「まん延防止措置」埼玉 千葉 神奈川 愛知に適用 分科会が了承

新型コロナウイルスの感染が再拡大している埼玉、千葉、神奈川それに愛知の4県に対し、専門家でつくる分科会は「まん延防止等重点措置」を適用する政府の方針を了承しました。
政府は、夕方開く対策本部で決定することにしています。

感染症などの専門家でつくる政府の「基本的対処方針分科会」は、西村経済再生担当大臣らが出席して開かれました。

西村大臣は「全国的に感染者の数が増加し、特に感染力が強く、比較的若い世代でも重症化しやすいという変異株の感染者の増加傾向が継続している。5月には、首都圏、関西圏、中京圏いずれも、ほぼ変異株に置き換わるという予測が報告されており、極めて高い警戒感を持って対応しなければならない」と述べました。

そのうえで、埼玉、千葉、神奈川の首都圏の3県と愛知県に対し、来週20日から来月11日まで「まん延防止等重点措置」を適用する方針を諮りました。

また、西村大臣は、4県の知事が決める重点措置の対象地域について、
▽埼玉は、さいたま市と川口市
▽千葉は、市川市、船橋市、松戸市、柏市、浦安市
▽神奈川は、横浜市、川崎市、相模原市
▽愛知は名古屋市になるという見通しを示しました。

そして、午後8時までの飲食店への営業時間の短縮要請や、イベントの開催制限、それに、不要不急の外出や感染拡大地域との往来の自粛の呼びかけなど対策を徹底する考えを示しました。

分科会では、こうした政府の方針について議論が行われ、了承されました。

一方で、専門家からは「奈良と福岡の状況を注視する必要がある」といった指摘や「今後の感染状況を市区町村単位で細かく見ていくべきだ」という意見が出されました。

これを受けて、政府は、午後、国会に報告して質疑を行ったうえで、夕方開く対策本部で4県への適用を決定することにしています。

「重点措置」の適用は、東京や大阪など6都府県から、10の都府県に拡大されることになります。

分科会 尾身会長「地域ごとの情報分析 市民への共有が必要」

「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は会合のあと報道陣の取材に応じ、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県の4県に対し「まん延防止等重点措置」を適用する政府の方針を了承したと述べました。

そのうえで「政府に強く提案したのは、これからは、感染者数や人出、それに感染者に占める若い世代の割合などの指標を都道府県全体の平均値だけではなく、より細かい地域ごとにもう少し詳しく情報を分析し、市民に共有することが必要になるということだ。それによってタイミングを逸することなくまん延防止等重点措置を出すことができるようになる。変異株の影響で感染拡大のスピードが速くなっているので、対策を打つタイミングが遅くなると、結果的に医療のひっ迫を招く。より適切なタイミングで迅速に重点措置を出すため、細かい地域ごとの情報が非常に重要だ」と指摘しました。

西村経済再生相「極めて強い危機感を共有」

西村経済再生担当大臣は、分科会のあと「変異株が急速に広がっており、専門家と極めて強い危機感を共有した」と述べました。

また、埼玉、千葉、神奈川の状況について「全体として『ステージ2』か『3』の間の状況だと思うが、東京に近いエリアでは感染が急激に広がっており『重点措置』の適用は適切だと指摘をいただいた。それぞれの都道府県と地域の感染状況を共有しながら対応したい」と述べました。

さらに「奈良は、大阪との関係で感染が多いということで、まずはテレワークなどをお願いし、感染防止策を徹底する。福岡は落ち着いていたが、少し予兆が見え始めているのではないかと指摘された。知事とも連携し、状況を確認し共有しながら、必要があれば機動的に対応したい」と述べました。

萩生田文部科学相「休校を前提することは考えていない」

萩生田文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で、変異ウイルスの感染拡大に伴う学校現場の対応について「罹患率が低いとされていた従来の株に比べると、子どもへの感染拡大の一層の警戒が必要で心配しているところだが、休校を前提することは考えていない」と述べ、一斉休校には否定的な考えを示しました。

