鉄道のドライブレコーダー 大手各社の設置状況 十分広がらず

事故の状況などを記録するドライブレコーダーについて、NHKが大手鉄道会社の設置状況を調べたところ、設置を進める会社がある一方で、一部の会社は設置しておらず、まだ十分に広がっていないことが分かりました。

4月2日、台湾で特急列車が脱線した事故では、運転台に設置されたカメラに線路脇で横転したトラックと衝突した様子が記録されていて、原因の調査に活用されています。

国内では、鉄道車両に映像による記録装置いわゆるドライブレコーダーの設置は義務づけられていませんが、16年前のJR福知山線の脱線事故のあとの国の検討会では、設置が望まれるとされました。

NHKは4月、JRと大手私鉄合わせて22社にドライブレコーダーの設置状況やその理由についてアンケート調査を行いました。

その結果、JR各社では、新幹線を除く在来線でJR西日本がすべての編成に、JR東海がほぼすべての編成に、JR東日本は首都圏を走るすべての編成、全体では6割近くに設置していました。

理由は、事故などの際に警察の現場検証に役立ち、運転再開までの時間を短くでき、安定運行につながるからなどとしています。

JR九州は、設備の点検に役立つとして一部編成に設置し、今後導入を進めるとしています。

一方JR北海道とJR四国は設置している編成はなく、今後も未定としています。

大手私鉄各社では、京王電鉄、東急電鉄、京阪電鉄がすべての編成に設置しているほかは、試験導入も含め一部編成にとどまるか、全く設置していないという回答でした。

鉄道工学の専門家で日本大学の松本陽上席研究員は「映像の記録は事故の調査だけでなく、事故防止にも役立ち、行政が鉄道車両に設置することのメリットを整理して普及が進むように促していくことが必要だ」と指摘しています。

井の頭線に設置されているドライブレコーダー

東京の渋谷駅と吉祥寺駅を結ぶ「京王井の頭線」の運転台に設置されているドライブレコーダーの映像です。

映像は、線路とともに線路の両脇のホームの様子や踏切の外側の道路の様子も記録されていて、ホームで電車を待っている人の動きを確認することができます。

また、線路や電車に電気を送る架線、電柱などの設備も映っているため、異常がないか監視することもできます。

京王電鉄ではおととしに全編成に導入しました。

事故時の状況把握を速やかに行うことで運転再開までの時間を短くできるほか、飛来物が架線にかかるなど運行に影響のある事象の確認やホームから身を乗り出すなど運行の妨害行為を記録して、悪質な場合は警察に映像を提供することもあるということです。

JR福知山線脱線事故を教訓に

国内では、鉄道車両に映像による記録装置いわゆるドライブレコーダーの設置は義務づけられていませんが、運転状況を記録する装置の設置が原則、義務づけられています。

16年前のJR福知山線脱線事故を教訓に列車の最高速度が低い場合や構造上の理由によりやむを得ない場合を除き、列車の速度やブレーキの操作状況、運転指令と運転士との通話記録などを記録する必要があるとしています。

いわゆるドライブレコーダーの設置は、当時の検討の過程で、今後、設置が望まれるとされるにとどまりました。

大手22社にアンケート

NHKは4月、JRと日本民営鉄道協会に所属する大手私鉄合わせて22社に保有する編成のドライブレコーダーの設置数、その理由などについて、アンケート形式で質問を送り、全社から回答を得ました。

JR各社は

JR各社では、新幹線を除く在来線で、JR西日本がすべての編成に、JR東海は他社線に乗り入れる2編成を除くほぼすべての編成に設置したということです。

JR東日本は首都圏を走る編成はすべて、全体では6割近くで設置したということです。

設置の理由について、事故などの際に警察の現場検証が短くなり安定運行につながることや再発防止に役立つからなどとしています。

またJR九州は、設備の点検に役立つとして一部編成に設置し、今後導入を進めるとしています。

一方JR北海道とJR四国は、全く設置していないと回答しています。

設置しない理由についてJR北海道は「義務化されている設備はしっかり設置し、その他の設備の設置は未定です」とし、JR四国は「整備およびランニングコストなどに多額の費用を要するため、設置は見送っている」としています。

大手私鉄各社は

大手私鉄各社では、京王電鉄、東急電鉄、京阪電鉄がすべての編成に導入しています。

また導入は一部編成にとどまる名古屋鉄道は「着実に設置を進める」、西日本鉄道は「新車導入や更新で設置していく予定」、東武鉄道は「事故などの原因究明を目的に現在2編成に試験的に設置しているが、早期の運転再開にも寄与すると考えられる」として、今後、設置を進めていきたいとしました。

また2編成に設置している京成電鉄、1編成に設置している阪神電鉄、6編成に設置している相模鉄道は今後については未定としています。

西武鉄道、小田急電鉄、京急電鉄、東京メトロ、近鉄、南海電鉄、阪急電鉄では設置している編成はなく、いずれの会社も今後の設置も未定だとしています。

設置しない理由について、西武鉄道は「ドライブレコーダーは、搭載により安全性が上昇するというものではないため、安全設備としての優先度は低くなっています。投資効果を整理したうえで設置を検討していきたい」としています。

小田急電鉄は「事象発生を未然に防ぐことに注力し、ホームドアの設置などに取り組んでいます」としています。

京急電鉄は「現場検証の時間短縮などに活用できるのであれば検討可能性あり」としています。

東京メトロは「踏切は全線で1か所のみで、ホームについてはホームドアを8割以上で設置し鋭意進めているところです」としています。

近鉄は「他の安全設備を優先したい」としています。

南海電鉄は「保守メンテナンスの効率化も含め、AI技術を取り入れた総合的に活用できる装置の設置が望ましいと考えています」としています。

阪急電鉄は「新技術を取り入れて安全確保を実現していくための1つの手段として、活用方法を含めて検討中」としています。

東急電鉄はすべて運転台に設置

東急電鉄では、3年前の平成30年に所有しているすべての182編成の運転台にドライブレコーダーを設置しました。

縦横数センチ程度の大きさの自動車用と同じものを運転台の上に設置しています。

夜間でもおよそ200メートル先まで撮影できるとしていて、運転中の映像が1週間程度保存するできるということです。
東急電鉄の担当者は「事故が発生した時などに、何が起きたかということを口頭だけではなく映像で確認することで、運転の再開を早めるという効果に期待している」と話していました。

専門家 事故調査だけでなく施設改良 運転士技術向上にも

鉄道工学の専門家で、国の運輸安全委員会の鉄道部会長を務めた日本大学の松本陽上席研究員は、事故の直前の状況が分かるので原因調査に役立つだけでなく、踏切など施設の改良や運転士の技術の向上にもつながるとして設置することが望ましいとしています。

そのうえで、ドライブレコーダーがタクシーやバスでここまで普及している中で、行政が鉄道車両に設置することのメリットを整理して普及が進むように促していくことが必要だと指摘します。

松本上席研究員は「事故には至らなかった“インシデント”事故の予兆は、映像を見るということで非常によく分かる。ドライブレコーダーが事故の未然の防止にも非常に役に立つということがいまひとつ理解されていないと思う。“インシデント”に活用できるということを認識していただければ、もっと普及は進むのかなと思っています」と話していました。