安全保障関連法違憲争う裁判 憲法判断せず訴え退ける 大阪高裁

集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法は憲法9条に違反すると主張して関西の市民らが国を訴えた裁判で、2審の大阪高等裁判所は、憲法判断をしないまま訴えを退けました。

6年前に成立し、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法について関西などの市民460人余りが戦争の放棄を定めた憲法9条に違反すると主張して、裁判で、この法律に基づく自衛隊の防衛出動を禁止することなどを求めていました。

16日の2審の判決で、大阪高等裁判所の山田陽三裁判長は、この法律に基づいて総理大臣が自衛隊に防衛出動を命令することは行政機関の内部的な行為で、国民が裁判で争える対象にはならないという判断を示しました。

さらに「法律が成立してからこれまで自衛隊に防衛出動が命じられたことや、わが国が他国間の戦争に巻き込まれた事実はなく、憲法に適合しているか判断する必要はない」と述べ、訴えを退けました。

原告側によりますと同様の裁判は全国で25件起こされていますが、今回も含めこれまで言い渡された11の判決はすべて憲法判断をしないまま訴えを退けています。
原告側の冠木克彦弁護団長は会見で「戦争や戦闘が起こらなければ権利は認められないのか。憲法判断も回避していて、裁判所の責務を放棄した判決だ」と批判しました。

司法 憲法判断示さず

安全保障関連法は歴代内閣が憲法9条のもと集団的自衛権の行使は許されないとしてきた従来の憲法解釈を平成26年に安倍政権が変更し、翌年、国会で成立しました。

憲法との整合性が激しい議論になったこの法律について、憲法9条に違反しているとして反対する立場の市民らは違憲審査権を持つ司法に判断を委ねようと全国で25件の集団訴訟を起こしました。

しかし、これまでに言い渡された10件の判決のすべてで、裁判所は安全保障関連法が憲法9条に適合しているかどうかの判断をしないまま訴えを退けています。

いくつかの判決は「裁判所が法律の違憲審査をできるのは原告に具体的な影響が出ている場合に限られる」という見解を示し、憲法判断をしなかった理由にあげています。

このうちおととしの東京地方裁判所の判決は、「裁判が終結した時点で、日本が他国からの武力行使の対象とされているとは認められず、戦争やテロ攻撃のおそれが切迫し、原告の生命や身体の安全が侵害される具体的な危険が発生したとは認めがたい。原告に損害賠償によって保護すべき利益があるとはいえないから、憲法判断をする必要はない」としています。

こうした裁判所の姿勢に対して大阪の原告は大阪高等裁判所で行われた2審で、「戦争や武力の行使は必ず誰かの自由や人権への侵害をもたらす。現に血が流れてから救済に乗り出すようでは、司法の役割を放棄するものというほかない」と批判しました。

そして「憲法は国家権力を制限するためにあり、行政による自由な『解釈変更』が許されていいはずがない。司法と政治の役割分担からも裁判所の適切な憲法判断が求められる」と主張して安全保障関連法が憲法9条に適合するのか裁判所が判断を示すよう強く求めてきました。

しかし、一連の裁判で11件目となった大阪高裁の判決も憲法判断を示しませんでした。

安全保障関連法とは

6年前に成立した安全保障関連法によって戦後日本の安全保障政策は大きく転換しました。

法律では、歴代の内閣が憲法9条のもと行使は許されないとしてきた集団的自衛権の行使を可能としました。

法律では、集団的自衛権の行使が可能となる事態を「存立危機事態」と定義し、内容は「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」としています。

こうした事態が起きた際には、自衛隊が防衛出動し、武力の行使ができるとしています。

また、外国軍隊への物資の補給や輸送といった後方支援も大きく変わりました。

日本の平和と安全に重要な影響を与える事態を「重要影響事態」と位置づけて、地理的な制約のないことを明確にしました。

周辺事態法では、自衛隊の活動期間を通じて戦闘行為が行われることがない場所を「後方地域」として活動場所を限定していましたが、「戦闘行為が行われている現場以外」での活動が可能となりました。

支援の対象もアメリカ以外の外国の軍隊も認め、新たに弾薬の提供も認めるとしました。

さらに、国際貢献のための後方支援については、新たに「国際平和支援法」を制定し、政府は必要に応じてそのつど特別措置法をつくらなくても済み、自衛隊を迅速に派遣できるようになるとしました。

また、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態での外国軍隊に対する防護を可能にしました。

一方、国連のPKO活動での任務や武器使用権限を拡大し、他国の部隊などが、武装集団から危害を加えられそうな場合に、自衛隊が武器を使って救援する、いわゆる「駆け付け警護」や、住民の安全を確保するため、巡回や警護、検問といった活動も新たに可能になりました。

このほか、海外での邦人救出を可能にすることも盛り込まれました。

法律が平成28年に施行されてから、これまでに集団的自衛権の行使が可能になる「存立危機事態」や、地理的な制約なく外国の軍隊に弾薬の提供などを行える「重要影響事態」に認定されたケースはなく、安全保障関連法に基づく任務で自衛隊が武器を使用する事態は起きていません。

国会審議当時から憲法と適合か議論に

集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法をめぐっては、国会での審議が行われていた当時から、憲法と適合するかどうか議論になっていました。

集団的自衛権の行使は、自分の国が攻撃されていなくても、同盟国などへの攻撃に対して反撃することで、歴代内閣はそれまで憲法9条のもと行使は許されないとしてきました。

これについて政府は平成26年に従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定し、それに基づいて、翌年、安全保障関連法が成立しました。

そして、政府は、法律について、あくまでも日本の防衛のために、限定的に集団的自衛権の行使を可能にするものだとして、これまでの政府の憲法解釈との整合性は保たれているとしました。

これに対し、法案に反対した野党は「憲法違反だ」と指摘しました。

また、平成27年の衆議院憲法審査会で、3人の学識経験者全員が「憲法違反にあたる」と指摘しました。

さらに同じ年の衆議院特別委員会の参考人質疑でも2人の内閣法制局長官経験者が「従来の政府見解と相いれない」などとして、憲法に違反すると主張しました。

さらに、憲法学者などで作るグループが「明白に憲法違反だ」とする声明を発表するなど、法律の憲法との適合性をめぐって大きな議論となりました。

防衛省「裁判所から理解が得られた」

判決について防衛省は「国の主張について裁判所から理解が得られたと受け止めている」とコメントしています。