そのうえで「臨時休校等は、学校の設置者が判断するが、地域一斉の臨時休校は、学びの保障や子どもたちの心身への影響などの観点を考慮する必要があるため、真に必要な場合に限定して慎重に判断すべきだ」と述べました。

日本医師会 釜萢常任理事「宣言発出も必要」

日本医師会の釜萢敏・常任理事は記者団に対し「奈良への適用が見送られたことは、東京周辺の3県が指定されたこととの整合性が取れない。また、福岡は急激に感染が拡大しており注視が必要で、個人的には、来週にも検討がなされるのではないかと思う」と述べました。

そのうえで「新規感染者が減らないかぎり、医療の状況は改善しないので『できることは何でもやる』という強い危機感のもとに政策を決めてほしい。緊急事態宣言も発出し、最大限の対策を講じることが、現時点では必要だと強く思う」と述べました。

さらに、東京オリンピック・パラリンピックの開催について「国民の大きな希望であり、実施できることを望んでいるが、感染の拡大がひどくなると、願いがかなわない事態も起こりうるかもしれない。政治の決断が必要な時期が迫っている」と述べました。

自民 佐藤総務会長「対応は筋道として間違っていない」

自民党の佐藤総務会長は、記者会見で「先日まで緊急事態宣言が発令されていて、その後、新規感染者の発生が顕著になったので、重点措置を適用するというのは、至極、当たり前のことだ。『適用が遅い』という野党の批判は決してあたらない。これからどうなっていくか見守らないといけないが、各自治体の努力も肝要であり、政府の対応は筋道として間違っていない」と述べました。

立民 安住国対委員長「本来の趣旨から外れた制度運用」

立憲民主党の安住国会対策委員長は会合で「重点措置は、感染に関する指標が上昇傾向にある時に適用するものだ。上昇しきって非常に危機的な状況にある今は、まさに緊急事態であり、政府は本来の趣旨から外れた制度運用をしている。感染拡大が日米首脳会談やオリンピックなどに影響を与えてはならないという政治的な意図が働いているとすれば残念だ」と述べました。

公明 山口代表「首相不在も しっかり意思決定を」

公明党の山口代表は、党の参議院議員総会で「昨夜、菅総理大臣から『4つの県を重点措置の対象とする方向で手続きをとる』と連絡があった。今回は、菅総理大臣が日本にいないもとで決定がなされる。大型連休中には、インドやフィリピンへの訪問も調整しているということなのでしっかりとした意思決定や、自治体との連携が必要だ」と指摘しました。

維新 片山共同代表「大都市など 緊急事態宣言 検討の余地」

日本維新の会の片山共同代表は、記者会見で「変異ウイルスの感染が拡大しているので、広い範囲で国家的な対応を考えたほうがいい。大都市とその周辺の自治体は人の行き来があるので、緊急事態宣言を検討する余地があるのではないか」と述べました。

共産 田村政策委員長「対応が中途半端のため 感染の波が何度も」

共産党の田村政策委員長は、記者会見で「感染が抑えられないのは検査、医療、補償などで、政府の対応が中途半端だからだとしか言いようがなく、そのために大きな感染の波が何度も何度も繰り返しおそってきてしまっている。大阪の感染者数は、すでに過去最大規模になり、今の措置のままでいいのかということは問わなければならない」と述べました。

国民 玉木代表「緊急事態宣言を出すべき」

国民民主党の玉木代表は、記者団に「緊急事態宣言を出して感染拡大を短期間で抑え込むべきで、このままでは拡大防止につながるか疑問だ。宣言を出せばオリンピックなどの行事を開催しにくくなるから、中身がほぼ同じ措置をとることでごまかしているような気もする。現実的な対策をタイミングよく打つべきで、政府の対応は不十分だ」と述べました。