専門家「第3波より波大きくなる可能性」東京 モニタリング会議

東京都の「モニタリング会議」が開かれ、専門家は人の流れの増加に変異ウイルスによる陽性者の著しい増加なども加わり、新規陽性者数の増加比がさらに上昇することが危惧されると指摘しました。そのうえで「第3波より急速に感染が拡大し、波が大きくなる可能性がある」として強い懸念を示しました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制を、いずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

感染状況は、新規陽性者数の7日間平均が、先週の4月7日時点のおよそ395人から、14日時点ではおよそ475人となり、増加比は120%と高い水準で推移していると説明しました。

そして増加比が120%で継続すると、1日当たりの新規陽性者が、2週間後には1.44倍のおよそ680人に、4週間後の大型連休後には2.07倍のおよそ980人になると分析しました。

また都内では、感染力が強いとされる「N501Y」の変異があるウイルスと判定された件数が、14日時点では408件で、先週の時点の149件と比べて、著しく増加していると報告しました。

専門家は「すでに人の流れが増加していることや、変異ウイルスによる陽性者が著しく増加していることなどで新規陽性者数の増加比が、さらに上昇することが危惧される」と指摘しました。

そのうえで、「第3波より急速に感染が拡大し、波が大きくなる可能性がある」として、強い懸念を示しました。

一方、医療提供体制について専門家は「従来のウイルスより重症化率が高いとされる変異ウイルスによる重症者の増加を注視する必要がある。重症化リスクの高い高齢者への感染を徹底的に防止する必要がある」と強調しました。

小池知事「可能なかぎり東京へ来ないでほしい」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は、記者団に対し、「変異株が急増しているなかで、このままの人流であれば感染者数が爆発的に増えてもおかしくないという指摘を受けた。徹底した人流の抑制を皆さんとともに進めたい」と述べました。

そのうえで、「大型連休中の旅行についても中止、または延期をお願いしたい。都内での外出も必要最低限にとどめ、買い物は3日に1回程度に減らしてほしい」と呼びかけました。

また、「都外に住む人は通勤を含めてエッセンシャルワーカー以外、可能なかぎり東京へは来ないでほしい。事業者にはテレワークを徹底しオンラインの会議で出張を控えてほしい」と呼びかけました。

そして、「今こそ努力が必要だ。この流れに歯止めがかからなければ、緊急事態宣言の発出を検討せざるを得なくなるということを考えながら、行動変容をお願いしたい」と述べました。

感染状況・医療提供体制の分析結果

15日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、14日時点の7日間平均が475.3人となり、前の週からおよそ80人増加しました。

また、都内で「N501Y」の変異があるウイルスの感染が確認されたのは、14日までで合わせて408件で、今月7日までの149件と比べて、著しく増加しているとしています。

そのうえで、「『N501Y』の変異があるウイルスは、感染力が強いことから全国的に広がりを見せていて、流行の主体が従来のウイルスから変異ウイルスに短期間で移る可能性もある。爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要だ」として強い危機感を示しました。

今月12日までの1週間に、新型コロナウイルスの感染が確認された人を年代別の割合でみると、
▽20代が最も多く30.9%、
次いで
▽30代が19.1%、
▽40代が15.3%、
▽50代が13.1%、
▽10代が5.8%、
▽60代が5.5%、
▽70代が4.1%、
▽80代が2.8%、
▽10歳未満が2.4%、
▽90代以上が1.0%でした。

専門家は、20代から40代の割合が目立って上昇していると分析したうえで、「若い世代から、ほかの世代に感染が拡大する危険だけでなく、若者であっても後遺症が長引くリスクがある。あらゆる世代が感染リスクの当事者であるという意識を持つよう普及啓発する必要がある」と指摘しています。

65歳以上の高齢者は315人で、前の週から90人減少し、新規陽性者に占める割合は9.9%でした。

感染経路がわかっている人のうち、同居する人からの感染が最も多く、50.4%でした。
次いで職場での感染が前の週より1.7ポイント増えて16.4%、病院や高齢者施設などの施設での感染が6.3ポイント減って11.1%、会食は2.6ポイント増えて10.0%でした。

専門家は「多岐にわたる場面で感染例が発生している」と分析しています。

また、「感染の広がりを反映する指標」とされる感染経路がわからない人の7日間平均は、14日時点で283.0人で、前の週からおよそ49人増えました。

専門家は「感染経路が追えない潜在的な感染が拡大していることが危惧される。感染経路がわからない人の割合は20代から50代で60%を超え、60代でも50%を超える高い値だ」としています。

また、今月12日までの1週間の新規陽性者3189人のうち、18.3%に当たる585人は無症状で、専門家は「無症状や症状の乏しい感染者の行動範囲が広がっている可能性があり、感染の機会があった無症状の人も含めた集中的な検査体制の強化が求められる」と指摘しました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は、14日時点で5.1%となり、先週の4.6%から上昇しました。

入院患者は14日の時点で1424人となり、1500人だった今月7日の時点と比べてほぼ横ばいだと分析しました。

専門家は「感染力が強い変異ウイルスの感染者が急増している。病床や宿泊療養、自宅療養の体制確保のための対策を進めている」と報告しました。

また、都の基準で集計した14日時点の重症患者は、今月7日の時点と同じ41人でした。

そのうえで、人工呼吸器やエクモの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は、14日時点で168人で、今月7日の時点から4人増え、依然として多いとして、「重症患者の増加が危惧される」と指摘しています。

そして、「今後、新型コロナウイルスに感染した患者用に病床を転用することで、通常の医療への影響が深刻になり、手術の延期や入院の遅れが予測される」としています。

また、今月12日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した25人が亡くなりました。

前の週より17人減少しています。

亡くなった25人のうち23人が70代以上でした。

専門家「夜間の人出 早急に抑制する必要」

都のモニタリング会議で専門家は、都内の繁華街の夜間の人出は依然として高い水準にあり、このままでは大型連休前に感染者数が急増する可能性が高いと指摘しました。

15日のモニタリング会議で、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は都内7つの繁華街の人出について分析した結果を報告しました。

それによりますと、今月10日までの1週間の夜間の人出は依然として高い水準です。

中でも午後8時から10時までの2時間の人出は、緊急事態宣言が出ていたことし1月16日までの1週間の同じ時間と比べ1.78倍になっています。

西田センター長は、夜間の人出が高い水準のまま推移すると、大型連休前に感染者数が急増する可能性が高いと指摘しました。

そして、「夜間の人出がこのままだと1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す『実効再生産数』がさらに上昇する。変異株の感染が今後さらに広がることを考慮すると、感染拡大を止めるには、夜間の人出を早急に抑制する必要がある」と訴えました。