【詳報】菅首相 記者会見 4都府県に緊急事態宣言

菅総理大臣は記者会見で「先ほど新型コロナ対策本部を開催し、緊急事態宣言の発出を決定した。東京都、京都府、大阪府、兵庫県を対象として期間は4月25日から5月11日までだ。また『まん延防止等重点措置』について、この期間で愛媛県を追加し宮城県、沖縄県も5月11日までとすることを決定した」と述べました。菅総理大臣の会見の内容をまとめました。

「医療提供体制 これまでになく厳しい」

「全国の感染者数は先月以来増加が続き、重症者も急速に増加している。大阪、兵庫の感染者数はいわゆるステージ4の中でも高い水準にあり、医療提供体制はこれまでになく厳しい状況にある。東京、京都においても感染者数の増加ペースが日増しに高まっており、いわゆるステージ4の水準に至っている」と述べました。

「特に懸念されるのは変異株の動き」

「特に懸念されるのは変異株の動きだ。陽性者に占める割合は大阪、兵庫でおよそ8割、京都でおよそ7割、東京でもおよそ3割に上昇するなど強い警戒が必要だ。このまま手をこまねいていれば大都市における感染拡大が国全体に広がることが危惧される」と述べました。

「ご迷惑をおかけする 心からおわび」

「再び緊急事態宣言を発出しゴールデンウイークという多くの人々が休みに入る機会を捉え、効果的な対策を短期間で集中して実施することによりウイルスの勢いを抑え込む必要があると判断した。私自身これまで再び宣言に至らないように全力を尽くすと申し上げてきたが、今回の事態に至り、再び多くの皆様方にご迷惑をおかけすることになる。心からおわびを申し上げる次第だ」と述べました。

「医療体制の確保に全力」

「大阪においては医療の現場に危機的な状況が続いている。国と自治体が一体となって病床確保の調整を行い、400床近くを新たに確保できる見込みだ。また、国から看護師の広域派遣を含めおよそ200人を新たに確保している。引き続き国と自治体が協力し、医療体制の確保に全力で対応していく」と述べました。

「高齢者に7月末を念頭に各自治体が2回の接種を」

ワクチンの接種について「多くの方々に速やかに受けていただくため、できることはすべてやる覚悟で取り組んでいる」と述べました。

そのうえで「まずは医療従事者への接種を早急に終え、ゴールデンウイーク明けまでにはおよそ700万回分、それ以降は毎週およそ1000万回分を全国の自治体に配布し、6月末までには合計1億回分を配布できるようにする」と述べました。

そして「希望する高齢者に7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう、政府を挙げて取り組んでいく」と述べました。

また「自治体の多くで課題とされる人材確保のため、全国への接種会場への看護師の派遣と歯科医師による接種を可能とする」と述べました。

そして「先の訪米でファイザー社のCEOに要請を行い、ことし9月までにすべての対象者に確実に供給できるめどが立った。高齢者への接種の状況を踏まえ必要とするすべての方々への速やかな接種が進むよう取り組んでいく」と述べました。

「出勤者を例年並みの7割減とするよう要請」

「テレワークや休暇の活用により出勤者を例年並みの7割減とするよう要請する。これまでガイドラインを重視しながら事業を続け、感染防止に取り組んでこられた多くの方々がいる。期間を限った措置とはいえ休業といった踏み込んだ対策をお願いすることは誠に心苦しく申し訳ないかぎりだ」と述べました。

「飲食に対する対策を夜間に限らず徹底」

「感染源の中心である飲食に対する対策を夜間に限らず徹底する。同時に大都市における人流や都市間の移動を抑え、人と人との接触を減らすためにこれまで以上に踏み込んだ対策を実施する」と述べました。

そのうえで「お酒を伴う飲食の機会は、ともすれば大声、長時間となり感染リスクが高いことがこれまでも指摘されており、飲食店には午後8時までの時間短縮と合わせ終日、酒類提供の停止を要請する。路上など飲食店以外でもお酒を飲むことが感染につながることのないよう十分な注意をお願いしたい。さらにカラオケの提供も停止を要請する」と述べました。

「新たな対策への協力 心からお願い申し上げる」

「新型コロナとの戦いは世界でも一進一退であり、予期せぬ変異を繰り返すウイルスの動きには全く予断を許さないものがある。しかし、これまでの戦いの中でわれわれが学んだ知見の積み重ねもある。ワクチンという武器もある。厳しい戦いにも必ず終わりが見えてくると確信している」と述べました。

