大型連休は県内で!自治体独自の補助 タイミングに懸念の声も

まもなくコロナ禍で2度目となる大型連休を迎えます。
「Go Toトラベル」の運用停止が続く中、県内の旅行に限って宿泊代金を割り引くなどの補助をする動きが全国で広がり、22の道と県が独自にこうした事業を行っていることが国のまとめでわかりました。
旅館では安心して来てもらおうと、感染対策に力を入れ、宿泊客どうしの接触を極力さけるために工夫を重ねるなどしています。
新しい業態の「安(心)・近(場)・単(独)」がキーワードになっています。
こうした現状に感染症対策の専門家からは「タイミングとしてはいいとは思えない」と懸念の声も出ています。

全国有数の温泉地 大分県では

全国有数の温泉地がある大分県では県内のホテルや旅館に県民が宿泊する代金を割り引く事業を行い、人気を集めています。

大分県は新型コロナウイルスの感染拡大で厳しい状況にある観光業を支援しようと、先月から県内の旅行を対象にした支援を始めています。

具体的には、大分県に住んでいる人が県内の旅館やホテルを利用した場合、旅行者1人当たりの上限で、宿泊で5000円、日帰りで2500円が、それぞれ割り引かれます。

当初、4万人が宿泊できるよう2億円の予算を確保し、旅館やホテル、旅行会社などに割り当てましたが、中には販売当日に完売するところも出るほどの人気でした。

今後、国から35億円の補助金が交付される見込みで、さらに事業を拡大していくことにしています。

一方、宿泊施設には感染防止のマニュアルを周知し、ルールを守るという誓約書の記入を条件としているほか、利用する県民にも感染対策を呼びかけています。

さらに感染状況が悪化して「ステージ3」相当まで上がった場合、事業そのものを停止することにしています。

去年6月から8月にかけて県民向けに同じような事業を行ったところ、およそ1万人が宿泊したということです。

「感染に気をつけながら地域の魅力を知ってほしい」

大分県観光誘致促進室の山崎吉明室長は「観光業は大分県にとって非常に大切でコロナの影響でこれだけ苦境に立たされている中だからこそ支援をしていきたい。県民にとっても同じ県内でも行ったことや泊まったことがないところがあると思うので、感染に気をつけながら地域の魅力を知ってほしい」と話していました。

予約相次ぐ別府の温泉旅館

大分県別府市の旅館では、割り引きを使う宿泊客からの予約が相次いでいるところもあります。

別府市にある旅館、「両築別邸」では、事業が始まった先月20日から今月15日までに割り引きを使って直接、宿泊を予約した人が160組にのぼっています。

旅行会社や旅行サイトを通じての予約を合わせると、割り引きを利用している客は全体の6割ほどにのぼるとみられるということです。

この旅館では新型コロナウイルスの感染対策に力を入れ、特に宿泊客どうしの接触を極力避けるために工夫を重ねています。
そのひとつが部屋のテレビから温泉に入浴している人がどれくらいいるか確認できるシステムで、密を避けられると好評だということです。

また、夕食をとる場合はすべて部屋食としているほか、朝食は会場を複数設け、人数を絞って案内しています。

人気を集めているのは県内に住む人限定に売り出した地元の食材を楽しめる1人1万4000円ほどのプランで、補助を使うと9000円ほどで宿泊することができます。

「地元のホテルに泊まることはないのでよかった」

割り引きを使って大分市の親戚と宿泊した別府市に住む70代の男性は「地元の人が地元のホテルに泊まることはないので親戚や家族にも喜んでもらえてよかったです」と話していました。

ただ、この旅館では割り引きを使う宿泊客が増えても売り上げが例年の半分程度にとどまっているということです。
緒方真美専務は「いまは春休みも終わったが、1日何組かでも割り引きを利用して使ってもらえるのでありがたく思っています」と話していました。

旅行に補助 全国22道県が実施

旅行代金の割り引きなどが受けられる「Go Toトラベル」が去年の年末から全国一律で運用が停止される中、宿泊代金の割り引きや地域で使えるクーポン券を配布して、県境をまたがない旅行に補助をする動きが広がっています。
今月10日の時点で、22の道と県にのぼることが観光庁のまとめでわかりました。
感染が比較的落ち着いている地域が多くなっています。

一方、この中でも感染が拡大している沖縄県など一部の県ではすでに申し込んだ分の補助は続けているものの、新規の申し込みを停止しているところがあります。
こうした中、国は県内の旅行に補助を出す動きを後押ししようと、感染状況を示す4つのステージのうち「ステージ2」相当以下と判断される都道府県を対象に財政支援を開始しています。
支援の対象となるのは来月31日の宿泊分までで、1人あたり1泊につき、宿泊費の割り引きでは5000円、食事や買い物などでは2000円の合わせて7000円を上限に事業費を補助することにしています。

国は「Go Toトラベル」の運用停止で使われていない予算のうちのおよそ3000億円を財源として活用することにしていて、事業を行う多くの県が補助を利用する見込みだということです。

観光庁「自治体は感染防止策を十分にとって事業を」

観光庁は「観光は交通や物販などにも効果が波及するすそ野が広い産業なので、自治体には感染防止策を十分にとったうえで、事業を行ってほしい」としています。

「まん延防止」適用の都府県 その周辺は慎重姿勢

「まん延防止等重点措置」が適用されている都府県に加え、その周辺の県の多くは県内の旅行に補助をする事業に慎重な姿勢を見せています。

現在、新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」が適用されているのは、東京都と宮城県、大阪府、兵庫県、京都府、それに沖縄県です。

これらの都府県の周辺にある多くの県も、県境をまたいだ人の移動が多いため観光業が厳しい状況に置かれる中でも事業の開始に慎重な姿勢を見せています。

このうち、長野県は2月から先月にかけて、三重県は先月末までの10日限定で県境をまたがない旅行の割り引きを行う事業を実施しましたが、今は感染状況を考慮して控えているということです。

三重県「今はこらえる時期ではないか」

三重県の担当者は「経済のことを考えれば事業を始めたいが、今はこらえる時期ではないかと思う。いつできるか読めないところではあるが、県内や近隣の県の感染状況が落ち着いたら実施できるように準備はしておきたい」と話していました。

沖縄県「国が示した感染対策を徹底して旅行を」

一方、先月から今月30日までの予定で事業を行っていた沖縄県は、新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」が適用された今月12日に新規の申し込みを停止しましたが、準備していた分はほぼ完売していました。
沖縄県は「国が示した感染対策を徹底して旅行してもらいたい」としています。

専門家からは懸念の声

県境をまたがない旅行に補助をする事業が広がっている現状について、感染症対策に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉教授は懸念を示しています。

松本教授は、「『第3波』のあと、日本全体が感染症を抑えられたわけではなく、感染状況が落ち着いているような地域でも今後、感染者数が増える可能性がある。慎重な対応で抑え込まないといけない時期に『どうぞ旅行に行ってください』という雰囲気を作る施策を同時でやることは矛盾しているし、タイミングとしていいとは思えない」と指摘しました。

そのうえで、事業を行う自治体に対して「自分たちの地域は落ち着いていても、近隣の自治体が深刻だということになれば感染が波及する可能性は十分ある。感染状況が悪化してくることが認められれば、すぐに止めるよう柔軟性を持って運用することが重要だ」としています。

松本教授はそれでも旅行に行く場合は、ふだん会わない人たちと一緒に行くのは避けて、家族などふだん会っている人だけで計画することを勧めています。