アメリカ アジア系住民へのヘイトクライム 去年の2.6倍に

アメリカの主要都市でアジア系住民に対する差別や偏見に基づくヘイトクライムとみられる事件が、ことしに入ってからの3か月間で去年の同じ時期に比べておよそ2.6倍に増えたことが、大学の調査でわかりました。

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大以降、アジア系住民をねらったとみられる暴力事件が後を絶ちません。

西部カリフォルニア州のサンフランシスコでは、5月4日にも市の中心部で日中、アジア系の女性2人が見ず知らずの男に刃物で刺されました。

地元メディアによりますと、警察は逃走していた男を逮捕し、ヘイトクライムの可能性もあるとみて捜査しています。

カリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校の「憎悪・過激主義研究センター」が全米の16都市を対象に行った調査では、アジア系をねらったヘイトクライムとみられる事件が、ことし1月から3月までの3か月間に95件と、去年の同じ時期の36件に比べおよそ2.6倍に増えています。

このうちニューヨークではおよそ3.2倍、サンフランシスコでは2.4倍と特に増えているということです。

アメリカでは事件が相次いでいることを受けて、先月、議会上院でヘイトクライムの取締りを強化することなどを定めた法案が可決し、早ければ今月中にも成立する見通しです。

サンフランシスコ 中華街をボランティアがパトロール

アメリカでアジア系の住民に対する暴力事件が後を絶たないことを受けて、ボランティアによる対策の動きが広がっています。

このうち住民の3人に1人がアジア系である西部カリフォルニア州のサンフランシスコでは、中心部にある中華街でボランティアのグループによるパトロールが毎日、行われています。

5月4日に行われたパトロールでは、グループのメンバーが通行人に声をかけて、困っていることがないか聞き取っていました。

また、不審な人物を見かけた場合にはその様子を動画で撮影したり、人物の特徴をメモに書き留めたりしていて、必要に応じてこうした情報を警察に伝えることにしています。
グループを立ち上げた中国系アメリカ人のリアナ・ルイさんは「中華街にはことばの壁があるために被害を受けても警察に通報しない人もいます。住民にどのような案件なら通報すべきかなど手助けしていきたいです」と話していました。

ニューヨーク アジア系女性らに配車サービスの料金補助

アジア系の住民が差別や暴力事件などの被害にあわないようにするためのボランティアによる対策は、ニューヨークでも始まっています。

その1つが、4月から始まった通勤などで公共交通機関の代わりにウーバーなどの配車サービスを利用した際に料金を補助する取り組みです。

ニューヨークでは4月、日本人が地下鉄のホームで見ず知らずの男に突然、腕をつかまれ線路に落とされそうになったほか、別の日本人も地下鉄の車内で男に顔を殴られてけがをするなど、公共交通機関での事件が相次いでいます。

取り組みはアジア系の女性や高齢者などが対象で、配車サービスを利用したあとにインターネット上で請求すると最大で40ドル、日本円でおよそ4300円が週に5回まで補助されます。
取り組みを始めたのは韓国系アメリカ人の歯科医師、マデリン・パクさんで、次第にインスタグラムで話題となり、これまでに全米やカナダ、それにイギリスから1500万円余りの寄付が寄せられたということです。

いまでは1日に150件以上の利用があるといいます。パクさんは「恐怖を感じながらもタクシー代が払えず、地下鉄で通勤している人が多くいると感じた。ゆくゆくはこうした取り組みが必要のない社会になってほしい」と話しています。
利用者の中には日本人もいます。ニューヨークで生まれ育ち、不動産会社で働く志村明理さん(23)は先月、地下鉄に乗っていたときに突然、差別的なことばをかけられ、恐怖を感じたことをきっかけに、夜間の帰宅時に配車サービスを使うようになりました。
志村さんは「地下鉄にたくさんの警察官が乗車するようになりましたが、それでも何が起こるか分かりません。安全な交通手段を提供してもらうことで、多くの人が助けられていると思います」と話していました。