東京 保健所の医師 定数の3割余が欠員 入院調整など業務ひっ迫

東京都内の保健所などで、新型コロナウイルスの感染経路の調査や入院調整などを担う医師に、多くの欠員が出ていて、十分に配置できない事態になっていることが分かりました。医師が足りず、入院調整が限られた医師に集中するなど、業務がひっ迫していて人材の確保が急務です。

保健所などで住民の健康づくりなどに当たる公務員の医師「公衆衛生医師」は、感染経路の調査や患者の入院調整など、新型コロナウイルス対策で重要な役割を担っています。

都が毎年、選考して、都内の保健所などに配置していますが、今月1日時点では116人で、定数の3割余りの58人が欠員となっています。

欠員は2003年度以降では最も多く、一部の保健所では十分に配置できず、都によりますと、必要な人数の半分しかいない保健所もあるということです。
このため、入院調整などが限られた医師に集中して業務がひっ迫しているほか、住民の健康相談に応じる部署に医師がいない保健所も出ているということです。

多くの欠員が出たのは、昨年度1年間で17人が退職した一方、新たに採用できたのが4人にとどまったのが原因です。

都は大量退職の背景には、多忙を極める新型コロナウイルスの対応もあるとみていて、人材の確保が急務です。

慢性的不足がコロナで拍車かかる

「公衆衛生医師」は、都内では、31の保健所と都庁に配置されています。

公務員の医師で、新型コロナウイルスをはじめとした感染症対策のほか、赤ちゃんと母親の支援や住民の健康づくり、さらに食中毒が起きた場合の調査などにも当たります。

慢性的に不足していて、都内の公衆衛生医師は、2005年度以降、欠員が出る状態が続き、2013年度には欠員が40人を超えました。

2016年度に給与を引き上げるなど処遇の改善が行われましたが、慢性的な欠員は解消できず、新型コロナウイルスへの対応で業務がさらにひっ迫したことも加わって、多くの退職者が出ました。

東京都「対策のキーマン 安定的な確保につなげたい」

公衆衛生医師の確保を担当している東京都保健政策課の富山貴仁課長は「公衆衛生医師は医学的な知識や病院での臨床経験に基づいて新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために非常に重要な役割を担っていていわば、感染拡大防止のキーマンだ」と話しています。

そのうえで「入院が必要なのか、ホテルなどでの宿泊療養が適切なのか判断する場合、患者一人一人の容体をみるなど医師の知見が必要だ。公衆衛生医師が足りないと一部の医師に負担がかかり、すぐに適切な対応をとることが非常に難しくなる事態も生じてしまう」と話しています。

さらに、一部の公衆衛生医師に負担がかかる状態が続いていることについて、「地域住民の保健サービスの提供を維持することが非常に危うい状況だ」と話しています。

今後の人材確保については「医学部の学生に公衆衛生業務への理解を深めてもらうための取り組みや保健所で積極的に実習生の受け入れを進めたい。行政の中で医師として働くということは非常に働きがいがあるということを知ってもらい、公衆衛生医師の安定的な確保につなげたい」と話しています。