日本学術会議 組織の在り方を検討 報告書案を公表

会員候補を総理大臣が任命しなかったことに端を発して検討されている日本学術会議の組織の在り方について、学術会議は「現行の国の機関から変更する積極的な理由を見いだすことは困難だ」とする報告書の案をまとめました。

日本学術会議は、会員の候補として推薦した6人を去年10月、総理大臣が任命しなかったことに端を発して組織の在り方の検討を行い、8日記者会見を開いて報告書の案を公表しました。

報告書の案では、国を代表する学術組織に必要な要件として、公的な資格や財政基盤、それに、会員の選考の独立性など5つの要件をあげ、現行の国の機関であれば要件をすべて満たしているとして「変更する積極的な理由を見いだすことが困難だ」と評価しています。

国の機関でなければ、特殊法人にする余地があるとしながらも、所管する大臣からの独立や職員や経費をどのように確保するかが課題になるとしています。

一方で、科学的な助言機能を強化するための改革として、異なる委員会が連携して提言できる仕組みを整えるほか、産業界やNPOなどとの意見交換も進めるとしています。

さらに、会員選考の透明性を上げるため、外部有識者の意見を取り入れるほか、候補者と異なる分野の研究者が選考に関わることで、会員の多様性を確保するとしています。

学術会議の梶田隆章会長は「組織形態については、検討すればするほど、今の形態が役割を発揮できる仕組みだと認識した。フラットに検討した結果だ」と話しました。

また、任命されていない6人については、組織の設置形態の議論よりも先に解決すべきもので、今月21日から開かれる総会でもそのことについて意思表示をしたいとしています。

報告書の案は総会に諮って正式な報告書としたうえで政府に提出されることになっています。

報告書案の内容

報告書の案では、まず、政府から求められている学術会議をどのような組織として設置すべきかについて検討結果と評価をまとめています。

その中では、前提として国を代表する学術組織に欠かせない5つの要件として、国の代表機関としての地位や地位を確保するための公的な資格、国による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、それに、会員の選考プロセスの独立性をあげています。

現在は政府から独立して職務を行う国の特別機関となっていますが、この形態を維持するのであれば、前提となる5つの要件をすべて満たすことができるとしています。

そして、柔軟な予算執行ができないなど制約はあるものの、現在の形態は役割を果たすふさわしいもので、「変更する積極的な理由を見いだすことは困難だ」と評価しています。

その一方で、組織の形態を独立行政法人に変更すると、政府に勧告する公的な権限を法律に規定できるかや所管する大臣からの独立性を担保できるかなどの課題があるとしています。

また、公益法人に変更すると、設置主体が民間の団体となり、政府に勧告する公的な権限を法律に規定することなどが課題だとしています。

さらに、組織の形態を特殊法人に変更する余地があるとしながらも、所管大臣や特定の利益団体からの独立性や事業の経費を確保することが課題になるということです。

そのため、現行の国の機関以外の組織形態に変更すると、組織としては国から独立するものの「解決すべきさまざまな課題があり、法令や規則の改正などに相当な準備と時間が必要になる」としています。

こうした結果をもとに、最善の設置形態についてさらに検討を深めていくということです。

また、科学的な助言機能を強化するため異なるテーマを審議している委員会が連携し合同で提言できる仕組みを整えるほか、産業界や府省、それに、NPOなどとの意見交換を進めると言うことです。

そして、会員選考のプロセスの透明性を上げるため、外部の有識者の意見を取り入れるほか、候補者と異なる分野の研究者が選考に関わることで会員の多様性を確保するとしています。

さらに、人文・社会科学の第一部から理学・工学の第三部までそれぞれ70人となっている各部の会員の人数を、日本の研究者の分野ごとの人数に割りふることの検討を依頼されたことについて、研究者の定義が難しいことや研究者の人数が少ない分野から会員が選ばれることが難しくなり多様性が失われる可能性があるとして、慎重な検討が必要だという認識を示しています。

有識者「学術会議側も受け取る力高めて」

国家公務員として長く日本の科学技術政策に携わってきたほか、現在は財団法人に所属して政府の科学技術政策について分析を行っている國谷実さんは、現在の状況について「発端は、6人が任命されなかったことはなぜなのだろうかと疑問がわくものだった。6人が人文社会学系だったことからその分野の反発する声は非常に激しく、その後、政府側から学術会議を改革するように逆にボールを投げ返され、任命問題と改革問題がセットで議論されるようになると結局、学術会議側が右往左往しているような状況になった」と分析しています。

そして、今後の在り方については、「学術会議はできるだけ政府からの関与が薄いことが望ましいと思う。しかし、政治と無関係であるべきではない。政府側がアカデミーの言うことを聞くことももちろん大事だが、学術会議側も政府だけではなく、経済界や国民の意向を受け取る力を高めないと、思いがけないところで今回のようなことが起こる可能性があると思う」と話していました。

加藤官房長官「未来志向で検討を」

加藤官房長官は、午後の記者会見で「きのう、学術会議を所管する井上科学技術担当大臣と梶田会長が面会し、梶田会長から、現行の国の組織が最も望ましいことや、会員の選考プロセスの透明化などを盛り込んだ、よりよい役割の発揮に向けた報告書の素案の説明があったと聞いている」と述べました。

そのうえで「引き続き、井上大臣と梶田会長の間で、コミュニケーションを十分取りながら、未来志向で検討を進めていただけるものと承知している。なお、会員の任命の件は、任命権者である総理大臣が最終判断したものであり、一連の手続きは、すでに終了している」と述べました。