ワクチン接種受けてない医師が高齢者に接種 現場から不安の声

新型コロナウイルスのワクチン接種について、政府は19日、都道府県別の実績を初めて公表しました。

ワクチンは2月から医療従事者などへの接種が進められていますが、医療従事者などで2回の接種を終えた人は15%ほどです。

今月12日からは65歳以上の高齢者への接種も始まり、多くの自治体が来月以降、接種を本格化させる中、医療従事者からは不安の声があがっています。

現場では、ワクチンの接種を受けていない医師による高齢者への接種が始まっています。

高齢者施設の医療従事者は優先順位低く

大阪 平野区にある介護老人保健施設では、今月14日から入所者80人余りを対象にワクチンの接種が始まりました。

しかし、接種にあたる医師や看護師などはまだ接種を受けていません。

医療従事者は最優先で接種を受けられることになっていますが、大阪府では、高齢者施設に勤務する医療従事者は、コロナ患者の治療にあたる医療従事者などに比べて優先順位が低く位置づけられています。

この施設の医療従事者が接種を受けられるのは、ワクチンの供給が本格化する来月以降になる見通しだということです。

医師として入所者への接種を行っている中澤秀夫施設長(77)も、まだ接種を受けていません。
中澤施設長は「施設で働く医師や看護師はすでにワクチン接種を済ませていると多くの人が思っていると思いますが、現実は違います。毎日ひやひやしながら職場に来ていて、もう少し早く接種を受けられるよう対応してもらいたいです」と話しています。

「自分が打たずに他人に打ち始めるのは抵抗ある」

23万人の高齢者がいる大阪 堺市では、体育館などで行う「集団接種」に加え、来月19日からは、かかりつけ医などによる「個別接種」を始める予定で、地元の医師会とともに接種体制の構築を急いでいます。

このうち堺市西区にある診療所の院長、小田真医師は「個別接種」の医師として協力する予定です。

しかし、自分はまだ接種を受けておらず、見通しも立っていません。

自分の接種が終わらないうちに高齢者への接種を始めるのは避けたいと考えています。

小田医師は「いつ受けられるのか、大阪府から全く連絡がありません。3週間をあけて2回の接種が必要なため、このままでは、個別接種が始まる来月19日に間に合わないおそれがある。自分が感染したら10日間は何もできなくなり『個別接種』も担えなくなる。患者にうつしてしまう可能性もあり、自分がワクチンを打たずに他人に打ち始めるのは抵抗がある」と話しています。
堺市医師会の西川正治会長は「医療現場へのワクチン接種が終わらないうちに高齢者接種を始めることは、少し無謀だと感じている。こうした状況だと医療従事者にためらいが生まれ、協力したくてもできなくなってしまう。行政は高齢者用のワクチンを医療従事者に振り分けるなど、柔軟な対応を求めたい」と話しています。