復活のニューヨーク ワクチン普及で街に活気が

アメリカで一時新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻だったニューヨークでは、ワクチンの普及などを受けて経済活動を再開する動きが本格化していて、街は活気を取り戻しつつあります。

ニューヨーク市のデブラシオ市長は先月29日の記者会見で「7月1日にニューヨーク市を完全に元に戻す準備ができている。われわれにはトンネルの終わりにある光が見える」と述べました。

これに対してニューヨーク州のクオモ知事は「必要なことをすればもっと早い再開もありうる」と話しています。

映画館や飲食店 客席数の制限なくなる

ニューヨークではワクチンの普及や感染者の減少に伴って再開の動きが本格化していて、今月19日からは飲食店、小売店、美容院や映画館などの客席数制限は原則なくなり、観光名所として知られるタイムズスクエアでは人通りや交通量も増えています。

アメリカ各地から訪れる観光客の姿も見かけるようになり、中西部ミシガン州から来た女性は「これから自由の女神を見て美術館にも行く予定です」と話していました。

マンハッタン中心部の公園では今月3日からプロのミュージシャンによる演奏を楽しむ催しが始まり、訪れていた地元の男性は「こうした催しを楽しむことができるようになりとても感動しています」と話していました。

ニューヨークの魅力のひとつとされるエンターテインメント産業ではブロードウェイのミュージカルの再開が最も難しいとされ、去年3月から休演が続いていますが、ことし9月中旬から再開されることが決まりました。

俳優のロー・ハートランフさんは「去年は9回しか公演できず落ち込みましたが、今は再開が決まりとても興奮しています。最高のパフォーマンスを披露したいです」と話していました。

一時はロックダウンも… 観光客にもワクチン接種へ

ニューヨークで新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したのは去年3月。

ニューヨーク市では1日に1700人を超す感染者が確認されるようになり、3月22日には経済活動を厳しく制限するいわゆるロックダウンに踏み切りました。

この措置により、警察や医療関係者など一部の仕事を除いて社員や従業員などの出勤が禁じられたほか、住民は外出を控え自宅にとどまるよう求められました。

しかし感染拡大は深刻化し、増える感染者に対応するため大規模なイベントなどを行う施設が臨時の病院として改装され、セントラルパークにも患者を受け入れるためのテントが設置されました。

4月にはニューヨーク州で1日の死者が799人に上りました。

その後、マスクの着用と、人と人とが一定の距離を取る「ソーシャル・ディスタンシング」が浸透したこともあり、感染拡大のピークは過ぎ、段階的に経済活動が再開されます。

しかしことし1月には再び感染拡大が深刻化し、ニューヨーク市で1日に確認された感染者は疑いも含めると7991人と過去最多となりました。

これを受け感染防止対策の徹底が再度はかられ、ワクチン接種も始まる中で感染者は徐々に減り始め、最近では市の感染者の数は1日あたり1000人前後となっています。

ニューヨーク市の人口はおよそ840万人ですが、これまでの感染者は疑いも含めると93万5000人、亡くなった人はおよそ3万2000人にのぼっています。

デブラシオ市長は大幅に減った観光客を呼び戻すため、観光客に対してワクチン接種の機会を設ける計画を発表していて、州が承認すればタイムズスクエアなどの観光地に移動式の接種施設を設け、1回の接種で完了するジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを使用するということです。

ワクチン接種は人口の4割 最大15万円の給付も

アメリカで景気回復が加速し経済活動正常化の目標が明確になっている背景には、ワクチンの普及と大規模な経済対策があります。

経済対策ではバイデン政権発足後、1人あたり最大15万円の現金が給付されました。

この結果、消費意欲が刺激され、3月の小売売上高は前の月に比べて9.8%の大幅な伸びを記録しています。

またワクチン接種も進む中で国内旅行など人の移動も活発になり、今月2日の日曜日、全米の空港を利用した人の数は162万人まで上昇しました。

これはアメリカで非常事態宣言が出された前日にあたる去年3月12日以来の多さです。

さらにバイデン政権では中小の飲食業を支援するため、今月から従業員の給与の支払いや家賃補助に充てられるよう日本円で3兆円規模の対策を始めていて、数千の飲食店があるニューヨークにとっては大きな支援になると期待されています。

ワクチンの接種はペースの鈍化も指摘されていますが、今月7日現在、接種を終えた18歳以上の人は全米で1億900万人あまり、接種率は42.6%となっていて、ニューヨーク市も42%とほぼ同じ水準となっています。