「次々に亡くなった」25人死亡の老人保健施設 職員が語る実態

入所者と職員133人が新型コロナに感染し、入所者25人が死亡した神戸市の介護老人保健施設の職員がNHKの取材に応じ「施設では酸素投与と点滴しかできず、何度も救急要請をしたが受け入れ先がなく、次々に亡くなっていった」と実態を語りました。

神戸市長田区の介護老人保健施設「サニーヒル」ではことし4月、新型コロナのクラスターが発生し、今月7日までの25日間に入所者97人と職員36人の合わせて133人が感染、これまでに入所者25人が死亡しました。
この施設の男性職員が、施設でのクラスターの実態を知ってほしいとNHKの取材に応じました。

職員は、施設内で急速に感染が広がった背景について「自分のいるフロアは認知症の方ばかりで、マスクを着けてくださいと言っても、ものの数秒で外されてしまう。ひとりで歩ける入所者が感染したら収まりがつかないと予測していたが、歩いてほかの入所者に近づき、次々と陽性となってクラスターが起きてしまった」と語りました。

神戸市は病床がひっ迫していて、この施設には医師3人と看護師16人が常駐していることなどから、感染した入所者は原則施設内で療養するよう求めました。

職員によりますと、血液中の酸素濃度が急激に低下して人工呼吸器による治療が必要な女性もいましたが、救急搬送を要請しても「病床に空きがない」として入院できず、3日後に亡くなったということです。

職員は「治療は酸素投与と点滴しかできず、人工呼吸器はなかった。救急隊が来て病院を探したが受け入れ先がなく、やむなく帰るということが何度もあった。保健所にも入院させるよう訴えたが受け入れ先がなく、次々に亡くなっていった」と振り返りました。

亡くなった25人のうち医療機関に入院できたのは2人だけで、職員は医療がひっ迫した現状について理解は示したうえで「1日に3人の方が亡くなり、納体袋に納めるということが何日も続いた。悪い言い方をしたら見殺しではないかと感じた。力及ばずで本当に悔しい。市や県にはさらなる対策を求めたい」と胸の内を語りました。

施設はNHKの取材に対し「対応に追われており、現段階でコメントできない」としています。