変異ウイルス「人との接触 半分減らさないと拡大」 都の専門家

東京都内で、感染力が強い変異ウイルスが広がった場合、人と人との接触を半分程度まで減らさないと感染拡大を抑えられないとする分析結果を、都の専門家がまとめました。

分析結果は15日のモニタリング会議で、都の「専門家ボード」の座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授が明らかにしました。

今回の分析は、1人の感染者が何人に感染を広げるかを示す「実効再生産数」が、感染力が強いとされる「N501Y」の変異があるウイルスの場合、従来のウイルスの1.43倍になるとして計算しました。

1.43倍は、国立感染症研究所の報告をもとに仮定した数値です。

その結果「N501Y」の変異があるウイルスが広がった場合、人と人との接触を30%減らしても、1人が1.1人に広げることになり、感染は拡大するとしています。

一方、接触を50%減らした場合は、1人が広げるのは0.79人で、半分程度まで減らさないと感染拡大を抑えられないとしています。

さらに70%減らした場合は0.47人まで減少し、感染の抑制につながるとしています。

ただ、海外の研究では「N501Y」の変異があるウイルスの場合「実効再生産数」が従来のウイルスの1.9倍だという報告もあります。

この場合、人との接触を50%減らしても感染が拡大する計算になるということです。

賀来特任教授は「大阪のように新規陽性者が急増する前に、東京でも徹底して人の流れを減らしていくことが一層必要だ」と述べました。

都の研究機関 “変異ウイルスの割合増え続けている”

東京都の研究機関が、都内の一部の検体について分析したところ、従来のウイルスの割合が、およそ1か月で半分以下になり20%を切っていることがわかりました。

従来のウイルスが減る一方で、変異があるウイルスの割合は増え続けています。

東京都の「健康安全研究センター」は、持ち込まれた都内の一部の検体について、変異があるウイルスか従来のウイルスかについて分析を進めています。

それによりますと、今月(4月)11日までの1週間で分析した196の検体のうち、従来のウイルスの割合は前の週から10ポイント近く減って16.3%でした。

この割合は、およそ1か月で半分以下になっています。

その一方で、
▽感染力が強いとされる「N501Y」の変異があるウイルスの割合は37.8%
▽「N501Y」の変異はないものの、免疫の攻撃から逃れる「E484K」と呼ばれる変異があるウイルスは45.9%です。

4ポイントから5ポイント程度増えていて、2つの変異ウイルスを合わせた割合は、この1か月、増える傾向です。

モニタリング会議の中で、専門家は「従来のウイルスから変異があるウイルスに流行の主体が短期間で移る可能性もあり、爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要である」としています。