大阪「不急の手術は先送り」重症者急増で転院できないケースも

新型コロナウイルスの感染の急拡大が続く大阪。13日に新たに確認された感染者は1099人と、初めて1000人を超えました。

大阪では医療現場のひっ迫の度合いが増しています。

中等症や軽症の患者を受け入れている病院では、重症だと判断したにも関わらず病床の空きがないために転院できずにいる患者がおよそ15人いることが新たに分かりました。

また、重症患者を受け入れている市立総合医療センターについて、大阪市の松井市長は病床を極力 新型コロナの重症患者用に振り向ける考えを表明。「不急の手術を先送りすることで重症ベッドを確保する」と述べました。

大阪府は「いままでにない事態が起きている」と話しています。

大阪府の重症患者 この2週間で2.6倍と急増

大阪府では重症患者は12日時点で218人と、この2週間で2.6倍と急増し、すぐに入院できる重症患者用の病床が90%以上埋まるなど、ひっ迫した状態が続いています。

“重症化しても転院できない” 約15人に

医療ひっ迫の影響は、すでに現場に表れています。

大阪府は先週、中等症・軽症の患者を受け入れている規模の大きな病院に対して、患者が重症化しても転院させず治療を続けるよう要請しました。12日の時点で、15人の重症患者が転院せずに治療を受けています。

しかし、これとは別に、医療機関で重症と判断したにも関わらず、病床の空きがないため転院できず、そのまま治療を続けている患者が12日の時点でおよそ15人いることが関係者への取材で新たにわかりました。

これらの患者が入院している医療機関では、大阪府の入院フォローアップセンターに、重症病床がある病院への転院を依頼しているということです。

さらに、これとは別に府内の医療機関が人工呼吸器を装着するかどうか検討している容体の悪い患者が、およそ15人いるということです。

大阪府は「まん延防止等重点措置の効果は感じられない。現時点では患者は適切な医療が受けられている状況だが、非常にひっ迫した状態で今までにない事態が起きている。府民には行動を変えてもらって医療を助けてほしい」と話しています。

市立総合医療センターで救急患者の受け入れ制限

こうした中、大阪では救急患者の受け入れ制限が始まっています。

大阪市の松井市長は13日、重症患者の急増を受け、大阪・都島区にある大阪市立総合医療センターでの、3次救急の受け入れを制限し、病床を極力、新型コロナの重症患者用に振り向ける考えを示しました。

大阪市立総合医療センターは、市内で最も多い1063床の病床と、54の診療科をもつ病院です。

救急医療では、重篤な一般の患者を受け入れ「3次救急医療機関」や、大阪市内では唯一の「小児救命救急センター」に指定されているほか、市内で唯一「感染症指定医療機関」に指定されています。

救命救急医療や災害時のためのドクターヘリの発着場を備えていて、大規模な災害が発生した場合には中心的な役割を担う、「災害拠点病院」にも位置づけられています。

松井市長「不急の手術を先送りし重症ベッド確保」

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることから、松井市長は「小児の救急以外はほかの病院に振り分け、不急の手術を先送りすることで重症ベッドを確保し、感染拡大期を乗りきりたい」としています。

重症患者用の病床28床のうち、原則、23床を新型コロナの患者の専用とし、残りの5床を小児救急の対応にあてるということです。

一方、外来については、すべての診療科でこれまで通り患者を受け付けることにしています。

重症患者の治療続けた病院「放り出すわけにいかない」

軽症・中等症の患者を受け入れている大阪・此花区にある「大阪暁明館病院」では、患者が重症化したと判断して府に転院を依頼したものの、4日間にわたって転院先がみつからずに、そのまま継続して治療を行ってきました。

この病院はおよそ460床ある民間の総合病院で、現在、軽症や中等症の新型コロナの患者用に病床を17床用意して患者を受け入れています。

病院によりますと、先週、入院していた新型コロナの患者の容体が悪化して重症になったと判断したため、患者の入院先を調整する府の入院フォローアップセンターに、転院を依頼しました。

しかし、転院先の病院が4日間、見つからず、挿管などの処置をして治療を続けてきたということです。
「大阪暁明館病院」の西岡崇浩本部長は「技術面でも設備面でもスタッフの訓練度合いでも重症患者を治療するのは困難ですが、放り出すわけにいかないので状況が改善するのを待つしかありません」と話していました。

病院では、多くの看護師が重症患者の治療にあたってきたため、新たな軽症や中等症の患者の受け入れを一時、停止していました。

西岡本部長は「せっかく病床を増やしたが、患者の受け入れができなくなっている。そうなると入院できず、自宅で経過観察となり、医療の目が届きにくくなる患者が増えるのではないかと懸念している」と話していました。

専門家「場合によっては命にかかわる」

この状況について、国立感染症研究所の客員研究員で大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「新型コロナの重症患者と一般の重症患者の両方が受け入れられなくなる事態がいま、起こっているのではないかと思う。通常の医療が提供できない状況になりつつある」と警鐘を鳴らしています。

そのうえで「新型コロナの患者が爆発的に増えている中で、多少、ベッドを増やしたとしても間に合わない状況になっている。このままでは病院に入院できないまま重症化してしまい、場合によっては命にかかわるという人がこれから出てきてしまうと考える」と話しています。