“感染力↑”“抗体働き↓” インドで確認 変異ウイルスとは?

1日の新たな感染者数が連日30万人を超え、1日に亡くなる人も連日2000人を超えているインド。その要因の1つとしてインドで最初に確認された変異ウイルスの影響が指摘されています。WHOはこの変異ウイルスを「注目すべき変異株」に新たに指定しました。
日本でも東京都が80代女性の感染確認を明らかにするなどしています。どんなウイルスなのでしょうか?

少なくとも世界17の国で報告

WHO=世界保健機関は27日に公表した報告書で、インドで最初に確認された変異ウイルスがインドのほかイギリスやアメリカ、シンガポールなどこれまでに世界の少なくとも17の国で報告されていることを明らかにしました。

感染力を強め 抗体の働き低下か

報告書では、この変異ウイルスには感染力を強めたりウイルスを攻撃する抗体の働きを低下させたりするおそれのある特徴的な遺伝子変異が3つあり、インドの感染状況の分析からも感染力が強まっている可能性が示唆されるとしています。
このため、WHOはこの変異ウイルスを感染状況を注視する「注目すべき変異株」に新たに指定し、各国の保健当局に対し検出状況を報告するよう呼びかけました。

一方、WHOはインドでの感染の急拡大は大勢の人が参加する宗教的な行事が開催されるなど社会的な感染対策が困難だったことなども要因だと指摘していて今後、ウイルスの性質に関する研究を急ぐ必要があるとしています。

どんなウイルス? 国立感染症研究所の評価

インドで最初に確認された変異ウイルスとは、どのようなウイルスなのか?国立感染症研究所が26日時点で評価をまとめています。

国立感染症研究所が発表した報告によりますと、インドで報告されている変異ウイルスは「B.1.617系統」と呼ばれ、「L452R」と「E484Q」という2つの変異を合わせ持つことがあるということです。

WHOは、世界の少なくとも17の国で報告されていることを明らかにしましたが、日本でも4月20日に初めて国内の患者から検出され、空港検疫では26日までに20人から検出されているということです。
海外の研究では、インドで使われているワクチンの効果が下がったというデータがある一方で、同じ「L452R」の変異があるウイルスは日本でも広がっている「N501Y」の変異があるウイルスと比べると、感染性が低かったという細胞での実験データもあるということです。

国立感染症研究所では、インドでは遺伝子解析の数が少ないことなどからインド国内での感染者の急増との関係は明らかではないとしたうえで「ウイルスの性質についてまだわからないことも多く引き続き実態を把握していく」としています。

イギリス型 南ア型などは「懸念すべき変異株」

新型コロナウイルスの変異ウイルスについて、WHOが「懸念すべき変異株」に指定しているのは以下の3つです。
▽「イギリスで最初に見つかった変異ウイルス」と
▽「南アフリカで見つかった変異ウイルス」
それに
▽「ブラジルで広がった変異ウイルス」

インドで報告されているのはこれらとは別の変異ウイルスです。

インドの保健・家族福祉省の2021年3月24日の発表によりますと、インド西部のマハラシュトラ州で「E484Q」と「L452R」という2つの変異を合わせ持ったウイルスが全体の15%から20%で検出されていて、増える傾向にあるということです。

新型コロナウイルスでは2つ以上の変異が同時に起こるのは珍しいことではなく、感染力などの性質にどの程度影響のある変異かどうかが問題となります。

例えば、関西を中心に日本でも広がっているイギリスで最初に確認された変異ウイルスは、スパイクたんぱく質に主なものだけでも5つ以上の変異があり、このうち感染力を高めるとされる「N501Y」という変異が問題となっています。

また、南アフリカで見つかった変異ウイルスとブラジルで広がった変異ウイルスでは「N501Y」に加えて免疫の効果が低下する可能性のある「E484K」の変異も起こっていて、インドで見つかった変異ウイルスと同様に問題となる2つ以上の変異を合わせ持つウイルスとなっています。

米・バイデン大統領 “インドにワクチン提供”

インドでは医療体制も危機的な状況に陥っていて、アメリカのバイデン大統領は医療用の酸素などに加えてワクチンも提供したいという考えを示しました。

バイデン大統領は27日、ホワイトハウスで記者団に対し「インドが必要なひととおりの支援を直ちに送る」と述べ、抗ウイルス薬「レムデシビル」やワクチンの製造に使う装置の部品を提供すると明らかにしました。

さらに、前日に行ったインドのモディ首相との電話会談について「ワクチンそのものをインドに送ることができる時期について話し合った。私はそうするつもりだ」と述べ、すでに明らかにしている医療用の酸素などに加えてワクチンも提供したいという考えを示しました。

アメリカは、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンおよそ6000万回分を必要な国に提供する方針をすでに明らかにしていますが、提供先は検討中だとしています。インドに対してはイギリスなど各国や企業が支援を本格化させています。