【詳しく】コロナ ワクチン きょう高齢者への接種始まる

日本の人口の3割近くに上るおよそ3600万人を対象にした高齢者への新型コロナワクチンの優先接種が始まり、初日の12日は全国の少なくともおよそ120か所で接種が行われました。

各地で接種はどのように行われたのか?
今後、接種を受ける人はどのような手順を踏めばよいのか?
各地へのワクチンの供給量や、世界と比べた日本の接種状況は…?

高齢者への接種をめぐる最新の情報をまとめました。

市役所ロビーで集団接種<東京 八王子>

東京都内の市町村で高齢者の人口が最も多い八王子市では、今月5日に予約の受け付けを行いましたが1時間半ほどで埋まりました。先着順で予約を受け付けた1900人に対し、12日から8日間にわけてワクチン接種が行われます。
接種する人は密集しないように30分刻みにあらかじめ指定された時間に会場を訪れ、会場の市役所1階のロビーでは午前9時すぎから受け付けが行われました。

会場では、
▽医師が体調などを確認する問診と
▽ワクチンを接種するスペース
それに
▽接種後に待機するスペースが設けられ
順次、高齢者がスペースを移動しながら接種を進めていました。
1番目に接種を受けた74歳の男性は「ワクチンが接種できてありがたいです。もう少し痛いと思っていましたが特に痛みはなく体調に変化もありませんでした」と話していました。

また、孫に予約を取ってもらったという80歳の女性は「ふだん病院に通うのに満員のバスや電車を利用するので無事に接種ができてほっとしていますが、まだ多くの方が受けられていないと思うと申し訳ない気持ちもあります」と話していました。

八王子市によりますと、12日に予定されていた250人のうち2人が連絡がなく会場に訪れなかったことから248人が接種し、接種した人に「アナフィラキシーショック」などの副反応が見られた人はいなかったということです。

菅首相 接種会場を視察<東京 八王子>

菅総理大臣は八王子市の集団接種の会場を視察し、石森市長と意見を交わしました。

このあと菅総理大臣は記者団に対し「間近に接種を受けている方を見て、ほっとした表情の方が多かったことが非常に印象に残っている」と述べました。

そのうえで「ワクチンは発症や重症化に対しまさに切り札なので1日も早く多くの皆さんにお受けいただけるようしっかりと取り組んでいかなければならない。スムーズに接種ができるよう国と現場で意思疎通を図りながら進めていく」と強調しました。

一方、記者団が「日本はワクチン接種が比較的遅れているという指摘もあるが」と質問したのに対し「国内の治験が終わって審査すると、およそ3か月かかってしまう。国民の皆さんの安全・安心を第1にという中で国内治験を取り入れているのでそうしたことになってきていると思うが、1日も早く多くの国民の皆さんにお届けしたい」と述べました。

体育館で集団接種<大津>

最初はワクチンの供給量に限りがあることから、限定的に接種が進められます。大津市では対象を85歳以上に絞り込み高齢者へのワクチン接種を始めました。
大津市では今月中に供給されるワクチンがおよそ2500人分と高齢者全体の2%余りにとどまることから、高齢者のうち重症化のリスクが特に高いとして85歳以上を対象に接種を始めました。

市立体育館で事前に予約を済ませた60人が接種を受け、訪れた人たちは専用のブースで医師の問診を受け、接種後は15分間はいすに座り副反応など体調に変化がないか確かめていました。
大津市は今後、接種会場を増やし、供給量がさらに増えれば85歳以上とする今の対象をさらに広げて接種を進めることにしています。

接種を受けた88歳の男性は「特に痛みはありませんでした。大阪でも滋賀でも感染が広がっていて不安でしたが、接種ができて安心しました」と話していました。

医療機関で個別接種<和歌山>

和歌山市では11万人余りの高齢者が接種の対象で、市内のおよそ120の医療機関で先着順で予約を受け付けています。
初日は市内の8つの医療機関で接種が行われ、このうち和歌山市友田町の「星野クリニック」では午前中に5人の高齢者が訪れて順番に問診を受けたあとワクチンを接種しました。そして副反応が出ないかなど経過を観察するため15分ほど待機していました。

接種を受けた70代の女性は「接種の際には痛みはありませんでした。早くワクチンを打てればと思っていたので一安心しました」と話していました。

和歌山市によりますと今月、市に供給されるワクチンはおよそ1500人分と対象者の1.3%ほどにとどまっていますが、6月までには対象者全員が接種できる量が確保される見通しだということです。

高齢者施設 入居者から接種<青森 むつ>

高齢者施設の利用者から接種を始める自治体もあります。青森県むつ市では重症化のリスクが高いとされる高齢者施設の入居者と職員に最初に接種することにし、12日朝、病院に保管されていたワクチンが20人ほどの入居者がいる市内のケアハウスに運び込まれました。
そして施設の嘱託医が70代から90代の5人に熱などの症状がないか問診で確認したあと、ワクチンを打っていました。

接種を受けた72歳の男性は「副反応の報道などもあり不安もあったが思ったより痛くなかった。打ったことで安心した」と話していました。

接種を受けた施設長の木村貴弘さんは「クラスターの危険を感じているので早くワクチンを打つことができてよかった」と話していました。

むつ市では、今月中には市内7つの施設の950人余りに接種を行う予定です。

ワクチン接種までの流れは?

