ワクチン接種 注射器の確保が課題 ユニセフは10億本支援計画

世界各地で新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、接種に使う注射器の需要が急増していますが、途上国を中心に自国で製造できない国も多く、ワクチンとともに注射器の確保が課題になっています。こうした中、ユニセフ=国連児童基金は、注射器不足で接種ができない状況を回避しようと、年末までに世界およそ100の国と地域に合わせて10億本を供給する支援に乗り出しています。

新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、各国が個別に調達しているのに加えて、国連などが主導する国際的な枠組み「COVAXファシリティ」だけでも、年内に20億回分を供給することにしていて、世界で接種が進められています。

これに伴い、接種に使う注射器の需要が急増していますが、アフリカなどの途上国では自国で製造できない国も多くあります。

ユニセフでは、新型コロナウイルスの感染拡大前から、はしかなどのワクチン接種に使うため、年間6億本から8億本の注射器を途上国を中心に支援していて、ことしは合わせて20億本近くが必要になると見込んでいます。

このため、ワクチンが届いても注射器不足で接種ができない状況を回避しようと、年末までに世界およそ100の国と地域に合わせて10億本を供給する支援計画に乗り出し、ことし2月、最初の支援国として世界最貧国の1つ、アフリカ西部のサントメ・プリンシペにも届けられました。

ただ、ユニセフでは、注射器の供給が世界的に厳しく、ワクチンの効果や接種回数なども明確に定まらない中で、長期の分配計画を立てるのは難しいとしていて、ワクチンに加えて、注射器をどう確保するかが世界的な課題になっています。

注射器不足のアフリカでは

アフリカ西部のサントメ・プリンシペは、大西洋に浮かぶ主に2つの島からなる人口およそ22万の国で、これまでに2200人余りが新型コロナウイルスへの感染が確認され、35人が亡くなっています。自然に恵まれたカカオ豆の産地ですが、国連によると世界最貧国の1つで、新型コロナウイルスのワクチンは国連が主導する国際的な枠組みが頼りです。

ところが、ワクチンの供給を受けるに当たり、接種に欠かせない注射器が不足していることが課題となりました。

このため、ことし2月、ユニセフ=国連児童基金から無償で注射器の提供を受けました。

ユニセフではことし中に、注射器の製造や確保ができない世界の100の国と地域に合わせて10億本を支援する計画で、サントメ・プリンシペが注射器の支援を受けた最初の国の1つとなりました。

その後、2万4000回分のワクチンが届き、先月15日から、提供された注射器を使って接種が始まりました。

これまでに医療関係者など1万2000人に対して1回目の接種が終わり、来月2回目の接種が行われる予定です。

首都サントメにある保健省が所管する医療品の倉庫には、2回目の接種に使う注射器も保管されていました。

この注射器は1度しか使用することができない使い捨てです。

サントメ・プリンシペでは今後も、国際的な枠組みを通じて、人口の20%に相当する人たちへ接種できるだけのワクチンを受け取ることになっていますが、ワクチンに加えて、注射器の確保が引き続き課題になっています。

これについてネベス保健相は、NHKとのインタビューで「世界的に注射器の確保が難しいことは理解している。しかし、ワクチンがあったとしても、注射器がなければ、接種を進めることができない。2つは密接につながっていて、注射器の確保はワクチン確保と同様に重要だ」として、国際的な支援の必要性を訴えました。

インドの注射器メーカーは増産体制

インドでは国内外の大手製薬会社が生産拠点を設けていることから、新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、世界のワクチンの6割を生産する「ワクチン大国」で、関連する医療器具の生産も盛んです。

ニューデリー近郊にある大手医療器具メーカーでは、新型コロナウイルスのワクチンを接種するための注射器の生産を急ピッチで進めています。

注射器は、インド国内だけでなく、日本に輸出されるほか、ユニセフ=国連児童基金を通じて各国に提供する予定です。

ただ、現在の生産体制では世界的な需要の高まりに対応できないことから、日本円で15億円余りを投じて製造ラインを増設し、24時間フル稼働させて生産を強化しています。

その結果、年間5億本だった生産量をこれまでに9億本に増やし、ことし9月までには、12億本に増やす計画です。

しかし、世界で感染が広がる中、インドと各国とのヒトやモノの移動が制限されているため、増産に必要な設備の輸入や技術者の入国に影響が出ていて、増産計画は数か月の遅れが出る見込みだということです。

大手医療器具メーカーのラジブ・ナス社長は「注射器の在庫がなくならないように最大限製造能力をあげています。インドの社員が機器の設置などを行っているため、1、2週間で終わる作業が1か月かかることもある」と話していて、感染拡大による影響が懸念されています。

ユニセフ「需要見通せず」

注射器の需要が高まっていることについて、ユニセフで注射器の分配を担当するロバート・マシューズ氏はNHKとのインタビューで「スペインや中東、インドなどの製造者と契約を結んで、注射器の生産体制を強化している。今すぐに、どれだけの注射器が必要かというだけでなく、今後数年かけてどのくらいの需要があるのか予測していかなければならない」と話していました。

またマシューズ氏はワクチンについて「今後も追加で毎年接種し続けなければならないのか。または、1回や2回だけの接種で効果があるのか、これらの問いに対する答えはいまだにない」と述べ、不確定要素が多い中、今の段階で長期的な注射器の分配計画を作っていくのは難しいとの見方を示しました。

世界のワクチンの接種状況

イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界で新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した人の数が人口に占める割合は、主な国で、
▼中東のイスラエルが62.1%、
▼イギリスが49.2%、
▼チリが41.4%、
▼アメリカが40.6%で、世界全体では6.9%となっています。

また、2回接種することになっているワクチンを2回とも接種するなど、接種が完了した人の割合は、
▼イスラエルが57.8%、
▼チリが31.5%、
▼バーレーンが29.8%、
▼アメリカが26.7%となっています。