そのうえで「まずは緊急事態宣言に基づく酒類提供の停止、そして人流の抑制からなる新たな対策への皆さんのご協力を心からお願い申し上げる。この危機を乗り越えて安心できる日常を取り戻すことができるよう、自治体との協力、病床の確保、ワクチンの接種など内閣総理大臣としてできることはすべて全力を尽くしてやり抜く。国民の皆さんのご理解をお願い申し上げる」と述べました。

「一段と感染レベルを下げるため人流を抑える」

「一段と感染レベルを下げるため人流を抑え、人と人の接触機会を減らすための対策だ。外出を通じた人の接触は感染のきっかけになり得るという専門家の指摘もある。デパート、テーマパークに加え一定の規模を上回る商業施設や遊興施設など多くの集客が見込まれる施設について休業を要請する。また、イベントやスポーツの原則無観客での開催を要請する。あわせて不要不急の外出、さらに帰省や行楽をはじめ、感染拡大地域との往来はできるだけ控えてもらうようお願いする」と述べました。

「大規模施設の休業要請に対し新たな協力金で支援」

「雇用調整助成金を活用して雇用を守るとともに、緊急小口資金などにより暮らしを守っていく。休業や時間短縮を伴う飲食店は事業規模に応じた協力金で支援を続けていく。大規模施設の休業要請に対しては施設の中の店舗を含め、雇用調整助成金に加え新たな協力金で支援する」と述べました。

そのうえで「宣言による人出の減少で大幅に売り上げが減少する事業者には新たに一時金を支給し、また宿泊事業者の感染防止などの取り組みを支援していく。さらに都道府県による事業者支援を後押しするために5000億円の臨時交付金を措置する」と述べました。

「若い世代での感染を抑制し高齢者への波及を防ぐ」

「今回の厳しい対策の背景の一つには若年層で感染が拡大している現実がある。そして医療の現場では極限の戦いが続いている。若い世代での感染を抑制し、リスクの高い高齢者への波及を防ぐ意識を社会で共有することが強く求められている」と述べました。

そのうえで「クラスターも多様化し福祉施設、医療機関、飲食店に加え、職場や大学のクラブ活動などさまざまな場面での発生が報告されている。福祉施設などの定期検査に加え、一人一人が意識を持って行動し、マスク、手洗い『3密』の回避という基本的な予防対策の徹底をお願いする」と述べました。

「宣言の解除は状況を総合的に考えたうえで判断」

「緊急事態宣言の解除はその時の状況を総合的に考えたうえで判断することとなる。ただ今回はゴールデンウイークの短期集中で飲食の対策を強化してお酒の提供を停止する。さらに人の流れを止めるために、店舗や劇場の休業要請というあえて強い措置を講じるもので、そうした前提でまずは対策を徹底して結果を出したい」と述べました。

「安全、安心の大会にすることができるように対策」

「東京オリンピック・パラリンピックに向けては、足元の感染拡大を封じ込めることにまずは全力で取り組む。IOC=国際オリンピック委員会は東京大会を開催することをすでに決定し各国のオリンピック委員会とも確認している。政府としては東京都、組織委員会、IOCとしっかり連携を取って安全、安心の大会にすることができるように対策をしっかり講じていきたい」と述べました。

「年末年始に感染拡大 反省の上に立ち人流まで踏み込んだ」

「昨年からことしにかけての年末年始、特に年末の忘年会が多い時やクリスマスに感染が拡大したことは事実だったと思う。そうした反省の上に立って今回、思い切って人流まで踏み込んだ」と述べました。

「宣言に至ったのは大阪や兵庫で8割が変異株 対策が大事」

記者団が「再び緊急事態宣言を出すに当たって菅総理大臣の政治責任をどう考えるか」と質問したのに対し「先般の緊急事態宣言の解除は感染者数や病床などの状況に基づいて専門家の意見を伺ったうえで解除した。今回の緊急事態宣言に至ったのは大阪や兵庫では8割が変異株であり対策を行うことが大事だと思ったからだ」と述べました。

