東京五輪開幕まで3か月 コロナ影響で選手は難しい調整

東京オリンピックの開幕まで23日で3か月、新型コロナウイルスの影響で選手たちはかつてない難しい調整を強いられています。多数のメダル獲得が期待される柔道の内定選手たちは、海外での国際大会から帰国後、2週間の隔離生活を経験し、体力の低下など不安を感じながらトレーニングを続けています。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京大会に出場を予定している選手たちは国際大会などに出場後、海外から帰国した際、2週間の待機期間が必要で、この期間は原則、大会や練習への参加ができなくなっています。

柔道 帰国後に2週間の待機 満足な稽古できず

オリンピックでメダルの量産が期待されている柔道では、14人の代表内定選手のうち13人の選手が、ことし1月から今月までに行われた国際大会に出場しました。

いずれの選手も帰国後、2週間にわたって自宅や都内の施設で待機し、自室での筋力トレーニングなど限られたメニュー以外は柔道の満足な稽古ができない期間を過ごしました。

けがを抱えている内定選手の中には、待機期間にリハビリに通えないことを理由に、今後の国際大会や海外での合宿の参加を見送る選手も出ています。

オリンピック2大会連続の代表に内定している女子63キロ級、田代未来選手は先月、ウズベキスタンで行われた国際大会で優勝したあと、2週間の待機期間を自宅で過ごしました。

田代選手は「体力が少し落ちてしまい、けがの心配も増えてしまっていた」と、この期間を振り返ったうえで、本番に向けては「本当に世の中が大変な状況で『開催されるか』『開催されないか』と言われているが、きたる日に向けて準備をすることしかできない。開催されることを信じてしっかり準備していきたい」と覚悟を示していました。

一方、女子57キロ級で初めてのオリンピック代表に内定している芳田司選手はことし1月の国際大会で優勝後、今後は国際大会や海外の合宿に参加する予定はないとしています。

芳田選手は「こんな状況だが、出し切れるように、後悔のないように戦い抜きたいと思う」と話していました。

柔道では今後、オリンピックまで3か月の男女の強化方針も異なっています。

男子は海外の選手と組み合う機会を確保することを目的に、来月中旬にスペインで行われる国際合宿への参加を検討しています。

男子日本代表の井上康生監督は「国際柔道連盟も厳格なプロトコルを作り、厳しい環境のもとで合宿想定しているという情報だ。ぎりぎりまで世の中の情勢を確認したうえで進めていきたい」と話しています。

一方、女子は合宿参加による感染のリスクや、帰国後の待機期間に十分な稽古ができないことを理由に、国際合宿への参加は見送る方針です。

女子日本代表の増地克之監督は「その分、国内でしっかりと個々で合宿をして、オリンピックに向けて準備していきたい」と話しています。

テコンドー 開催懸念の声の中で

東京オリンピック、テコンドーの代表に内定している選手たちは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催そのものに対する懸念の声があることに理解を示しながらも、1人のアスリートとして本番での活躍を目指して調整を続けています。

代表に内定している男女4人の選手は、去年2月以降、感染防止のためにそれぞれの所属先を中心に練習していましたが、先月からは東京 北区にあるナショナルトレーニングセンターで合宿をするなどして強化を図っています。

こうした中で、開幕まで3か月となったことについて、女子49キロ級の山田美諭選手は「緊急事態宣言が出される見通しの状況で、大会そのものの中止など、意見も多く出ていると思う。自分や家族の命がすごく大切なので、普通のことだと思う」と理解を示しました。

そのうえで、初めてのオリンピックに向けては「東京大会に向けて練習を積んできたので、アスリートとしては開催してほしい気持ちが強い。表彰台に立つことをイメージして、日々やることをやっていくだけだと思う」と活躍を誓いました。

世界選手権で優勝した経験があり、オリンピックには3大会連続の出場となる女子57キロ級の濱田真由選手は「私たちではどうにもできない中で時間が近づいてきている。しっかり仕上げて、試合をできる準備をするのがいちばん大事だと思う」と話しています。

一方、男子は初出場の鈴木セルヒオ選手とリカルド選手が兄弟で出場します。

感染拡大の影響で道場が使えない時期があったため、2人は自宅でスパーリングをするなどして練習を重ねてきました。

58キロ級、兄の鈴木セルヒオ選手は「コロナの影響でいろいろな方がつらい思いをしている中で『オリンピックを開催してください』と胸を張って言いづらいところもあるが、中止になっていない以上、一選手として大会に向けて準備しないといけない」と話していました。

68キロ級、弟のリカルド選手は「去年、延期になり、ことしもオリンピックをやるのかなという気持ちもあるが、そこで気持ちが切れたらだめだ」と、みずからに言い聞かせていました。

「アスリートとして賛成 一国民として反対」その後の心境は

陸上女子10000メートルで去年12月にオリンピック代表に内定した新谷仁美選手は、開幕半年前となったことし1月のNHKのインタビューでは、東京大会開催に対する「逆風」とも言える厳しい世論を踏まえ「アスリートとしては賛成だが、一国民としては反対という気持ちだ」と語っていました。

今月中旬、開幕まで3か月になるのを前に改めてインタビューで心境を聞いたところ「今も正直、変わっていない。アスリートが活躍する場所を作り出してくれるのは国民だと理解すべきで、その理解が得られなければ、大会を開催しなくてもいいのではないかと思っている」と話しました。

新谷選手は、一度引退して会社員を経験したみずからの経歴を踏まえ「自分の得意なことで対価をいただいているので、本当に幸せ者だと思う。求められているのは結果だけではなく、国民にどれだけ寄り添って戦えるかということだ。国民の代表として、誇り高くスタートラインに立つことこそが、本当の日本代表だと思う」と述べました。

そのうえで「誇り高く大会に臨めれば、その舞台で何を求めていきたいか」と聞いたところ「笑われるかもしれないが、金メダル。金メダルを取るために、ふだんのトレーニングが結果に結び付くと思っているので、そこはしっかり徹底していきたい」と、高い目標に挑む考えを強調しました。