地元メーカー生産の小型冷凍庫活用 柔軟な接種可能に 新潟 燕

高齢者への接種が始まっているファイザー社製の新型コロナウイルスのワクチンについて、新潟県燕市では、地元の家電メーカーが生産した小型の冷凍庫を活用して接種場所まで届ける取り組みを始めました。市は、冷凍して運ぶことで保存できる期間が延びるため、柔軟な接種が可能になるとしています。

「燕市モデル」と名付けられたこの取り組みは、燕市が19日から運用を始めました。

輸送に使われているのは地元の家電メーカーが生産する冷凍庫で、マイナス40度まで冷却が可能で、小型で車からも電源を取ることができるため、冷凍したまま輸送できるということです。

ファイザー社製のワクチンは当初、マイナス60度以下の超低温で管理する必要があり、市ではこの冷凍庫を超低温にする必要がないモデルナ社製のワクチンで使用することを想定していましたが、その後、ファイザー社製のワクチンでもマイナス20度前後で最長で14日間保管できることになったため、活用できることになりました。

19日は、2台の冷凍庫に入れられたファイザー社製のワクチンが、マイナス25度の冷凍状態を保ったままで接種会場となる2か所の高齢者施設に冷凍庫ごと届けられました。

ファイザー社製のワクチンは、冷凍せずに輸送する場合は、輸送時間は原則3時間以内にすることとされ、解凍後の保存期限も5日間に限られます。

マイナス20度前後で冷凍した状態なら、輸送時間は24時間、保存期限は14日間に延びるということです。

燕市健康福祉部の本間修医療主幹は「保存期限が延びれば、発熱などで接種できない場合も再度の接種が可能になり、廃棄防止に効果が上がるのではないか」と話していました。

ファイザー製ワクチンにも使用可能 問い合わせ相次ぐ

今回、使われた冷凍庫は、新潟県燕市の家電メーカー「ツインバード工業」が生産しているもので、温度を1度単位でマイナス40度まで設定することができます。

重さはおよそ16キロと小型で、車から電源を取ることもできるため、持ち運びが可能だということです。

会社によりますと、マイナス20度前後での保管となっているモデルナ社製のワクチンでの使用を想定して、国や製薬会社から1万台の発注を受け、別の地元企業などから人員の応援を受けるなどして通常の10倍近いペースで生産してきました。

会社によりますと、ファイザー社製のワクチンでも使用が可能になったことから、県外の自治体からも問い合わせが相次いでいるということです。

輸送や保存期限が延びワクチンのむだも防ぐ

燕市によりますと、ファイザー社製のワクチンの輸送や保存の期限が延びることで体調不良などによるキャンセルに対応がしやすくなり、ワクチンのむだを防ぐことができるとしています。

また、診療所は土日が休みのことが多いため、5日間しか保存できない場合は、なるべく月曜日にワクチンを届ける必要がありますが、14日間、保存できれば診療所に届ける日時も柔軟に対応できるということです。

さらに、ファイザー社製のワクチンは冷凍されていない状態で振動を加えると品質が低下するおそれが指摘されていますが、冷凍したまま運ぶことができれば品質や有効性を維持することにもつながるということです。