日銀 黒田総裁 今の任期中に2%の物価目標 達成困難に

日銀は27日までの金融政策決定会合で、経済と物価の最新の見通しをまとめた「展望レポート」を公表しました。

それによりますと、物価の見通しは、今年度の生鮮食品を除いた消費者物価指数が政策委員の見通しの中央値でプラス0.1%とし、前回・1月時点の見通しのプラス0.5%から引き下げました。

新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し、物価が下押しされることに加え、携帯電話料金の値下げが要因だとしています。

そして、再来年度=2023年度の物価見通しを初めて示し、政策委員の見通しの中央値でプラス1.0%としました。

黒田総裁のいまの任期は2023年4月8日までで、現状ではこの任期中に2%の物価目標の達成が困難であることを日銀みずから示す形となりました。

一方、景気の現状については「新型コロナウイルスの影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」という判断を据え置きました。

先行きについては当面の経済活動は「対面型サービス部門を中心に感染拡大前に比べて低めで推移するものの、回復していくとみられる」と分析しています。

こうしたことから今年度の実質のGDP=国内総生産の伸び率は政策委員の見通しの中央値でプラス4.0%とし、前回の見通しのプラス3.9%から引き上げました。

また、▽来年度はプラス2.4%と、前回の見通しのプラス1.8%から引き上げたほか、▽再来年度はプラス1.3%としました。

物価上昇率の推移は

日銀は2%の物価上昇率の実現に向けて大規模緩和策を粘り強く続けるとしていますが新型コロナウイルスの影響もあり物価の上昇率は足元ではマイナスが続いています。

黒田総裁が就任した2013年3月の生鮮食品を除いた消費者物価指数の上昇率はマイナス0.5%でした。

その年の4月に日銀が供給するお金の量を2倍にするなど大規模な金融緩和策を打ち出し、就任から2か月後に上昇率はプラスに転じて、その後は次第に上げ幅が拡大しました。

2014年の4月には消費税の税率が5%から8%に引き上げられ、▽その影響で物価の上昇率はプラス3.2%、▽消費税率引き上げの影響を除くとプラス1.5%程度と見られます。

しかし、この年の夏ごろから原油価格の下落などによって物価の伸びは弱まりました。

消費税率引き上げの影響がほぼなくなった2015年4月はプラス0.3%となり、その後は伸び悩む状態が続いていました。

新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、物価の下押し圧力がかかり先月(3月)はマイナス0.1%と前の年の同じ月と比べて8か月連続の下落となっています。

黒田総裁「時間がかかっており残念だ」

黒田総裁は3回目の緊急事態宣言など新型コロナウイルスの感染拡大が物価や経済に与える影響について「当面は、変異株を含めた感染症の動向や経済活動への影響について注意が必要であり、下振れリスクが大きいと見ている」と述べました。

また、アメリカと中国の対立が世界経済に与える影響について「大きなマイナスになるような事態が発生するとは見ていない」としました。

日銀は27日までの会合で、再来年度・2023年度の物価見通しをプラス1.0%とし現状では黒田総裁のいまの任期中に2%の物価目標の達成が困難であることを日銀みずから示す形となりました。

これに関して黒田総裁は、「物価目標の実現に時間がかかっており残念なことだ」と述べました。

その一方で、2%の物価目標は達成できるとした上で、「私の任期の中でどうこうということは必要ない。目標の達成が2024年度以降になったとしても致し方ないと思っている」と述べ、いまの金融緩和策を粘り強く続ける考えを強調しました。

また、いまの大規模な金融緩和を縮小するいわゆる「出口政策」に関して黒田総裁は、「現時点で議論することは時期尚早だ。あくまでも2%の物価安定の目標が目に見えてくる段階で戦略の議論をする」と述べました。

黒田総裁の金融政策とは

2013年3月に就任した日銀の黒田総裁。

デフレからの脱却を目指すため2%の物価上昇率の目標を2年程度で実現すると宣言し、就任直後の(4月)金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を打ち出しました。
国債の買い入れを大幅に増やし、市場に大量の資金を供給するのが柱で、「黒田バズーカ」とも呼ばれました。

金融市場では、円安・株高が一気に進みましたが、翌年(2014)、消費税率の引き上げと原油価格の急落が日本経済に影響を与えます。

物価上昇率が鈍ったことから、日銀は2014年10月、市場の意表を突く形で追加緩和を決定。

世の中に出回るお金の量をさらに増やし、ETFについても買い入れのペースを加速させました。

しかし、その後も物価目標は達成できず、2016年1月、日銀は「マイナス金利政策」の導入に踏み切ることを決めます。

金融機関が日銀に預けている「当座預金」の一部にマイナスの金利を適用する日銀史上初めての政策でしたが、次第に資産運用や金融機関の収益などに悪い影響が出るといった声が強まっていきました。

こうした「副作用」に配慮しつつ、物価目標をできるだけ早期に達成するため、日銀は2016年9月、金融緩和の「総括的な検証」を実施。

▽短期金利はマイナスにし、▽長期金利をゼロ%程度に抑える金融緩和策の導入を決め、金融政策の主軸は「量」から再び「金利」へと移りました。

去年以降は、新型コロナウイルスの影響を受ける経済を下支えするために、金融緩和を一段と強化しています。

こうした大規模緩和によって、日銀が保有する国債の残高は、去年12月末時点で(まつ)545兆円と、全体の44%を占めるまでになりました。

また、日銀が保有するETFの時価総額も、東京証券取引所1部に(じょ)上場する企業の株式全体のおよそ7%に上っています。

それでも日銀が新たに公表した経済と物価の最新の見通しでは2023年度も物価上昇率はプラス1.0%にとどまるとしました。

黒田総裁が就任当初、2年程度で実現するとしていた2%の物価目標。

現時点では就任から10年を経ても達成が困難であることを日銀みずから示した形です。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、経済と物価への下押し圧力は今後もかかり続けるとみられ、日銀の金融政策の運営は一段と厳しさを増しています。