米 温室効果ガス排出量“2030年までに半減” 新たな目標表明へ

アメリカのバイデン大統領が日本時間の22日夜9時から始まる気候変動サミットで自国の温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年と比べて50%から52%削減する新たな目標を表明することが明らかになりました。これまで2025年までに26%から28%削減するとしてきた目標を大幅に引き上げて国際的な指導力を示し、国内外のさらなる取り組みを促すねらいです。

アメリカのバイデン大統領はアメリカ東部時間の22日午前8時、日本時間の22日夜9時から気候変動サミットを開催します。

サミットは2日間の日程で40の国と機関などの代表が温室効果ガスの削減に向けた対応を協議し、最初のセッションには菅総理大臣や中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領をはじめヨーロッパ各国など26の国と地域の首脳と国連のグテーレス事務総長が出席します。

アメリカ政府高官によりますとバイデン大統領はこの場で自国の温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年と比べて50%から52%削減する新たな目標を表明する方針です。

アメリカの温室効果ガスの排出量については2015年、当時のオバマ政権が2025年までに2005年と比べて26%から28%削減する目標を国連に提出していて、新たな目標はこれを大幅に引き上げています。

バイデン大統領は気候変動を地球規模の重大な危機だとしてその対応を最重要課題の1つに位置づけていて、温室効果ガスの削減目標を大幅に引き上げることで、国内の機運を高めるとともに各国のさらなる取り組みを促したい考えです。

またバイデン政権は「パリ協定」で示された世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質的にゼロにするという目標の達成には、世界最大の排出国である中国の協力が不可欠だという立場で、今回のサミットの開催を通じて国際的な指導力を示し、中国にも対応を求めるねらいもあるとみられます。

米 指導力取り戻し 対策加速ねらう

アメリカが気候変動サミットを開催するねらいについて専門家は国際的な指導力を取り戻すとともに国内で対策を加速させる機運を高めるねらいがあると指摘しています。

オバマ政権で政府高官として気候変動対策を担ったジョージタウン大学のジョー・クルーガー氏はトランプ前政権が気候変動対策に消極的だったことに言及し「われわれが4年を浪費したのは明らかだ」と述べ、アメリカの対策の遅れに懸念を示しました。

そのうえでバイデン大統領がサミットで表明する自国の温室効果ガスの削減目標を2030年までに2005年に比べて半減させる新たな目標に関して「アメリカがこれまで約束したことがない野心的な目標になる。アメリカの意欲を示し、指導力にもつながるだろう」と指摘しました。

また今回のサミットのねらいについて「アメリカの指導力を示し、各国の首脳の連携を図って外交に勢いを作り出したいのだと思う。また国内向けにはアメリカ単独ではなく、各国が削減を約束する世界的な取り組みだと示して、関心の低い国民にアピールすることができる」と述べました。

さらに「気候変動対策をめぐってアメリカはこれまで政権が代わるたびに振り子のように振れてきた。バイデン政権の大きな課題は政権が代わっても継続するよう世論の支持を得て政策を実行することだ。バイデン大統領が国内でどれだけ力強く、意欲的に政策を進められるかが重要だ」と述べ、国内で気候変動対策に消極的な層からの根強い反発があるなか、国内の機運を高め継続的な取り組みへとつなげられるかどうかが課題になると指摘しています。

EU 「グリーンディール」で経済成長へ

EUは新たな成長戦略として、温室効果ガスの排出量の削減につながる産業を振興する「グリーンディール」を掲げ、温暖化対策の強化を経済成長につなげることを目指しています。

柱としているのが風力や太陽光といった再生可能エネルギーの普及や次世代のエネルギーとして期待されている水素の技術開発などです。

このうち再生可能エネルギーは、EU全体で電力に占める割合が2018年の時点で30%を超えていますが、洋上での大規模な風力発電所の設置などを進め、2030年には65%以上になるのを目指しています。

水素についてはフランスとドイツが2020年、それぞれ戦略を発表し、両国で合わせて160億ユーロ、日本円で2兆円余りを投資して、水素を燃料とする飛行機やトラックなどの開発や、製造時に温室効果ガスを排出しない「グリーン水素」の生産拠点の建設などを通じて、技術開発を加速させようとしています。

さらに、EUでは温暖化対策を進めることで域内の産業の国際的な競争力が失われないように、対策が不十分な国からの輸入品に関税などをかけるしくみ「炭素国境調整措置」の導入も検討されています。

EUでは、天候などに左右される再生可能エネルギーの安定的な供給を実現していくことやドイツやポーランドなど石炭火力発電に電力を依存している国が国内外で求められている「脱石炭」をすみやかに進められるかが大きな課題となっています。

また「炭素国境調整措置」をめぐっても保護主義につながり国際的な対立を招きかねないといった懸念も出ています。

温室効果ガス削減 各国の目標

2015年に採択された温暖化対策の国際的な枠組み、「パリ協定」では、▼世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に保つとともに、1.5度に抑える努力をすることや、▼世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質的にゼロとすることを目標に掲げました。

国連は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えるためには2030年までに排出量を45%削減する必要があるとしています。

各国の間では、2050年までに排出量の「実質ゼロ」を目指すことを表明するとともに、中間的な位置づけとなる2030年までの目標を引き上げる動きも相次いでいます。

去年、▼EU=ヨーロッパ連合は2030年までに排出量を1990年に比べて少なくとも55%削減、▼イギリスは少なくとも68%削減するといずれも目標を引き上げ、さらにイギリスは今月、2035年までに78%削減するとの新たな目標を発表しました。

▼また最大の排出国である中国も去年、二酸化炭素の排出量が2030年までにピークに達するようにすることを掲げ、GDP=国内総生産あたりの排出量も2030年までに2005年に比べて65%以上削減すると表明しました。

▼ロシアは「2030年までに1990年に比べて30%削減する」とする目標を去年国連に提出したほか、▼インドは「2030年までにGDPあたりの排出量を2005年に比べて33%から35%削減する」という目標を掲げています。

国連は、各国が去年末までに提出した削減目標を積み上げても、現状では気温の上昇を1.5度に抑えることは困難だとしてことし2月、さらなる目標の引き上げを呼びかけていました。