を諦め就職活動に切り替えましたが、新型コロナの影響で当初希望した事務の求人はほとんどなかったといいます。

また企業見学なども思うように行えませんでしたが、高校が紹介してくれた民間の就職支援会社のサポートを受けてなんとか食品卸売り会社から内定をもらうことができました。
川口さんは入社したあとの研修を経て経営管理の部署で働く予定です。

勉強したいという気持ちは残っていて、通信制の大学への入学も考えていますが、今は上司や先輩に支えてもらいながら早く一人前になれるよう仕事に向きあいたいと考えています。

川口さんは「高校生はコミュニティーが学校だけで狭く限られてしまうし、急きょ就職活動に切り替えるのは難しいので周りの支えが大切だと思います。支援会社の人は学校の就職担当の先生より詳しいし求人情報もたくさんあり、わかりやすくて助かりました。入社することになっても、誰も知っている人がいない中に1人で行くので、誰に相談したらいいんだろうという不安があったので、入社した会社や民間の支援会社のフォローがとてもありがたいと思います」と話していました。

川口さんが入社した協和物産の村野隆一社長は「新型コロナの影響で業界も厳しく採用をどうしようか悩んでいたんですが、面接するうちにコロナ禍で悩んできた影響があってなのか、考え方がよりしっかりしていると感じました。大切に育てていきたいと思いますし、コロナ禍という異常事態でしか経験できないことからいろいろ学んでもらって将来にいかしてもらうような指導をしていければと思います」と話していました。
高校生の就職活動を支援する「ジンジブ」では、入社後に職場や仕事にうまくなじむことができず早期の離職が増える可能性があるとして、先月、専用の相談窓口を開設しました。

専門の相談員が原則として平日の午前9時から午後6時までLINEで将来や仕事の悩みなどについて無料で相談に応じます。

また高校を卒業したあとの進学先や仕事が見つからないという相談も寄せられていて、就職活動などのサポートも強化することにしています。

ことし7月にはIT企業の社員などが講師となり、WEB上などでビジネスのマナーやデジタルスキルなどを無料で学ぶことができる講座を開設します。

対象は、高校を卒業後、仕事が見つからなかったり、非正規雇用で働いたりしている若者で、3か月間就職に必要な知識や技術を学ぶことができます。

会社では採用に関心がある企業とのマッチングもすすめます。
「ジンジブ」の佐々木満秀社長は「コロナ禍で高校生の進路や就職の選択肢は限られ、自由に就職活動ができる状況ではなかったため、早期に離職してしまうケースが例年より増える可能性がある。高校からの支援は卒業したあとは受けることが難しいのが現状で卒業後の支援が大きな課題になっていると感じている」と話しています。

高校卒業後も相談できる環境整備を

文部科学省や厚生労働省によりますと、この春に卒業した高校生の就職内定率はことし1月の時点で93.4%と前の年の同じ時期より1.4ポイント増えています。

ただ、新型コロナウイルスの影響から企業からの求人が大幅に減少し、就職を希望する生徒も大幅に減っています。

こうした中、希望どおりの就職先が見つからず進路の変更を余儀なくされた生徒も少なくないとみられています。

また就職したあとに仕事の内容や働き方が合わず早期に離職してしまう、いわゆる『ミスマッチ』も課題となっています。

厚生労働省によりますと、平成29年3月に卒業した高校生のうち3年以内に勤め先を辞めた人の割合は39.5%でした。

この10年間は40%前後で推移していて、毎年、大学生の離職率を大きく上回っています。

その理由として、高校生の就職活動では1人の生徒が応募できる企業を1社とする「1人1社制」という慣行があるという指摘も出ています。

生徒はその企業の内定が得られなかったときにはじめて他の企業に応募するため、大学生のように複数の企業と比較しながら就職活動を行わないため、「ミスマッチ」が起きやすいとされています。

またその背景には、高校卒業後も学校に進路の相談はできるものの担当教員が新たなクラスを持つなどして十分に相談に応じられないケースがあることや、ハローワークなど公的機関への相談になじみのないケースが多いこと、それに入社した会社で同年代の同僚や先輩が少なく上司への相談もためらってしまうことなどがあるとみられています。

さらに高校を卒業しても就職や進学などの進路が決まっていない生徒が年間数万人いるという試算もあり、卒業後に職場や進路について相談し頼ることができる環境が少ないという指摘がされています。

厚生労働省は全国のハローワークで高校を卒業したあとも求人情報の提供や個別の相談に応じています。

高校生の就活スケジュールは

厚生労働省などによりますと、高校生の就職活動の一般的なスケジュールは、4月から6月ごろにかけて本人や保護者、それに学校を交えて進学や就職など進路について相談したあと、7月以降、企業による学校への求人の申し込みが始まります。

そして生徒は求人票をもとに志望先を決めて夏休みにかけて企業訪問などを行ったあと、9月上旬に採用試験の受け付けが開始され、9月中旬以降に面接などの採用選考が行われて内定が出されます。