「接種を受けるまでの一般的な流れ」を見てみます。まず、高齢者施設の入所者の場合は施設側が希望者の人数などを取りまとめて市区町村と日程などを調整します。
一方、自宅などの高齢者の場合です。
市町村からクーポン=「接種券」が届いたら、自分自身で電話などで接種日時や会場を予約します。会場は公共施設などでの「集団接種」の場合や、診療所などでの「個別接種」の場合があります。こうした接種までの流れは自治体によって違いがありますが、その手順や流れ、手続きについてまとめました。
●クーポンを受け取ったあと電話などで予約します。接種会場となるのは▽医療機関▽公民館や体育館などです。

●集団接種の会場では、まず受付でクーポンを提示し運転免許証や健康保険証などで本人確認が行われます。

●次に健康状態やこれまでにかかった病気などを問診票に記入し、接種が可能かどうかを判断する医師による「予診」があります。ここまで問題がなければワクチンの接種を受けられます。
接種を終えた人は日付などが記された「接種済証」を受け取ります。「接種済証」には、どのワクチンを接種したかなどの情報が記載されていて2回目の接種を受ける際に必要になるということです。

●接種が終わってもすぐに帰宅できるわけではありません。厚生労働省は接種後30分以上その場で経過観察を行うよう求めていて、接種を終えた人たちは会場に設けられた専用のスペースで待機することになっています。

接種会場はどこ? 厚労省専用サイトで検索

厚生労働省の専用サイトでは接種を受けられる医療機関などを検索できます。

ワクチンの特徴や予約の方法などを紹介する専用サイト「コロナワクチンナビ」では、住んでいる市町村で検索すると
▽接種を受けられる最寄りの医療機関などの名前や住所に加え
▽予約の空き状況
▽扱っているワクチンの種類などが表示されます。

予約自体は受け付けていないため、自治体や医療機関が決めた手続きにしたがって予約する必要があるということです。

厚生労働省は「ワクチンに関するさまざまな情報も掲載しているので接種を受ける前の情報収集に役立ててほしい」としています。
(URL)https://v-sys.mhlw.go.jp

ワクチン 供給の現状と見通しは?

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ“切り札”ともされるワクチン。医療従事者に続いて高齢者への優先接種も始まりましたが、今後、接種を順調に進めるためにカギとなるのがワクチン供給量です。
厚生労働省によりますと
▽11日までに合わせて100箱、1瓶当たり5回の接種で計算すると9万7500回分が全国に配送されました。東京・神奈川・大阪にはそれぞれ4箱(3900回分)、ほかの道府県には2箱(1950回分)が送られました。

▽今週は500箱、1瓶5回で計算すると48万7500回分が全国に配送され、このうち東京・神奈川・大阪はそれぞれ20箱(1万9500回分)、ほかの道府県には10箱(9750回分)が送られます。

▽来週も同じ量の500箱が全国に配送されます。

そして
▽4月26日の週には供給量が増えすべての市区町村に1箱(975回分)、合わせて1741箱が配送されます。

2回接種に必要なワクチン 配送は6月中にも

さらに
▽5月9日までに4000箱程度(約390万回分)が配送され
▽5月10日の週と5月17日の週は2週間の合計で1万6000箱程度(約1560万回分)が配送される見通しです。

その後も供給量は増えていき、およそ3600万人の高齢者が2回接種するために必要なワクチンは6月中にすべて配送できる見通しだということです。

ワクチン接種 世界の状況は?

ワクチンの接種、世界の状況です。

イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、2回接種することになっているワクチンを2回とも接種するなど接種が完了した人の割合は
▽イスラエルで56.9%
▽アメリカで21.1%なのに対し
▽日本は0.4%です。

イスラエル・英 ワクチン接種進む国は感染者数減少へ

去年12月からワクチン接種が始まったイスラエルでは感染者数の減少傾向が続いていて、ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと今月11日時点の1日当たりの新たな感染者数は120人となっています。
また、ワクチンの接種を世界で最も早く始めたイギリスでも新たな感染者数の減少傾向が続いていて、人口の大部分を占めるイングランドでは1回目の接種を受けた人は60歳以上の95%に上っています。

日本の状況は…

一方、日本の状況です。厚生労働省によりますと、ことし2月に医療従事者への接種が始まってから先週金曜日の午後5時までに1回目の接種を終えた人は110万1698人で、これは対象となる医療従事者およそ480万人の2割余りです。また、2回の接種を終えた人は49万819人で、こちらは対象の1割余りとなっています。