変異ウイルス 重症化率高い傾向 高齢者へ広がり懸念 大阪府

大阪府や兵庫県などを中心に、感染力が高いとされる変異した新型コロナウイルスの感染が増えていますが、大阪府がまとめたデータによりますと、まだ報告数は少ないものの、変異ウイルスの感染者では重症化する割合が高い傾向が見られています。専門家は今後、高齢者に感染が広がれば、すでに悪化している病床のひっ迫状況がさらに厳しくなるおそれがあるとして、これまで以上に強い対策を迅速に行って、感染状況を改善させる必要があるとしています。

大阪府や兵庫県などではイギリスで最初に報告された、感染力が高いとされる変異ウイルスに感染する人の割合が増加していて、感染者の急増が続いています。

大阪府がまとめた資料によりますと、3月1日から4月5日までに大阪府で感染した7908人のうち、重症化した人は200人で、重症化した割合は2.5%でした。

一方で、変異ウイルスへの感染を調べる検査で陽性になった人では、897人中、重症化した人は42人で、重症化した割合は4.7%と高い傾向が見られていて、発症から重症化するまでの期間も平均6.5日程度と、1日ほど短い傾向があるとしています。

大阪府では、変異ウイルスの検査で陽性になった人は現時点では分析するには十分な数ではないため、従来のウイルスとの単純な比較は困難としていますが、重症化する割合が高い傾向が見られるとしています。

現時点で大阪府内では、変異ウイルスの感染は30代以下が60%近くと、若い世代が多くなっていますが、変異ウイルスは、どの年代にも感染が広がりやすいと考えられていて、高齢者に感染が拡大したときに重症化する人がさらに増えることが懸念されています。

厚生労働省の専門家会合のメンバーで、国際医療福祉大学の和田耕治教授は「変異ウイルスは、今は若い世代を中心に広がっているが、現状でも感染が急激に拡大して患者数が増加し、医療はひっ迫している。感染が高齢者にも広がれば、この状況がさらに厳しいものになるおそれがあり非常に大きな脅威だ。関西以外の地域にも広がる可能性もあり、これまで以上に強い対策を素早く行って感染状況を改善させる必要がある」と話しています。

専門家「強力な対策必要」

大阪府や兵庫県などを中心に変異ウイルスの感染が増えていることについて、新型コロナウイルスの治療に当たる国立国際医療研究センターの忽那賢志医師は、「大阪府など関西圏で変異ウイルスが急激に広がっているのは、このウイルスが感染力が高いというだけでなく、年度末にかけて歓送迎会や花見など人と人が交流する場や、人が出歩く機会が多くなったことも影響しているのではないか」と話しています。

そのうえで、関西で広がっているイギリスで最初に確認された変異ウイルスについて、「イギリスでは従来のウイルスに比べて重症化や死亡のリスクが6割ほど高くなるという報告もあり、このウイルスが広がれば重症者が増える可能性がある。感染力や重症度が高くなっていることですべての世代にとって脅威であることは間違いないと思う。まだ東京都を含め、首都圏で感染者は少ないようだが、今後、確実に増えてくるとみられ、特に高齢者へのワクチン接種がある程度進む6月から7月ごろまでは変異ウイルスの拡大を想定して強力な対策を行い、医療機関への負担を減らすなどの措置を取る必要がある」と話しています。