ワクチン接種進むイギリス 感染状況改善し高齢者の活動活発に

イギリスでは、新型コロナウイルスのワクチンの接種が高齢者などを優先に進められています。すでに人口の半数近い3100万人以上が1回目の接種を受けていて、感染状況の改善で厳しい外出制限が段階的に緩和される中、高齢者の日常生活も徐々に戻り始めています。

イギリスでは去年12月から高齢者などを優先にワクチンの接種が始まり、これまでに人口のおよそ47%に当たる3100万人以上が1回目の接種を受けています。

人口の大部分を占めるイングランドでは、1回目の接種を受けた人は60歳以上の95%に上るなど接種は順調に進んでいます。

現在、イギリスで接種されている3種類のワクチンのうち、ファイザーとビオンテックが開発したワクチンとアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンについて、イングランドの保健当局はことし2月中旬までのデータを分析しました。

その結果、80歳以上の高齢者が重症化して入院することを防ぐ効果は1回目の接種から3、4週間の時点で80%を超えるとしています。

また、先月末までにワクチンを接種した人のデータを分析したところ、60歳以上の人およそ1万人が死亡するのを防ぐことができたとしています。

イングランドの保健当局の統計では、65歳以上の1日の入院患者数は1月中旬には700人を超えていましたが、厳しい外出制限などの効果もあって3月初めにはおよそ7分の1まで減少しています。

ウイルスに感染してこれまでに12万人を超える人が亡くなっているイギリスでは、厳しい外出制限などの規制がたびたび導入されてきました。

特に感染した場合のリスクが高い高齢者からは、ワクチン接種によって「守られていると感じる」とか、「ウイルスを怖がらずに自信をもって行動できるようになった」などという声が聞かれます。

イギリスでは、ここ数か月で感染者が大きく減少し、ワクチンの効果が確認されていることも受け、先月からは厳しい規制が段階的に緩和されていて、町なかや公園を家族や友人と散歩したり、スポーツを楽しんだりと高齢者の行動も活発になっています。

一方で政府は、ワクチンの効果を過信せず、引き続き、手洗いをしたり人との距離を取ったりするなど個人の対策の徹底を呼びかけています。

国外旅行の再開に期待

ワクチンの接種が広がるにつれてイギリスの人たちの間で関心が強まっているのが国外への旅行です。

今はまだ原則として禁止されていますが、再開を見越して予約をする人たちもいて、業界団体によりますと、接種が進んだ世代の人たちが多いといいます。

イギリス南部に住む70歳代のスティーブ・ルイスさんもそのひとりで、6月にギリシャ旅行を予定しています。

ルイスさんは「2回目のワクチン接種は4月29日の予定です。そこから旅行まで2か月あるので、効果が出るまでには十分だと思います」と話していました。

ただ旅行先の国の多くは、まだワクチン接種がイギリスほど進んでいません。

英国旅行業協会の広報担当者、ショーン・ティプトンさんは「旅行に求められるのは安全ですから、ワクチンの接種がイギリスだけでなく世界各地の旅行先に広がることが非常に重要です」と話していて、感染拡大前のように多くの人が国外旅行に出かける状態になるまでには時間がかかるという見方を示しています。

ロンドンでは段階的に規制緩和 日常戻り始めた高齢者

感染状況の改善に加え、ワクチンの接種が順調に進んでいることからロンドンでは去年12月下旬から続いてきた厳しい規制の段階的な緩和が進められています。

これに合わせ、買い物などのために街を歩いたり、公園を家族や友人と散歩したりする高齢者の姿も目立つようになりました。

ロンドン中心部の公園を散歩していたいずれも73歳の夫婦は「気持ちが少し楽になった気がする。ニュースでも感染状況が改善していると伝えられていて、よかった。孫にも8か月くらい会っていないし、6人目の孫がきのう生まれたので早く会いたい」などと話していました。

規制の緩和を受けて2週間ほど前から再開したロンドンにあるテニスクラブではワクチンを接種した60歳以上の高齢者たちがプレーを楽しんでいました。

71歳の男性は「厳しい外出制限のためにここでテニスをプレーできないのが本当に残念だった。ふだんできていたことが突然できなくなってしまった」と振り返ったうえで、「接種したことで守られているように感じる。自信をもって行動できる。今月予定している2回目の接種が楽しみだ」と明るい表情で話しました。

また、83歳の女性は「テニスをしたり、皆で集まったりしたいとずっと願っていた。接種したことで守られていると感じるけれど食料品は配達で購入し、マスクも着用するなど気をつけている。少しずつ日常が戻ってきてほしい」と話していました。

高齢者たちは、プレーの合間には、ベンチに座りおしゃべりをするなど、これまでのオンラインの会話とは違った久しぶりのひとときを堪能していました。

去年、ウイルスに感染し、抗体が確認されているものの医師の勧めで接種した73歳の女性は「2倍の防御があるように感じる。20年以上、毎年、ポルトガルに旅行してきたので、早く行きたい」と話し、現在は禁止されている海外への観光旅行への期待を語っていました。