そのうえで「今回、人流をゴールデンウイークを中心として短期間ではあるが止めさせてもらう対策を講じた」と述べました。

「補正予算案の編成は考えていない」

「さまざまな支援策により休業要請や人出の減少によって影響を受ける方々をしっかり支えて事業と暮らしを守っていきたい。財源はこれまで措置した予算、必要に応じて5兆円のコロナの予備費を活用してしっかり対応していきたい。補正予算案の編成は考えていない」と述べました。

「テレワークの徹底を含めた職場での感染対策も極めて重要」

記者団が「通勤者の削減について要請ではなく確実に担保する新たなカードが必要ではないか」と質問したのに対し「職場内で感染拡大が進んでいることも事実であり、人の流れを止めるためにもテレワークの徹底を含めた職場での感染対策も極めて重要だ。こうした観点からご指摘いただいたことも1つの考え方だと思う」と述べました。

「最優先は感染拡大防止」

記者団から、次の自民党総裁選挙に立候補する考えはあるかと問われたのに対し「まず新型コロナの感染拡大を防止することが私の最優先である。ただ任期があるということも事実なので、私の総裁としての任期の中でやはり機会をみて解散・総選挙は考えなければならない。ただ最優先はやはり新型コロナの、この感染拡大を防止する、そのことだ」と述べました。

「緊急事態に対応する法律を改正しなければならない」

記者団が「日本は総理大臣の権限ではコロナの病床数を増やすことができないのか」と質問したのに対し「医療関係者に対しての政府の権限は要請ベースでしかないのが現実だ。ワクチンも海外はアメリカで完成すればそれを使えるが、日本は国内でも治験をやる仕組みになっている」と指摘しました。

そのうえで「緊急事態に対応する法律を改正しなければならないと痛切に感じている。平時に法律を作っておきたい」と述べました。

「水際でしっかり止めている」

「オリンピックはIOC=国際オリンピック委員会がそれぞれの国のオリンピック委員会と協議したうえで開催する方向で動いている。IOCと東京都、組織委員会、日本政府で外国人観光客には応援を遠慮してもらうことを決めている。選手団が何人かや日本に入国する人数も精査しながら行っている」と述べました。

そのうえで「水際対策も厳しく行っており、PCR検査を日本に来る前や滞在中に受け日本での行動についてもしっかり抑制して選手村と競技会場は特別の交通機関やバスで行くことなど、一つ一つ決めている。変異株を持っている人が日本に入ることができないように水際でしっかり止めている」と述べました。

「感染拡大防止できれば経済影響はそんなに大きくない」

緊急事態宣言が経済に与える影響について「さまざまな支援策を講じて事業者への影響をできるかぎり抑えたい。今度の期間の中で感染拡大を防止することができれば影響はそんなに大きくはないだろうと思う」と述べました。

分科会 尾身会長「状況は新しいフェーズに入った」

記者会見に同席した「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は「前回の緊急事態宣言では飲食の場が中心だったが、変異株のこともあり日本の状況は間違いなく新しいフェーズに入った。感染の場が多様化し変異株の影響で感染が広がりやすくなり若い年代で重症化している。飲食店の営業時間短縮は重要だが、ここまで感染が拡大すると人と人との接触機会をなるべく避けることが求められている。商業施設への休業要請は接触の機会をできるだけ避けるための環境作りをすることが最大の目的だ」と述べました。

尾身会長「恒例行事で感染急拡大 外出控えること重要」

また「年末年始には再三再四にわたる国や自治体からの要請にもかかわらず、活動をやめてくださいということが伝わらなかった。私たちは恒例行事を通して感染が急拡大するということを学んできた。大型連休を楽しめないのは個人として残念だと思うが、同じことを起こさないために必要ない外出を控えることは重要だ。また、今回の宣言の解除の際には変異株の感染力や重症化への影響、リバウンドの可能性を十分に考慮したうえで解除することが必要だと思っている」と述べました。

尾身会長「宣言解除の目安 示しておく必要ある」

さらに「今回の緊急事態宣言で2週間という期間についてはいろいろと意見があると思うが、期間も重要だがまずは医療のひっ迫をなんとか防ぎたい。そういう意味ではどういう状況になれば宣言を解除するかの目安を示しておく必要がある。基本的対処方針に書かれた原則を守って『ステージ3』の状態になり、『ステージ2』に安定的に向かっていく見込みがあることを目安にするのがいいのではないか。また、宣言を解除したあとが重要で変異株の影響もあるためどういう対策をとるのかをあらかじめ明確にする必要がある」と述べました。