社会

緊急事態宣言から1年 新型コロナ対策は何が変わった?

去年、新型コロナウイルスの感染拡大で東京都や大阪府など7都府県を対象に初めての緊急事態宣言が出されてから7日で1年です。新型コロナウイルスへの対策はこの1年で、新たな知見によって見直されたものがある一方、変わらず有効なものとして引き続き呼びかけられているものもあります。新型コロナウイルス対策、何が変わって、何が変わらないのかをみていきます。

変わらない対策

「3つの密」を避ける

1年たっても変わらない対策の1つが、去年の「新語・流行語大賞」にもなった「3密」を避けることです。
1年前、強く呼びかけられたのは、手洗いや手指消毒、マスク着用、人との距離をあける「ソーシャルディスタンス」の確保など基本的な感染対策に加えて、「密閉・密集・密接」のいわゆる「3密」をできるかぎり避けることでした。

これは日本の専門家たちが、去年2月までの感染状況の分析から新型コロナウイルスに特有の感染リスクが高まる環境として見いだしたもので、特にこうした環境で、マスクをせずに会話したり、大声を出したりすることは避ける必要があると呼びかけられました。

「3密」は、現在でも感染対策の最も重要なキーワードとして位置づけられ、「Closed spaces(密閉)、Crowded places(密集)、Close-contact settings(密接)」の3つの「C」として海外でも紹介されています。
さらに、国内ではこれに「飲酒を伴う懇親会」「大人数や長時間に及ぶ飲食」「マスクなしでの会話」「狭い空間での共同生活」「居場所の切り替わり」の「5つの場面」が感染リスクが高まる典型的な場面として示されました。

政府の分科会の尾身茂会長は今月1日に行われた会見でも、この3密と5つの場面を「絶対に避けてほしい」と呼びかけています。

地域を越えた移動の自粛

去年の緊急事態宣言の際に盛んに呼びかけられたもう1つの対策が「地域を越えた人の移動の自粛」です。

都市部での感染拡大が人の移動によって地方に広がってしまう現象は、去年の春までに北海道の事例などから指摘されていました。
感染状況が落ち着いていた去年の秋ごろには政府の「Go Toキャンペーン」が行われるなど、移動中や移動先での過ごし方への注意に重点が置かれるようになりましたが、再び感染が拡大すると大都市の感染が地方に飛び火することへの警戒から、改めて移動の自粛の必要性が強調されるようになりました。

そして現在、感染力の高い変異ウイルスが特に関西圏で広がっていることなどから「地域を越えた人の移動の自粛」は、重要な感染対策の一つとして再び呼びかけられるようになっています。

変わってきた対策

飲食店などポイント絞った対策に

去年の緊急事態宣言では、政府は専門家の助言を元に「最低でも7割、極力8割、人との接触を避けて」と呼びかけ、これにあわせて幅広い業種に対して休業要請が出されました。

その後、去年夏の感染の第2波でのクラスターの分析では、映画館やショッピングセンターなどの人出と感染者数の増減とはあまり関連がみられなかったとする分析結果が示されるなど、感染の起きやすい環境に関する知見が積み上がってきました。
その結果、ことし1月に出された2回目の緊急事態宣言では、感染対策の「急所」として飲食店への営業時間の短縮要請などにポイントを絞った対策が行われました。

これに先立って分科会の尾身会長は「当初は、何が対策として有効なのか明確にはわからず、4月の緊急事態宣言では非常に広い範囲を対象に強い対策を行わざるを得なかったが、知見が積み重なってきた今の時点からみると、飲食店など急所を押さえる対策が重要だ」と述べています。

「夜の街」に限定せず

去年、感染対策の1つの大きなテーマとなったのがバーやナイトクラブなどのいわゆる「接待を伴う飲食店」でした。

こうした店で多くのクラスターが発生したことから、「夜の街クラスター」とも表現されました。
しかし、現在は、「夜の街」に限定せず、マスクを外して会話をする飲食の場面での感染対策に切り替わっています。

クラスターの発生する場面は多様化していて、若い世代によるコンパや高齢世代のカラオケ喫茶、イベントのオープニングセレモニー、工場や学校などのほか、外国人のコミュニティーなど、さまざまな場面での注意が呼びかけられています。

飛まつ対策

また、新たな研究によって変更された対策もあります。

そのうちの1つが飛まつ対策です。

去年春の時点では、感染の主な経路として、飛まつ感染と手などに付着したウイルスを介した接触感染が挙げられていました。

この2つの感染経路は今も変わりませんが、新型コロナウイルスでは「マイクロ飛まつ」や「エアロゾル」と呼ばれるごく小さな飛まつが空気中を漂うことへの対策がより重要なことが分かってきています。

去年の緊急事態宣言中に出された国の専門家会議の提言では「食事の際は対面を避け、横並びで」と呼びかけていました。

しかし、理化学研究所などが行った最新のスーパーコンピューター「富岳」を使ったシミュレーションでは、横並びで隣に座っている人では正面に座っている人に比べて浴びる飛まつの量が5倍になるという結果がでました。

このため現在は、食事の際には斜め向かいに座ることや飲食の場でも会話をするときはマスクを付けるよう呼びかけられるようになっています。

ワクチンの登場

そして、対策の最も大きな変化がワクチンの登場です。

1年前は新型コロナウイルスに対して承認された治療薬は無く、ワクチンもありませんでした。
その後、ワクチンは、異例のスピードで開発が進められ、海外では去年から、国内でもファイザー製のワクチンがことし2月に承認され接種が始まっています。

ただ、国内では、現時点で医療従事者への優先接種が進められている段階です。

来週から高齢者への優先接種が始まりますが、最初はワクチンの供給量が限られるため、限定的に接種が開始されます。

接種が進んでいる海外ではワクチンの高い効果が報告されていて、国内でもどれだけスムーズに接種が進むかが対策のカギとなる見通しです。

PCR検査・医療の体制は

PCR検査の体制

第1波のさなかだった去年4月の下旬ごろは、1日当たりの検査能力は最大で1万5000件余りでした。これに対し現在は、1日の最大能力が17万6000件余りと、10倍以上に増えました。

特に、民間の検査会社は去年4月の5200件から現在は10万6000件余り、医療機関は去年4月の800件から現在は4万2000件余りに増えました。さらに現在は、PCR検査以外に、比較的短時間で結果が出る抗原検査も広く活用されていて、検査能力自体は、当初と比べると大きく拡大したと言えます。

病床数は

厚生労働省が公表しているデータによりますと、第1波の去年5月1日時点では、確保できた病床数は全国で1万6081床だったのに対し、先月31日の時点では、3万450床と、倍近くに増加しました。

ただ、1日の新規感染者数が第1波のピークと第3波のピークで10倍以上の開きがあることを考えると、病床数は必ずしも十分に拡大できたとは言えません。

厚生労働省によりますと、一般病床などの「既存の病床数」に占める新型コロナ病床の割合は、東京都で6.2%、大阪府と愛知県で3%、福岡県で1.8%などとなっています。

病床のさらなる拡大は今も大きな課題となっていて、厚生労働省は都道府県に対して現在の病床確保計画を見直し、遅くとも5月中には新たな計画を策定するよう求めています。

最新の主要ニュース7本

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

特集

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

News Up

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

スペシャルコンテンツ

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

ソーシャルランキング

一覧

この2時間のツイートが多い記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

アクセスランキング

一覧

この24時間に多く読まれている記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。