国内最高齢の現役ピアニスト 100歳を前に記念コンサート 東京

国内で最高齢の現役ピアニストとして活動する室井摩耶子さんが、100歳を迎えることを記念するコンサートが東京で開かれ、室井さんは円熟の演奏でベートーベンのピアノ曲を観客に届けました。

大正10年生まれの室井摩耶子さん(99)は、戦時中の昭和20年にプロとして活動を始め、30代から50代にはドイツを拠点に13か国で演奏を重ねるなど国際的に活躍し、現在も国内で最高齢の現役ピアニストとして活動を続けています。

今月18日に100歳を迎えるのを前に、7日に東京で記念のコンサートが開かれ、室井さんは年齢を感じさせない軽妙なトークを交えながら、ベートーベンのピアノ曲を演奏しました。

トークでは、100歳を迎える心境について「いい芸術家であるためには何が必要かが分かってきました。人間として自分の中身をもっと深めなくてはいけない。そのときに初めて自分の芸術ができあがると思います」と話したうえで「芸術はきりがないものだと痛切に思います。ベートーベンの音楽に『すごいなあ』と思っていると、また違う音楽に出会うんです。200年生きても足りない気がします」と、音楽への変わらない思いを語っていました。
また、演奏では「エリーゼのために」と「月光」を披露し、叙情豊かな円熟の演奏に客席から大きな拍手が送られていました。

室井さんの門下生でピアニストの女性は「話す姿も昔のレッスンのままで、100歳とは思えない演奏に感激しました。お体を大切になさって、これからも何度でも演奏していただきたいです」と話していました。

公演のあと、室井さんは「今でも新しいものを発見できることは本当にすばらしいことだと思います。その思いは、これからも変わらないと思います」と話していました。

室井摩耶子さん 100歳の歩み

大正10年生まれの室井摩耶子さんは6歳でピアノを習い始め、東京音楽学校=現在の東京藝術大学を首席で卒業したあと、演奏活動を始めました。

プロデビューの舞台は、昭和20年1月に日比谷公会堂で開かれた演奏会で、室井さんによりますと、公演のあと、近くで空襲があり、会場周辺は遺体の安置所になったということです。

戦争が激しさを増す中での演奏会について、室井さんは「3日続けて客席がいっぱいでした。それほど、みんな音楽が楽しかったのか、音楽を欲していたのでしょうか」と振り返っています。

室井さんは、その後、昭和31年にドイツに留学し、ベルリンを拠点に13か国で演奏活動を重ねて国際的な評価を高めました。

60歳のころ帰国したあとも、80歳をすぎてオーケストラとピアノ協奏曲を共演するなど、精力的に活動を続ける一方、音楽の魅力を伝えるトークコンサートの開催も長年にわたって続けました。
100歳を迎える今も毎日、自宅のピアノに触れながら過去の名曲と向き合っていて、集中するときには深夜の2時まで弾き続けてしまうこともあると言います。

室井さんは「伝えるテクニックは指が早く動くとかではなくて、結局は人間性が本当に深くならないと、音楽の深さというものには、なかなか到達できないと感じます」と話し、年齢を重ねることは決して衰えだけを意味するのではなく、それまでの経験によって初めて到達できる表現もあると言います。

また、今後の目標について「音楽の本物のすごさ、深いところにアタックしていきたい」と力強く語り「私にとって音楽は、音で書いた詩であり、小説であり、戯曲なんです。音楽は文学作品のようにすごく高くて、広く、深いんです。それを、どう表現したら聞いている人に届くかということは大きな謎というか、際限がないんです。おもしろくて、とてもやめられない。100歳になったら100歳のものを見つけたいと、しきりに思っているんです。だから、まだちょっと死ねないですよ」と音楽に向き合う思いを話していました。