40年超えた原発の運転 どう考えるか

運転開始から40年を超えた関西電力の3基の原子力発電所について福井県の杉本知事は28日、運転の延長に同意する考えを表明しました。
関西電力は準備が整った原発から再稼働させる考えで、福島第一原発の事故のあと40年を超えた原発の再稼働は全国で初めてとなります。

悲願の1つ

なるべく長く原発を運転する。
原発事故のあと長期運転に制限が設けられる中、40年を超える原発の再稼働は政府や電力会社にとって悲願の1つでもありました。

温室効果ガスの大幅な削減には、脱炭素電源である原子力が欠かせないと国内外に発信し続けてきたことなどが理由です。

政府は2030年度の時点で電力のうち原発の比率を20%から22%にすることを掲げてきました。しかし、福島第一原発の事故のあと再稼働した原発は9基で、現在、発電全体に占める割合は6%にとどまっています。

新たに原発を建設することへの理解が得られていない中、現状、政府は原発の新設や増設を想定していません。

こうした中、2割程度という目標を達成するには、さらに多くの原発で40年を超えた運転の延長をしていくしかありません。
ただ、そのために必要な国の審査は電力関係者の言葉を借りれば、「相当厳しい」とされ、対策工事には多額の費用もかかり、電力会社の中には廃炉を選択したケースも少なくありません。

“長期運転”と“新たな交付金制度”

そうした状況で、電力各社は原発の寿命を延ばすためのある案を規制当局に働きかけたこともありました。

2017年1月、電力各社の幹部が原子力規制委員会のメンバーと会合を開いた際、「審査などへの対応で原発が長期停止し、運転が可能な期間が大幅に減少している」としたうえで、停止中は原子炉などの安全上重要な設備の劣化は技術的に問題ないことから、停止した期間を運転期間に算入しないように提案したのです。

この提案に対し、規制当局である規制委員会は「原子力利用のあり方に関する政策判断にほかならず、規制委員会が意見を述べる事柄ではない」との見解をまとめ、検討が進むことはありませんでした。

ただ、政府や電力会社の関係者からはその後も「運転期間から停止期間を除外すべきだ」という意見は根強く聞かれます。

現在、政府ではエネルギー基本計画の見直しの議論が進められ、梶山経済産業大臣は「次期エネルギー基本計画の中で2050年までの道筋も含め、将来の原子力の道をさらに明確化するよう全力で取り組む」などと述べて、今後もエネルギーの安定供給や脱炭素社会の実現に向けて、原発を活用する方針を示しています。

このためには原発の長期運転が必要で、政府はそれを後押ししようとすでに複数ある交付金制度に加えて、さらなる制度を創設することを検討しています。

新たな交付金制度が決まると、自治体に入る交付金は1つの発電所あたり最大25億円になる見通しで、再稼働すると福井県に最大50億円が交付されることになります。
こうした交付金について原発の運転延長に、なぜ税金から巨額の交付金を出すのか理由の説明を政府が尽くしたとは言えないと指摘する研究者もいます。

経年劣化のリスクは

運転延長による経年劣化のリスクを指摘する声もあります。

NPOの代表は原子炉内は強い放射線で劣化が進んでいるおそれがあるとして「事故で原子炉に緊急で水を入れると、急激な温度変化で破損などにつながりかねない」と訴えています。

さらに国内では、40年を超える長期運転の経験はほぼないことから、関西電力に安全側に立った丁寧な対応が必要になると話す専門家もいます。

関西電力は、原子炉については超音波試験で原子炉全体に傷がないことを確認したほか、原子炉の中に入れている金属の試験片を調べた結果、運転を延長しても問題ないと評価したとしています。

そして、運転開始から50年を前に試験片の検査を再び実施するとしたほか、再稼働の作業には人員を増強して臨むなどの対応も決め、安全確保を進めるとしています。

長期運転をめぐってはこのほか、そもそも原発に頼らずに、再生可能エネルギーによりシフトして、脱炭素を目指すべきといった政策そのものの見直しを求める意見もあります。

先月、未曾有の原発事故から10年となりました。エネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現は重要です。
同時に多くの生活を奪った重大事故の教訓も決して忘れてはいけません。

国と電力会社は安全を追求し続けるとともに、エネルギー全体がどうあるべきか踏まえたうえで原発利用の将来像について議論し、国民の理解を得ながら政策を進めることが求められています。

(科学文化部 重田八輝/福井局 橋口和門)