大型連休 コロナ禍でも“冒険できる”淡路島とは

大型連休 コロナ禍でも“冒険できる”淡路島とは
4月29日から始まる大型連休。

東京、大阪、兵庫、京都には3回目の緊急事態宣言が出されていて、去年に続き、外出の自粛が呼びかけられています。

旅行に行きたい、でも行けない。

しかし今、自宅にいながら、旅行気分が味わうことができるって知っていましたか。

『信頼できる仲間たちと淡路島を守る壮大な物語が、いま幕を開ける』

(神戸局 アナウンサー 片山智彦)

“ドラクエの聖地” 淡路島では

兵庫県の南、瀬戸内海にある淡路島。

北は神戸市、南は徳島県と橋で結ばれていて交通の便がよく、年間およそ1300万人が訪れる観光の島です。

その淡路島に、4月29日に新たにオープン予定だったのが、人気ゲーム『ドラゴンクエスト』のアトラクションです。

実は淡路島は、ドラクエの原作者、堀井雄二さんの出身地です。
アトラクションは、県立淡路島公園の中にある、アニメやゲームなどの世界観が楽しめる民間運営の施設に、ドラクエ誕生35周年を記念して作られました。

約8000平方メートルと広大な敷地を舞台に、入場者は“戦士”’や“武闘家”などから職業を選び、“冒険の書”などの案内に沿って、「ドラクエ」の世界を体験することができます。

本来であれば、この大型連休、たくさんのファンが訪れる予定でしたが、新型コロナウイルスが行く手を阻みます。

兵庫県にも緊急事態宣言が出され、オープンは延期されることになりました。いまは予約チケットの返金手続きに追われています。

1度目の緊急事態宣言が大型連休と重なった去年の5月に淡路島を訪れた観光客数は、前の年のわずか3%。

ことしも再び緊急事態宣言が出され、淡路島は大ピンチの状況です。

自宅からでも“冒険できる島”

「不要不急の外出の自粛を」
「遊びに来ないで」

感染拡大を防ぐための呼びかけが各地で行われている、この大型連休。

しかし、堂々と淡路島に出かけられる場所がありました。

「ドラクエ」にも負けない“ご当地RPG”「はじまりの島」です。
ゲームを作ったのは、淡路島観光協会や地元の3市、それに県などと作る「淡路島日本遺産委員会」です。

スマートフォン向けのアプリで、無料でダウンロードできます。

「淡路島日本遺産委員会」によりますと、淡路島は、奈良時代の歴史書「古事記」の中の神話にも出てくるといいます。その「はじまりの島」淡路島出身の主人公が、歴史をゆがめようとする魔物と戦う物語です。

「ドラクエ」のように仲間と一緒にアイテムや魔法を使いながらモンスターを倒し、レベルアップしていきます。

登場するキャラクターには、淡路島の特産品やゆかりの品が次々に。
3年トラフグの「さんふぐ」に、たまねぎの「タマポン」。

敵なのにかわいらしいところに、強い地元愛が感じられます。

また、ゲームには市民からの一般公募で寄せられたアイデアが多く盛り込まれています。
この建物は「淡路人形座」。国の重要無形民俗文化財に指定されている「淡路人形浄瑠璃」が公演される会館です。

ゲームには実在する観光スポットや文化財も次々と登場します。

勇者トモヒコもやってみた

私、片山も、かつては「ドラクエ」に熱中した世代です。

さて、観光協会が作ったゲームとは、どのようなものか。

実際にやってみると、すっかり夢中になっていきます。

ストーリー、グラフィックや音楽も本格的ですが、声優も地元出身者を起用する熱の入れようです。

通勤の行き帰りの電車の中で、コツコツ主人公のレベルを上げていき、のめり込んでいました。

クリアしたときには、ゲームを始めてから30時間が経過していました。

このゲームには有料のアイテムもありますが、私は、完全無料で楽しめました。

“淡路島の守り人”

どんな思いでゲームを作ったのか。

私はゲーム作りの中心となった淡路島観光協会を訪ねました。
観光戦略室長の松田哲朗さんは、ドラクエに出会ったのは大学時代と遅咲きですが、そこからのめり込んだ、かなりのゲーマーだそうです。
淡路島観光協会 松田哲朗 観光戦略室長
「いまや多くの人がスマートフォンでゲームをする時代。よいゲームを作れば、たくさんの人に淡路島を知ってもらえると思いました。リリースで終わりにするのではなく、一つの町おこし、観光振興のアイテムとしてゲームを生かしたいです」
松田さんはゲームのクオリティーを高めるだけでなく、観光PRにつなげることも忘れません。

