「高輪築堤」一部現地保存へ JR東日本 明治5年開業の鉄道遺構

明治5年に日本で初めて鉄道が開業した際に東京湾の海上にレールを敷くために築かれた「高輪築堤」について、現場周辺の再開発を進めているJR東日本は一部を現地で保存する考えを示しました。

「高輪築堤」は明治5年に日本で初めて鉄道が開業した際に東京湾の海上に盛り土をして側面に石を積んだレールの土台で、JR東日本が東京港区で行っている再開発工事で見つかりました。

現場は今も調査中で、築堤はこれまでに長さ800メートルにわたって確認されています。

この遺構について、JR東日本の深澤祐二社長は6日の記者会見で「一部については現地保存をベースに検討を進め、開発と保存の両立を図る取り組みをできるだけ早く結論を出して進めたい」と述べ、一部をそのままの形で現地で保存する考えを示しました。

JR東日本によりますと、現地保存するのは当時の沿岸から船で漁に出るための水路に架けられていた「第7橋梁」と呼ばれる橋の土台などで、特に歴史的な価値が高い場所を保存するということです。

一方、そのほかの場所について深澤社長は「しっかりと調査をしたうえで記録保存をして、開発を進めていきたい」などと述べ、現地保存ではなく図面や写真などの記録を残す考えを示しました。

JR東日本は引き続き、専門家で作る検討委員会から意見を聞くなどして、具体的な計画を詰めることにしています。

現地保存に伴う追加費用 “300億円~400億円”

「高輪築堤」は、車両基地だった場所を生かした大規模な再開発工事にともなって見つかり、JR東日本は「第7橋梁」を中心とした現地保存に伴う追加費用は300億円から400億円に上るとしています。

再開発工事は、東京・港区の高輪ゲートウェイ駅周辺で行われ、2024年度末までに9.5ヘクタールの土地に住宅やホテル、オフィスなどが入った4棟の高層ビルなどが5500億円をかけて整備される予定です。

羽田空港や品川駅が近い立地のよさを生かして、新しい国際的なビジネス拠点を目指すとして国家戦略特区の事業として認定されています。

高輪築堤は、高層ビルを建てるためにJR山手線や京浜東北線の線路の場所を変更したところ、もともと線路があった場所から見つかりました。

JR東日本は、6日に示した「第7橋梁」を中心とした現地保存のためには、築堤の調査・保存とビルの設計変更などが生じ、合わせて300億円から400億円の追加費用がかかるとして、費用の負担の在り方を国や東京都、港区などの関係機関と協議しているということです。

また、現地での保存をほかの場所まで広げると、開発の中心地に建設予定の高層ビルの設計変更などが新たに必要になり、開発自体が成り立たなくなるとしています。

専門家「日本の近代化 象徴している遺跡」

「高輪築堤」は、今からおよそ150年前の明治5年に日本で初めて鉄道が開業した際の石積みの様子を今に伝えています。

築堤は明治5年に新橋と横浜の間に鉄道を通す際に、イギリス人技師の指導のもと、海岸に沿うようにおよそ2.7キロにわたって作られました。

港区によりますと、築堤は複数の調査現場で確認されて、その長さは合わせておよそ800メートルに及び、当時の錦絵にも描かれたおよそ150年前の石積みを目の当たりにすることができます。

今後、詳しい調査が行われれば、堤や橋の土台の内部構造や使われている石の産地などが分かり、築堤がどのように作られていったのかが解明できるとしています。

JR東日本が設置した「高輪築堤調査・保存等検討委員会」の委員長を務める早稲田大学の谷川章雄教授は「海上に築堤を作ることは世界史的にも珍しい取り組みだ」と話し、「例えば第7橋梁の橋台部分はレンガと同じような石の組み方で、西洋的と言ってよいが、江戸時代の石垣など日本の伝統的な技術を持った職人がやっていた」と技術の「和洋折衷」が見られると指摘します。

そのうえで「日本の近代化を象徴している遺跡と考えてよく、現地保存をしていくことが基本だ」と話しています。

保存を求める声強まる

高輪築堤は考古学や産業史の専門家の間で「日本の近代化を象徴する遺跡だ」と高く評価され、文化審議会の分科会が「国の史跡に値する」と指摘するなど保存を求める声が強まっています。

このうち文化審議会文化財分科会は先月、文化庁長官に対して異例の建議を行い、高輪築堤について「現地保存されれば、国の史跡として指定するに値するものと考えられる」と評価したうえで、国やJR東日本などに対して、それぞれが保存や調査などの必要な準備・取り組みを速やかに進めることを求めています。

また、日本考古学協会はことし1月以降、要望書や会長声明などを立て続けに出して遺構の全面保存を求め、辻秀人会長は5日に公開した動画で「十分な現地公開の機会を確保する必要があり、そのうえで関係する専門家や幅広い市民の意見を聴取し、取り扱いを検討するべきだ。拙速な判断をするべきではないということを特に申し上げたい」と強調しました。

さらに、調査を行っている港区教育委員会のほか「産業遺産学会」や「鉄道史学会」などの学会も保存を求める要望を出しています。