東京 アパート階段崩落で住人死亡 建設会社など関係先を捜索

4月、東京 八王子市のアパートで階段の一部が崩れ落ちて50代の女性が死亡した事故で、腐食が確認された木材には、法律で義務づけられている防水加工などの対策がとられていなかったことが分かりました。警視庁は2日、業務上過失致死の疑いで関係先を捜索し、詳しいいきさつを調べることにしています。

捜索を受けたのは、工事を行った神奈川県相模原市の建設会社、「則武地所」など合わせて7か所です。
4月17日、八王子市内のアパートで2階につながる階段の一部が突然崩れ落ち、住人の大手里美さん(58)が転落して死亡しました。

警視庁によりますと、階段は鉄製ですが、1階と2階の間にある踊り場に木材が使われていて、階段との接続部分が腐食していたということです。

アパートの外付けの階段に木材を使う場合、防水加工などの腐食を防ぐ対策が法律で義務づけられていますが、現場のアパートではこうした対策がとられていなかったことが捜査関係者への取材で分かりました。

踊り場には階段との接続部分だけでなく壁との隙間からも雨水が浸透し、広い範囲で腐食が確認されたということです。

関係者によりますと、アパートの設計段階では木材の使用は想定されていなかったということで、警視庁は捜索で押収した資料を分析するなどして詳しいいきさつを調べることにしています。

築8年のアパート 階段と踊り場の接続部分 木材が腐食

警視庁などによりますと、事故が起きたアパートは木造3階建てで、8年前の2013年に建設されました。

工事を行ったのは、2日、捜索を受けた神奈川県相模原市の建設会社です。

また、設計は横浜市の建築士事務所が担当し、2012年に設計図を民間の検査機関に提出しています。

アパートが建設された当時は、検査で問題は指摘されませんでしたが、今回の事故では、1階と2階の間にある踊り場と2階の廊下とを結ぶ鉄製の階段が突然、崩れ落ちました。

警視庁によりますと、踊り場と2階の廊下は木造で、このうち、階段と踊り場との接続部分に使われていたくぎがさび、その周辺の木材が腐食していたことが分かったということです。

さらに、現場検証を行った結果、踊り場と外壁の隙間からも雨水が浸透し、腐食が広範囲にわたっていることが確認されました。
アパートの外付けの階段に木材を使うことは法律で原則、禁止されていて、使用する場合は防水加工などの腐食を防ぐ対策が義務づけられていますが、捜査関係者によりますと、現場のアパートではこうした対策がとられていなかったということです。

一方、関係者によりますと、アパートの設計段階では木材の使用は想定されておらず、建築士事務所は警視庁に対し「事故が起きて初めて木材が使われていることを知った」と説明しているということです。

当初の設計と異なる工事が行われた上、木材の腐食を防ぐ対策もとられていなかったのはなぜなのか、詳しいことはまだ分かっていません。

アパートの住人は、建物にも被害が出ているおそれがあるとして、事故から2週間あまりがたった今もホテルなどに避難しているということです。

警視庁は捜索で押収した資料を分析するなどして、工事が行われた当時の詳しいいきさつを調べることにしています。

亡くなったアパートの住人

亡くなった大手里美さん(58)は、アパートの3階の部屋で夫と一緒に暮らしていました。

警視庁によりますと、事故が起きた日は1人で外出していたということです。

そして午後2時ごろ、外出先から帰宅したところで階段が崩れ落ち、およそ2メートル下に転落しました。

大手さんは頭を強く打って病院に搬送されましたが、5日後に死亡しました。

関係者によりますと、大手さんは東京 町田市のデパートの食品売り場で働いていたことがあり、職場では優しい人柄で機転も利くと評判だったということです。

2日は大手さんの葬儀が八王子市内で営まれ、職場の人たちも多く参列して突然の死を悼んでいました。

専門家「外階段に木材を使うこと 通常はありえず」

今回の事故について、欠陥住宅などの問題に詳しいNPO法人「建築Gメンの会」の副理事長で、一級建築士の田岡照良さんは「外階段は屋外に露出しているため、木造の場合は雨水がしみこんで木が腐ってしまい、非常に危険だ。特に、くぎで止めると鉄に水分が付着し、そのまわりの木が腐りやすくなる。通常、今回のような外階段に木材を使うことはありえず、なぜそのような工事が行われたのかが分からない。工事そのものはもちろん、設計図通り適正に行われているかをチェックできていなかったことも問題だ」と指摘しています。

国土交通省 緊急の現地調査を東京都と神奈川県に要請

今回の事故を受けて、国土交通省は現場のアパートと同じ建設会社が工事を行った物件について、緊急の現地調査を行うよう東京都と神奈川県に要請しました。

捜索を受けた建設会社は神奈川県相模原市にあり、現場のアパートのほかにも複数の共同住宅で工事を行っています。

NHKが各地の自治体などに取材したところ、その数は東京都と神奈川県で少なくとも134に上ることが分かりました。

こうした中、国土交通省は東京都と神奈川県に対し、該当する共同住宅について緊急の現地調査を行うよう要請しました。

NHKが入手した要請の文書によりますと、外付けの階段に木材が使われていないかを調査したうえで、使われている場合は劣化や腐食がないかを確認し、危険性がある場合はオーナーなどに対し、改善の指導や注意喚起を行うよう求めています。

要請を受けて、現在、該当する共同住宅がある自治体がそれぞれ調査を進めているということです。

このうち、要請に先立って調査を行った東京・八王子市では、同じ建設会社が手がけた物件が少なくとも25あり、目視による調査の結果、ただちに危険性があると判断されたケースはなかったということです。

ただ、階段がゆがんでいるなどの不具合は数か所見つかったということで、市では今後、オーナーに注意を呼びかけることにしています。

また、神奈川県厚木市では、16の物件のうち、1か所で外付けの階段の一部が劣化して剥がれ落ちていたケースがあったということです。

国土交通省は今月中をメドに現地調査の結果について報告を求め、今後の対応を検討することにしています。

建設会社が関わった物件 過去にも階段の踏み板落下でけが人

捜索を受けた建設会社が関わった物件をめぐっては、神奈川県内にある別のアパートでも10年前、階段の踏み板が落下して男性がけがをしていたことが分かりました。

男性はNHKの取材に対し、「一歩間違えれば自分も転落していたかと思うととても怖い」と話しています。

「則武地所」が関わった神奈川県相模原市のアパートに住んでいた30代の男性によりますと、10年前の2011年、アパートの2階につながる階段を上っていたところ、踊り場の直前にある踏み板1枚が突然外れ、落下したということです。

男性はそのまま、できた隙間に体が挟まり、腹や足のすねにけがをしました。

NHKが入手した資料によりますと、アパートは事故の2年前の2009年に建設されたばかりでした。

当時の状況について、男性は「両手に買い物袋を持って階段を上っていて、左足をかけた瞬間に踏み板が落ち、隙間にすっぽりとはまってしまいました。ほぼ新築の状態だったのでそんなことが起きるとは思っておらず、一瞬の出来事で放心状態になりました」と話しています。

男性によりますと、事故の後、建設会社の社員が謝罪に訪れ、階段の補強工事も行われたということですが、男性は事故の恐怖が頭から離れず、すぐに別の場所へ引っ越したということです。

八王子市のアパートで起きた事故について、男性は「一歩間違えれば自分も転落していたかと思うととても怖いです。私がけがをしてから10年後にまた事故が起きたことを関係者には重く受けとめてほしい。再び犠牲になる人が出ないよう、すぐに対策をとってもらいたいです」と話していました。