ミャンマー 岐路に立つ日系企業 クーデターによる混乱に拍車

ミャンマーでは、クーデターの発生から1日で3か月がたちました。軍による市民への激しい弾圧が続き、現地の人権団体は、これまでに759人が犠牲になったとしていて、経済や社会の混乱にも拍車がかかっています。
こうした中、現地に進出している日系企業も岐路に立たされています。

ミャンマー経済に深刻な打撃

軍のクーデターによる混乱は、民主化の進展に伴う、外国企業の投資拡大の恩恵を受けてきたミャンマー経済に深刻な打撃を与えています。

ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」とも呼ばれ、400社以上の日系企業が進出していますが、クーデターの影響で外国からの投資は冷え込み、物流や金融サービスも滞っています。

さらに、軍や警察が市民への発砲を繰り返すなど、治安上の不安も高まり、現地の日系企業の間では、工場の稼働を停止する動きが相次いでいます。
日系企業が数多く進出するティラワ経済特区では、自動車メーカーの「スズキ」が2月8日以降、操業を停止し、鉄鋼大手の「JFE」も操業をとめています。
また、「トヨタ自動車」は、新工場が、ことし2月に稼働を始める計画でしたが、今も稼働できていません。

取材班が現地を訪れた際も、資材や製品を運ぶトラックが行き交う姿は見られず、多くの工場で、人の姿はまばらでした。

事態の改善が見えないことから、現地の駐在員を帰国させる日系企業が増えています。

日系企業で働き、自宅待機が続いているミャンマー人の男性は「クーデターによって、経済は悪化の一途をたどっている。私たちができることは何もありません」と話していました。

こうした混乱を受けて、アジア開発銀行は、ミャンマーのことし9月末までの1年間の経済成長率が、マイナス9.8%に落ち込むという見通しを示していて、高い成長が続いてきたミャンマー経済が、クーデターによって暗転しています。

人権上の観点から企業が批判を受けるリスクも

ミャンマーに進出する外国企業の間では、治安上の不安に加えて、軍に協力的だと見なされ、人権上の観点から批判を受けるリスクも高まっています。

ミャンマーでは、軍の幹部が支配する大手複合企業などが経済面で強い影響力を持っているとされ、その収益が軍の資金源になっているとも言われています。

市民の間では、クーデターをきっかけに、軍と関係する企業への批判が高まって、商品の不買運動が広がっているうえ、こうした企業とビジネスを手がける外国企業にも厳しい目が向けられています。
日系企業では、大手ビールメーカーの「キリンホールディングス」が軍の幹部が支配する大手複合企業と合弁事業を行っていますが、クーデターを受けて提携を解消する方針を発表し、協議を続けています。

しかし、提携解消にはまだ至っておらず、キリンの株主で世界最大の政府系ファンドを運営するノルウェー中央銀行からは、株式を手放す可能性があるリストに追加されました。

背景には、欧米の投資家や人権団体を中心に、企業が人権を守っているかをチェックする姿勢が強まっていることがあります。
最大都市ヤンゴンで、日系のゼネコンや官民ファンドなどが現地企業と合弁で手がける、オフィスや商業施設が入る複合施設の開発事業についても、国際的な人権団体が、軍との関わりが疑われると指摘しています。

人権団体は、この施設の建設地が軍事博物館の跡地であり、賃料の支払いが、軍への資金提供につながっているおそれがあるとして、国連人権高等弁務官事務所に調査を要請しました。

こうした指摘について、事業を進める日系企業は「合弁相手の企業が建設予定の土地をミャンマー政府の一機関である国防省から借りているが、最終的な受益者は国防省ではなく、ミャンマー政府だと認識している」と取材に対してコメントしています。

日系企業の間では、軍が経済に深く関わるミャンマーでビジネスを続けることが、人権を軽視しているという指摘につながりかねないという懸念も出ていて、ミャンマーでの事業にどう向き合っていくかが問われています。

人権問題で企業はきぜんとした態度をとる必要

国際的なNPOで、ビジネスと人権の問題について企業に助言を行う「BSR」東京事務所の永井朝子マネジング・ディレクターは「日本企業は難しい立場におかれて、対応に苦慮していると思うが、最も重要なのは、人権侵害を止めることで、国際的な視点から対応が求められている。どこまでを、というのは難しいが、国軍の資金源を絶つことに最初に対応する必要がある。事業活動がグローバル化する中で、今までのやり方でいいのかと問うことが非常に重要だ」と話しています。

また、アジアでの企業活動に詳しい、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒向浩二主席エコノミストは「ミャンマーに対する国際社会からの厳しい視点に立った企業であること、そして、国軍への資金環流には一切関わっていないということを訴求していくしかないと思う。イメージは、毀損すると回復に時間がかかるので、企業はきぜんとした態度をとる必要がある」と話しています。