“嗅覚が戻らない” コロナ後遺症 終わらない恐怖

“嗅覚が戻らない” コロナ後遺症 終わらない恐怖
「嗅覚が戻らない」「全身のけん怠感が続く」
新型コロナウイルスに感染し回復したあとも後遺症とみられる症状に悩む人は少なくありません。
療養期間を終えて3か月以上がたっても、元どおりに体調が回復するのか不安を感じているという30代の女性。
女性は特に同じ若い世代の人たちに「軽症」で終わらない病気の怖さを知ってほしいと訴えています。
(大阪拠点放送局 記者 杉本志織 / おはよう日本 記者 杉山大樹)

38度台の高熱「コーヒーのにおいがなくなった」

「毎朝、コーヒーを飲んでるんですけど、そのコーヒーのにおいが朝からなくなって、ボディークリームや、においのきつい香水のにおいもなくなっていたので、すごい不安になりました」
こう話すのは、大阪府内に住む30代の女性です。

去年12月、親族の新型コロナウイルスへの感染が判明。

女性は37度台の発熱があったことから、すぐに医療機関を受診して、2日後に陽性と判明しました。

当初、症状は筋肉痛や軽いせきのみでしたが、38度台の高熱が出た日を境に嗅覚に異常がみられるようになったといいます。
幸い、女性に肺炎などの症状はみられず、ホテルでの10日間の宿泊療養を終えて自宅に戻りました。

その際、嗅覚の異常は続いていましたが、自宅に戻ったあとは、時間の経過とともに徐々に症状が回復していくのを感じ、ほっと胸をなで下ろしていたといいます。

感染から1か月 またコーヒーのにおいが…

しかし、感染から1か月以上がたったことし1月中旬、日課のコーヒーを飲もうとした際、女性はある異変に気付きました。
30代女性
「嗅覚がまたなくなってしまって。完全にゼロ、全くにおわないというわけではないんですけど、0距離で注意深く布とかを鼻にあててかぐとにおいがするという感じで」
同時にけん怠感や全身の筋肉痛、頭痛などの症状も現れたという女性。

けん怠感や頭痛の症状が重なるとベッドから動くこともできなくなり、在宅で行っている仕事にも支障が出ました。

「どこに相談していいのかわからない」

医療機関にかかりたいと思ってもどこに相談にいけばいいのかわからないといいます。
30代女性
「インターネットでコロナ後遺症に対応する病院があるのかどうか調べたんですが、大阪にはあんまりないみたいなので、SNSやインターネットで情報を探している感じです。原因が原因だし、解決法がないのかなと思って」
後遺症とみられる症状を訴える人を受け付けている医療機関はまだ少ないのが実情で、女性のように「どこに相談していいのかわからない」と感じている人は少なくありません。

そうした人たちの戸惑いや不安の声はインターネット上にもあふれています。

回復するか不安な日々…「甘く見ていた」

女性と同居していた高齢の両親もともに新型コロナに感染しましたが、後遺症とみられる症状が現れたのは女性1人だけでした。

感染から3か月以上がたち話を聞くと、女性の嗅覚は7割ほどまで回復したと感じているといいますが、完全に回復するのかどうか不安な日々が続いています。

女性は、特に同じ若い世代の人たちに「軽症」で終わらない新型コロナの怖さを知ってほしいと訴えています。
30代女性
「コロナに感染して、私はそこまで重症化しませんでしたが、後遺症がここまで続くとは思ってもみませんでした。嗅覚がないと生活の中での楽しみもなくなり、ガス漏れなどの危険も察知できなくなり、この先、回復するのか不安です。ちょっと甘く見てたなというところはあります」

まだ分かっていないことが多い「後遺症」

新型コロナの後遺症をめぐっては、まだ分かっていないことも多く、実態を把握しようと、厚生労働省の研究班が調査を進めています。

そうした中、後遺症専門の外来を設けている都内のクリニックには、いったん「回復した」とされたあとも、新たな症状を訴えて訪れる患者も多くなっているといいます。

後遺症専門の外来を設けているクリニックの平畑光一院長が分析した後遺症の症状がこちらです。

▽けん怠感 94%
▽気分の落ち込み 87%
▽思考力の低下 83%
▽頭痛 81%
▽息苦しさ 77%
▽体の痛み 76%
▽不眠 73%
▽嗅覚障害 51%
▽脱毛 50%
▽味覚障害 44% 
(診察で1368人を調査 複数回答 4月3日現在 出典「ヒラハタクリニック」)

「気分の落ち込み」「思考力低下」「脱毛」は、ウイルスからの直接的な影響に加えて、後遺症が長引くことに対して、家庭や職場など、周囲からの理解が得られないことから来るストレスが原因になっているとみられるケースもあるということです。

平畑医師は「周りの人が後遺症のつらさを理解してあげるだけでも、後遺症に悩む人の精神的な支えになる。ひとりで悩みを抱えることなく、まずは信頼できるかかりつけ医に相談してほしい」と話しています。

再び、新型コロナウイルスの感染者が急増している今、改めてこの病気の”怖さ”を一人一人が認識するとともに、早急に相談できる環境を整えていく必要があると思います。
大阪拠点放送局 記者
杉本志織
おはよう日本 記者
杉山大樹