キャラクターの2次利用は自由にしています。

ドラクエに出てくる「スライム」は当然ながら使用には許可が必要ですが、“はじまりの島”のタマネギ「タマポン」は使い放題です。

ゲームをきっかけに淡路島の観光施設では関連イベントも開催され、子どもたちが地元の歴史を学ぶ教材にも登場するようになっています。
2年前にリリースされてからの累計ダウンロード数は3万3000件余り。

感染拡大による“巣ごもり需要”で、ダウンロード数は伸びているといいます。
淡路島観光協会 松田哲朗 観光戦略室長
「皆さんには、しばらくの間はステイホームでゲームをして淡路島を感じてもらい、コロナが落ち着いたら、リアルで淡路島に来ていただければうれしいです」

そして東北へ…

淡路島のゲームの評判は、700キロ以上離れた東北地方にも届いていました。

10年前の東日本大震災の津波で、大きな被害を受けた宮城県石巻市。

震災から時間が経過するとともに、足を運ぶ人も減りつつあります。

もう一度石巻市に関心を持ってほしいと、自分たちもゲームを作ろうと考えたのです。

石巻市では、去年、淡路島に市の職員を視察に送り込みました。

そして、3月31日、石巻版の“ご当地RPG”「キズナファンタジア」がリリースされました。

ストーリーは、自然災害をきっかけに荒れてしまった街を救う冒険です。
主人公は東日本大震災の津波の被害を受けた船「サン・ファン・バウティスタ号」で旅をします。

淡路島のノウハウを取り入れて、モンスターや魔法は一般公募し、500件近い案が集まりました。
登場するのは、名物の「笹かまぼこ」や「ほや」をモチーフにしたモンスター。

淡路島と同じようにかわいらしいキャラで、地元愛にあふれています。

さらに、淡路島よりもレベルアップさせようと、魔法には方言を取り入れました。

体力回復の魔法は、「イーグナル」!

「よくなる」という意味の方言「いぐなる」にちなんでいるそうです。
石巻市商工課 高橋華実さん
「正直なところ、最初はゲームを作ると聞いて驚きました。それでも、淡路島の盛り上がりを知って、ありなのかも、と。応募のために石巻のことを調べたという声も多く、皆さんが町の理解を深めるきっかけになったと思います。震災10年の節目の年にこのような前向きな取り組みができたのは、本当に運命というか、よかったです」

ゲームが実際の地域ともつながる

実はこれらのご当地ゲーム、スマホ画面の中だけでは終わりません。

例えば淡路島のゲームの場合、観光施設で使える割引クーポンもついていて、たとえば、ソフトクリームは一割引で買うことができます。
現地でゲームを立ち上げてGPS通信を行うことで、手に入れられる特別アイテムもあります。

多い日には30組がゲーム目当てに訪れたという施設もあります。

緊急事態宣言による休業要請に従い、大型連休中は臨時休業となりますが、新型コロナの感染拡大が落ち着いたら、再び客が戻ってくることを期待しています。
うずのくに南あわじ 広報 宮地勇次さん
「ゲームということで最初はどうかと思いましたが、効果があるなと思っています。コロナの影響で訪れる人は減っていますが、ゲームをする地元の人が来るなど、下支えになっていると思います」

“ご当地RPG”には大きな可能性あり

新型コロナウイルスによって、2年連続でステイホームとなるこの大型連休。

厳しい現状ではありますが、淡路島観光協会の松田室長は、ゲームの第二弾も構想しているといいます。

専門家は、外出できない今だからこそ、“ご当地RPG”には可能性があると指摘しています。
立命館大学 映像学部(ゲーム研究センター)中村彰憲教授
「コロナ禍において観光地に行けない時、ゲームをプレイしてその場所について理解をするのは、巣ごもりをしている私たちにとっていいチャンスですし、行政にとっても将来的な観光客の誘致につながる効果的な施策だと思います。アニメの聖地巡礼のように、何気ない地元の場所に価値が出て、そこに観光客が訪れるようになるなど、大きな可能性があります」
神戸放送局 アナウンサー 片山智彦
2002年入局。秋田・福島・東京アナウンス室などを経て神戸。「おはよう日本」の早朝時間帯や各地の夕方ニュースのキャスター、スポーツ実況などを担当。今回、20年ぶりにRPGを体験。