東芝 英のファンドから買収提案 条件見極め慎重に検討へ

大手電機メーカーの東芝がイギリスに本拠を置く投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズなどから買収の提案を受けたことが明らかになりました。東芝は提案に応じるかどうか慎重に検討していく方針です。

東芝は、イギリスに本拠を置く投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズなどから6日、買収の提案を受けました。

これについて東芝の車谷暢昭社長は7日朝、記者団に対して「買収提案はきています。これから取締役会を開いて議論していきます」と述べました。

買収提案の内容は、CVC側が東芝の株式を大量に取得して非公開化するものとみられますが、東芝が原子力や防衛関連など安全保障上、重要な事業を手がけているため、法律に基づく政府の事前審査も必要になります。

関係者によりますと、東芝は7日午前の取締役会で、提案に応じるどうか検討していくことを全会一致で決めたということです。

今後、株式の買い取り価格など買収の条件を見極めながら、慎重に検討していく方針です。

東芝では去年7月の株主総会の運営などをめぐり経営陣と大株主の投資ファンドなどとの間で対立が続いていて、CVC側は買収によって、いわゆる“モノ言う株主”などの影響を受けない体制にすることができるとして、東芝からの賛同を求めるものとみられます。

買収提案の背景は “モノ言う株主”との対立

今回の買収提案の背景には、東芝の経営陣と、いわゆる“モノ言う株主”との間の対立が深まっていることがあります。

東芝の株式の少なくとも9%を保有する筆頭株主で、シンガポールの投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」は、いわゆる“モノ言う株主”と知られ、去年7月の株主総会では車谷暢昭社長の再任に賛成せず、賛成票は合わせて57%余りにとどまりました。

さらにこの総会をめぐっては、事務を担う信託銀行の不適切な対応で、一部の議決権行使書が採決に反映されていなかったことがわかり、エフィッシモの要請で先月に開かれた臨時の株主総会では、経営陣が反対を呼びかける中、エフィッシモが提案した議案が賛成多数で可決される異例の結果となりました。
これによりエフィッシモが選んだ弁護士が、去年の総会が公正に運営されていたか調査に乗り出しています。

こうした中、CVCキャピタル・パートナーズは、株式の非公開化を目指す買収によって、“モノ言う株主”などの影響を受けない体制にすることができるとして、東芝の経営陣に賛同を求めるものと見られます。

CVCの日本法人では、車谷氏が東芝の経営トップに就任する前に2018年までのおよそ1年間、会長兼共同代表を務めていました。

CVCとしては、東芝をいったん非公開化し収益力を高めるなどしたあとで株式を売却し、利益を確保したいねらいがあるとみられます。

株式の非公開化とメリットは

株式の非公開化とは、上場企業やその経営陣が自社の株式を買い取ったり、外部の投資ファンドなどが公開買い付けを行ったりしたうえで、上場を取りやめることです。

一般的に、上場企業にはたくさんの株主がいますが、非公開化では市場価格よりも高い値で株式の買い取りをすすめるため、結果として株主を減らすことにつながります。

非公開化は、株主が減ることで経営判断を迅速にでき、事業運営をより自由に進められるようになることが、経営陣にとってのメリットとされています。
今回のケースでCVCは、非公開化を目指す買収の過程で東芝の経営陣と対立する大株主の投資ファンドに保有する株式を手放してもらい、いわゆる“モノ言う株主”などの影響を受けない体制にすることをねらっているとみられます。

“東芝株” ストップ高の水準まで値上がり

東京株式市場では東芝の株式に買い注文が殺到し、1日の値上がり幅の限度となるストップ高の水準まで値上がりして、取り引きを終えました。

東芝は、イギリスに本拠を置く投資ファンドから買収の提案を受けていることが明らかになりましたが、市場ではファンドが東芝の株価に一定の金額を上乗せして買収を進めるのではないかとの観測が広がり、投資家の買い注文が殺到しました。

この結果、午前の取り引きでは値がつかず、取り引き時間の終了と同時にストップ高の水準にあたる4530円の値を付け、7日の取り引きを終えました。

これは、6日の終値と比べて18%余り値上がりしていて、東芝の株式の時価総額は2兆624億円まで膨らみました。

ファンドが買収する場合には、巨額の資金が必要になることも考えられます。

梶山経産相「しっかり注視していく」

梶山経済産業大臣は「重要インフラや防衛に関わる事業などを実施する日本企業を海外投資家が買収する際には外為法に基づく手続きが必要となると考えられる。他方、今回の東芝の件で外為法上の対応については個別企業の案件であることからお答えは今の時点では差し控えさせていただきたい」と述べました。

そのうえで、「一般論として海外投資家の属性にかかわらずわが国の経済、社会にとって重要な事業を安定的に継続できる経営体制が構築されることが重要だ。東芝はさまざまなインフラの整備に関わっていることもありしっかり注視していきたい」と述べました。

加藤官房長官「事業の安定継続が重要」

加藤官房長官は、7日午前の記者会見で「個別企業の案件であり、政府がコメントすることは差し控えたい。一般論として申し上げれば、重要インフラに関わる事業などを実施する日本企業を、海外投資家が買収する際には、外為法に基づく手続きが必要になるものと考えている。また、海外投資家の属性にかかわらず、わが国の経済、社会にとって重要な事業については、事業を安定的に継続できる経営体制が構築、維持されることが重要だと考えている」と述べました。

経団連前会長 榊原氏「内容を見て判断」

東芝が外資系の投資ファンドから買収の提案を受けたことについて経団連の前の会長で、財政制度等審議会の榊原会長は、「一般論として言えば、原子力は国の基幹的なエネルギーという位置づけは変わっておらず、技術を守っていくことが基本的な考え方だと思う。買収提案に対してどうかというのは、内容を見て判断していくものだと思う」と述べました。

榊原氏は経団連の前の会長で、去年の半ばまで国の中長期的なエネルギー政策の方針を話し合う経済産業省の審議会の会長も務めました。

日本商工会議所 三村会頭「興味を持って推移を見守る」

日本商工会議所の三村会頭は、7日の定例会見で「相当程度、投資ファンドのお金を入れてファンドの発言力が大きくなっていた。外資をたくさん入れざるを得なかった東芝の再建に伴う1つの出来事だと思っている。これから買収提案の動機や、ねらいが徐々に明らかになるだろうから、非常に興味を持って推移を見守りたい」と述べました。