大阪府 緊急事態宣言の発出 国に要請することを決定

大阪府は、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、府内での感染の急拡大に歯止めがかからず、医療のひっ迫が深刻さを増している状況を受け、さらに強い対策を講じる必要があるとして、緊急事態宣言の発出を要請することを決定し20日夜、正式に要請しました。

吉村知事は宣言の期間について、3週間から1か月が適切だという考えを示しました。

大阪府は、府内での新型コロナの感染の急拡大に歯止めがかからず、医療のひっ迫度合いも深刻さを増している状況を受け、20日午後、対策本部会議を開きました。

この中で吉村知事は「医療が極めてひっ迫している状況を考えると『まん延防止等重点措置』だけでは効果が十分ではない。変異株の感染拡大力や重症化率の高さなどを考えると、緊急事態宣言の発出を要請すべきだ」と述べました。

また会議では「まん延防止等重点措置」が適用されてから2週間ほどが経過した現在も、依然、感染拡大が続いていることや、重症病床の運用率や感染経路の不明者の割合など感染状況を示す指標のうち、ほとんどの指標が最も深刻な「ステージ4」になっていることなど、府内の深刻な感染状況が報告されました。

そして、会議ではさらなる感染拡大を食い止めるためには「まん延防止等重点措置」より強い対策を講じる必要があるとして、緊急事態宣言の発出を国に要請することを決定し、20日夜、正式に要請しました。

会議のあと吉村知事は記者団に対し、宣言の期間について、3週間から1か月が適切だという考えを示しました。

そのうえで宣言が発出されれば、人出を抑えるため百貨店や商業施設それにテーマパークなど、規模の大きな集客施設を中心に休業を要請したいとして、具体的な措置について国との調整を急ぐ考えを示しました。

知事「今の状況では飲食店への時短要請だけでは不十分」

吉村知事は対策本部会議のあと、記者団に対し、緊急事態宣言の発出要請について「府民や事業者に大きな負担をお願いすることになるが、ぜひご協力をいただきたい」と述べたうえで、宣言の期間については、3週間から1か月が適切だという考えを示しました。

そのうえで吉村知事は「大規模な商業施設、大規模な遊興施設に休業をお願いすることで、人の流れを抑えていきたい。大きな百貨店やショッピングモール、映画館は徹底した感染防止の対策が取られ、クラスターも発生していない。しかし、今の感染拡大の状況では、飲食店への時短要請だけでは不十分だ。人出を抑え、社会における感染拡大を防ぐために、協力をお願いすることになる」と述べました。

大阪府が検討している措置とは

緊急事態宣言が発出された場合、大阪府はどういう措置を検討しているのか、改めて見てみます。

吉村知事は20日の会見で規模の大きな商業施設や遊興施設に休業要請を行う考えを示しました。
具体的にあげたのは
▽大規模な百貨店、
▽商業施設、
▽ショッピングモール、
▽地下街、
▽大きな映画館、
▽テーマパークなどです。
こうした施設について府は1回目の宣言では休業を要請しましたが、2回目の宣言では営業時間を午後8時まで短縮することへの協力の呼びかけにとどめていました。

今回、休業要請を検討している理由について吉村知事は「これまでクラスターは発生していないが人が大きく集まり人の流れが生まれることでそのあとの行動などが感染の原因となる。飲食店の時短営業だけでは不十分だ」と述べて理解を求めました。

また吉村知事はスポーツイベントなどについても「宣言の期間中は原則、中止か延期とすべきだ」と述べ人の流れを抑制するために実施すべきではないという認識を示しました。

一方、過去2回の宣言時に時短営業を要請していた飲食店についてより強い措置を3つの案で検討しているとしています。
府が検討しているのは
1「すべての飲食店に休業を要請する」、
2「土日・祝日は休業を要請し平日は午後8時までの営業としたうえで酒類の提供はしない」、
3「休業の要請はしないものの営業時間は午後8時までで酒類の提供はしない」の3つの案です。

府はこの3つの案を国に提案していて、調整を急ぐとしています。
一方、小中学校や高校については1回目の宣言のときのような一斉休校は行わず、通学に不安のある子どもにはオンラインでの学習支援を行うことなどを検討しています。

専門家「どれほど強く人の流れ止めるかにかかっている」

国立感染症研究所の客員研究員で、自身も新型コロナ患者の治療にあたっている、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「ここまで感染者が増加し、変異株が広がった中、感染者が減るかは、どれほど強く人の流れを止めるかにかかっている。変異株が広がったイギリスではロックダウンをしてもうまくいかず、ワクチン接種を進めてようやく感染者を減らすことができた。人出の多さを見ると、日本がとんでもないことになっていることをまだ実感していない人が多いと思われ、緊急事態宣言が本当にうまくいくか、危惧している」と指摘しています。

そのうえで「大型連休中は多くの人に家にいてもらわないと、患者数は減らない。変異株の感染力はそれくらい強力だ。そのことを理解してもらい、1人1人が対応しないと、本当に感染は減らない」と話していました。

大阪府内では病床が危機的状況になる中、安井医師の病院でも重症病床は埋まっていて、重症に相当する状態の患者の治療を中等症の病床で行っています。

こうした状態について「40代、50代、60代が重い肺炎になってから入院している。重症病床が埋まっている中でいかにして重症化を回避するか、毎日が戦いのような状態だ」と話していました。

現在の大阪府内の医療体制について、安井医師は「今は発熱しているというだけで新型コロナが疑われるため、すぐに受け入れてくれる病院がなく、救急車の行き場がなくなっている。コロナの患者もそれ以外の疾患の患者も十分に医療を受けられない患者が増えてきている。患者はどんどん増えていて、われわれとしてはもうすでに医療体制は破綻していると考えている。患者数が減らないかぎり、もっと破綻が広がっていってしまう」と警鐘を鳴らしていました。

そして「従来なら絶対に入院しないといけない人が、今は入院できなくなっている。今ここで患者をすぐにでも減らさないといけないが、そのためには人と人との接触を減らすことがいちばんだ。中途半端なことをしても、感染拡大の期間が長く続くだけで、どれだけ短期間に押さえ込むかが、効果をあげるうえでいちばん大切だ」と話していました。