宣言の効果と経済的影響 “強い規制を短く” 専門家が指摘

新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の効果と経済的な影響について東京大学の経済学者のグループが最新のシミュレーション結果を公表しました。
グループでは「強い規制を短く実施するほうが、総合的にはよい」と指摘しています。

このシミュレーションは、東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師のグループが公表したもので、今月2日までのデータをもとに東京についての宣言の解除と、その後の感染状況や経済への影響などの関係について計算しました。

シミュレーションでは、変異ウイルスの感染力を従来の1.4倍とし、宣言の効果を去年春の1回目の宣言と同程度と想定しました。

その結果、東京では5月の第4週に新規の感染者数が1日500人を下回った時点で宣言を解除した場合、感染者は再び増加に転じ、7月中旬には緊急事態宣言が必要なレベルになるという計算となり、経済損失はおよそ3兆5000億円となりました。

宣言の期間を延長して7月の第1週に200人を下回った段階で解除した場合は、10月の第3週に1000人を超える計算になりましたが、想定どおり高齢者へのワクチンの接種が進んでいれば、医療への負担が少なくなるため、宣言を出すレベルには達しないという結果になったということです。

想定される経済損失は3兆円余りで、500人で宣言を解除した場合に比べておよそ5000億円少なくなりました。

一方、宣言の効果を去年の1回目よりも少ないと想定(※)した場合は、東京での感染者数は増加はしないものの横ばいで推移し、1日500人を下回るには9月第1週までかかるという計算になりました。

さらに1日200人を下回るのは10月第3週で、その時点まで宣言を続けた場合の経済損失は4兆3000億円余りとなりました。

仲田准教授は「緩い規制を長く続けるよりも強い規制を短く実施するほうが、総合的にはよい。先週の人出は去年5月ほどには減っていないと思うので、感染者数が横ばいとなり、緊急事態宣言がダラダラと続く状況が心配される」とコメントしています。

研究グループは、毎週、火曜日にウェブサイトでシミュレーションの情報を更新しています。

※去年5月の経済活動と、ことし1月の経済活動の平均の経済活動=効果を想定