気候変動サミット 米中両国が気候変動対策では協力姿勢示す

アメリカのバイデン大統領は、みずからが主催する気候変動サミットで、自国の温室効果ガスの排出量を2030年までに半減させる新たな目標を表明し、各国にさらなる行動を求めました。これに対し、中国の習近平国家主席も石炭の消費を減らしていく考えを表明し、対立を深める米中両国が、気候変動対策では協力していく姿勢を示しました。

バイデン大統領が主催する気候変動サミットは日本時間の22日夜から2日間の日程で始まりました。

開幕にあたり演説したバイデン大統領は、自国の温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年に比べて50%から52%削減する新たな目標を表明したうえで「この危機はどの国も1国では解決できない。われわれはこの課題に対処するため、速やかに行動しなければならない」と述べ、各国にさらなる行動を求めました。

このあと、アメリカのほか26の国と地域の首脳らが参加した最初のセッションでは、菅総理大臣が2030年に向けた削減目標について、2013年度と比べて46%削減することを目指すと表明しました。

また、カナダのトルドー首相も2030年までに2005年と比べて40%から45%削減する新たな目標を明らかにするなど、G7=主要7か国のうち2か国が自国の削減目標の大幅な引き上げを発表しました。

さらに温室効果ガスの世界最大の排出国である中国の習近平国家主席は「アメリカを含む国際社会と協力して地球環境の管理を推進していきたい」と述べるとともに、石炭火力発電を制限し、2030年までに石炭の消費を徐々に減らすと表明しました。

アメリカと中国は人権や安全保障の問題をめぐり対立を深めていますが、米中がともに重視する気候変動対策では協力して取り組む姿勢を国際社会に示しました。

中国 気候変動問題への対策と課題

温室効果ガスの世界最大の排出国である中国は、気候変動問題に国を挙げて取り組む姿勢を強調しています。

習近平国家主席は去年9月の国連総会で、二酸化炭素の排出量について「2030年までにピークに達し、2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力する」と表明しました。その後、去年12月にはGDP=国内総生産当たりの二酸化炭素の排出量について「2030年までに2005年に比べて65%以上削減する」とする削減目標も示しました。

中国にとって温室効果ガスを削減するうえでの大きな課題と指摘されているのが、電力の石炭火力発電への依存で、発電量全体に占める割合は徐々に低下しているものの、去年の時点でも石炭火力発電が全体の60%を占めています。

このため中国政府は再生可能エネルギーによる発電量を増やしていて、去年の風力と太陽光による発電量は全体のおよそ10%と10年前の10倍近くに増えています。

また原子力発電については、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、新規着工が停滞していますが、先月開かれた全人代=全国人民代表大会で「原子力発電を積極的に発展させる」とする方針が示され、今後、増設を進めていくとみられます。

ただ、習主席が示した2060年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする目標に関しては、水素を活用した次世代のエネルギー開発や蓄電技術の改良といった、一層の技術革新などのより意欲的な対策に取り組まなければ、実現は難しいと指摘されています。

また中国政府は目標の実現への道筋を明確に示しておらず、これから策定するとしている2030年までの行動計画でどこまで踏み込んだ対応を示すのかが、今後の焦点となっています。

岸防衛相がスピーチ

岸防衛大臣は、気候変動サミットの「気候安全保障セッション」でスピーチを行いました。

この中で、岸大臣は「気候変動による海面の上昇は、陸地を減少させ、領土や資源をめぐる争いを活発化させ、地域全体が不安定化して、わが国の安全保障にも影響が及ぶおそれがある」と懸念を示しました。

そのうえで、東南アジア諸国や太平洋島しょ国への支援を通じて地域の安定化に取り組むとともに、気候変動は1国のみで解決できる課題ではないことから、世界各国と連携して対策に力を尽くしていく考えを示しました。

配信でトラブル相次ぐ

今回の気候変動サミットは、アメリカ政府が映像や音声を世界に配信しましたが、音声が聞こえない状態となるなど、さまざまなトラブルが相次ぎました。

冒頭、バイデン大統領とハリス副大統領の演説は、音声が二重になり、聞き取りづらい状態となりました。

また、続いて行われた各国首脳の演説では、事前に収録されたフランスのマクロン大統領の演説の冒頭に、誤ってインドネシアのジョコ大統領の映像が流されたうえ、演説の途中で、映像が突然、順番を待っていたロシアのプーチン大統領に切り替わりました。

そして、プーチン大統領が自分の順番なのか周囲に確認するような様子や、会合の進行役のアメリカのブリンケン国務長官のもとにスタッフが駆け寄る様子などが、世界に配信されました。

途中で打ち切られる形になったマクロン大統領の演説は、プーチン大統領の演説のあとに改めて配信されました。

さらに、オーストラリアのモリソン首相の演説は、冒頭およそ1分間音声が聞こえない状態となるなど、進行の混乱や技術的なトラブルが相次ぎました。

ホワイトハウス周辺でデモ 目標は「小さすぎるし遅すぎる」

気候変動サミットを主催したアメリカの首都ワシントンでは22日、環境保護団体の呼びかけでデモが行われ、温室効果ガスの削減に向けた一層の取り組みを求めました。

ホワイトハウス周辺では集まった人たちが「環境危機だといますぐ宣言しろ」などと書かれた横断幕を手に行進し「2030年までに半減という目標は小さすぎるし遅すぎる」と声をあげ、バイデン政権が新たに掲げた温室効果ガスの排出量の削減目標では不十分だと訴えました。

デモの参加者たちは、手押し車で運んできた土を道路上に投げ捨てて、抗議の意思を示していました。

デモを主催した団体のメンバーは「バイデン大統領は私たちの未来のために行動しなければならない。2030年では遅いし、50%では少ない。2025年までに温室効果ガスの排出量ゼロを達成する必要がある」と話していました。

グレタさん 「必要な対策とのギャップ広がっている」

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんは、気候変動サミットに合わせてツイッターに動画を投稿し、各国の削減目標は不十分で抜け穴があり、必要な対策とのギャップがあると訴えています。

22日には、アメリカの議会下院の委員会でオンラインで証言し「気温の上昇を1.5度以下に抑える目標のために私たちが行っていることと、実際にやるべきことのギャップは刻々と広がっている。パリ協定の約束を守るためには、化石燃料への補助金を打ち切り、新たな探査や採掘をやめないといけない」と呼びかけました。

そして「あなた方のような権力者がいつまで逃げられると本気で思っているのですか?」と議員たちに問いかけたうえで「歴史の教科書にあなた方のことを書くのは私たち若者です。私からのアドバイスは賢明な選択をすべきだということです」と述べて、対策の強化に取り組むよう迫りました。