阪大病院 ICUの約半数をコロナ病床に 一般患者への影響懸念

大阪で新型コロナウイルスの患者を受け入れる病床の数が切迫する中、大阪大学医学部附属病院は、大阪府の要請を受けて12日から重症患者用の病床を10床から14床に増やして治療に当たっています。しかし、病院では一般の患者の手術や治療に影響が出ると危機感を募らせています。

大阪では新型コロナウイルスの患者が急増し、すぐに入院できる重症患者用の病床は11日の時点で205床のうち188床、率にして91.7%が埋まるなど非常にひっ迫していて、府は各病院に重症病床を増やすよう要請しています。

これを受けて、大阪 吹田市にある大阪大学医学部附属病院は、12日からICU=集中治療室の4床をコロナの重症病床に変えて運用を始めました。

これで30床あるICUのうちおよそ半分がコロナ患者に割り当てられ、ICUは16床に減りました。

この病院では、2019年度、重い心臓病や進行がんなどの手術の際にICUを使用した患者数が1200人を超えていて、ICUは病院機能を維持するうえで欠かせません。

ICUの数が制限された状態が続くと、ほかの病院では難しい高度な技術が必要な手術を延期したり、減らしたりしなければならなくなるとして、難しい判断を迫られているといいます。

土岐病院長「長期間 今の体制を続けるのは無理」

大阪大学医学部附属病院の土岐祐一郎病院長は「ICUには、手術をしなければ、数週間のうちに命を落とすような患者たちが順番を待っている。その順番をさらに待ってもらうとどれぐらい悪い影響が出るか想像がつかない。進行がんや重い心臓病など時間が限られているので、長期間、今の体制を続けるのは無理だ」と話し、危機感を募らせています。

さらに、土岐病院長は新型コロナウイルスの患者ではより手厚い看護が必要なため、受け入れが増えるとこれまでと同じ数の医療スタッフの態勢では一般の医療との両立が難しくなると懸念を示しています。

土岐病院長は「コロナの診療レベルを落とすか一般の診療レベルを落とすか、どちらかを落とさないと医療スタッフの数的に無理になってくる。自分たちはどこまで何を犠牲にすべきかというのを自分たちで判断している。病院の責務ではあるが、非常に大きな問題だと思う」と指摘しています。

病院のきょうの様子は

大阪大学医学部附属病院では30床あるICUのうちおよそ半分を新型コロナウイルスの患者に割り当てた形になります。

病院によりますと、12日午後7時の時点では増床した4床に患者が入る予定はまだないということです。

12日は回復した患者2人の一般病床への移動が決まり、患者がICUから搬送されていく様子もみられました。

しかし新たに1人を受け入れ、午後7時の時点で、9床が埋まっています。

病院によりますと、コロナ患者用の病床を増やしたことで、その分一般の患者用の病床が減り、すでにICUへの入院依頼を1件、断らざるを得なかったということです。

大阪大学医学部附属病院集中治療部の内山昭則副部長は「一般の重症病床が半分になってしまうと、計画された手術の患者をみたり術後の管理をするのがぎりぎりのラインで、今後緊急手術の患者などに対応していくのは難しいと感じている。一般診療とのバランスをうまくとりながら患者をよくしていくのは綱渡り的なところがある」と話しています。

11日段階で重症の15人が転院せず治療

軽症・中等症の患者を受け入れている大阪府内の病院では、府の要請に基づき11日の時点で15人の重症患者を転院させずに、そのまま継続して治療を行っています。

重症患者の急増にともなって大阪府は先週、軽症や中等症の患者を受け入れている、規模の大きな24の病院に対し、患者が重症化しても転院させず、その病院で治療を続けるよう要請しました。

大阪府では11日の時点で、重症患者用の病床で治療を受けている患者が188人で府の発表では重症患者用の病床は実際に運用されている病床が205床だったため、「病床運用率」は91.7%でした。

ただ軽症・中等症用の病床で治療を受けていた重症患者15人を仮に重症患者用の病床で治療していたとすると病床運用率は99.0%となり、空いている病床は残り2床で、ほぼすべての重症病床が埋まっている計算になります。

現在の状況について、大阪府は「重症患者の治療を継続している医療機関では、重症患者に対応できる設備や人員が整っていて適切な医療が受けられる状況だ」としています。

重篤な一般患者受け入れる「3次救急」一時休止の医療機関も

新型コロナウイルスの重症患者の急増を受け、大阪市内の2つの医療機関では重篤な一般の患者を受け入れる「3次救急」を一部を除き休止しています。

いずれも新型コロナ患者用の重症病床を増やすための一時的なものだとしていて、大阪府は「3次救急の機能は他の医療機関でカバーできている」としています。

大阪府では新型コロナの患者が急増し、11日の時点で重症患者用の病床運用率が91.7%となるなど、医療体制がひっ迫しています。

こうした中、府によりますと大阪市内の2つの医療機関が、交通事故や急病などによる重篤な一般の患者を受け入れる「3次救急」について一部を除いて休止しています。

このうち、大阪・中央区の国立病院機構・大阪医療センターでは、府の要請を受けて新型コロナの重症患者用の病床を増やす作業のため、今月9日から脳卒中や循環器の病気以外は救急の患者の受け入れを休止しています。

また、大阪・阿倍野区の大阪市立大学医学部附属病院でも、今月7日から、かかりつけの患者以外は救急の受け入れを休止しています。

いずれの病院でも3次救急を再開する時期は、未定だということです。

大阪府は「現時点では府内にほかに14ある3次救急を担う医療機関で機能をカバーできているが、今の勢いで感染者が増えれば、ほかの医療機関でも受け入れられなくなり、一般医療にも大きな影響が出かねない。新型コロナ対応と一般医療のバランスをとりながら、今後の対応を検討したい」としています。