日銀 黒田総裁 在任期間が歴代2位に 2%の物価上昇率は未達成

日銀の黒田総裁は、6日で在任期間が2940日となり、歴代2位に並びました。目標に掲げている2%の物価上昇率は一度も達成できておらず、新型コロナウイルスの影響が長期化するなか、日本経済を下支えしながら目標を実現できるかが引き続き課題となります。

日銀の黒田総裁は、平成25年=2013年3月に就任しました。

2%の物価上昇率の目標を2年程度で実現すると宣言して、就任直後に大規模な金融緩和策を打ち出し、「黒田バズーカ」とも評されました。

その後も、市場の意表を突く「サプライズ」の追加緩和を実施したほか、2016年1月には日銀史上初めてとなる「マイナス金利政策」の導入を決めるなど、積極的な金融緩和を続けてきましたが、この間、物価目標は一度も達成できていません。

さらに、去年からは新型コロナウイルスの感染拡大で、国内の景気と物価には強い下押し圧力がかかっています。

日銀は先月、金融緩和策の「点検」を行い、大規模緩和の長期化に備えて各種の施策の見直しを決めましたが、金融政策は一段と複雑化したという指摘も出ています。

黒田総裁は、6日で在任期間が2940日となり、昭和30年代に日銀総裁を務めた山際正道に並んで歴代2位の長さとなりました。

感染症の影響が長期化するなか、日本経済を下支えしながら物価目標を実現できるかに加え、金融政策の正常化に向けた道筋をどう示すのかが、引き続き課題になります。

黒田総裁就任後の金融政策

2013年3月に就任した日銀の黒田総裁。2%の物価上昇率の目標を2年程度で実現すると宣言し、就任直後4月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を打ち出しました。

国債の買い入れを大幅に増やし、市場に大量の資金を供給するのが柱で、「黒田バズーカ」と呼ばれるほどでした。金融市場では、円安・株高が一気に進みましたが、翌年、消費税率の引き上げと原油価格の急落が日本経済に影響を与えます。

物価上昇率が鈍ったことから、日銀は2014年10月、市場の意表を突く形で追加緩和を決定。世の中に出回るお金の量をさらに増やし、ETFについても買い入れのペースを加速させました。

しかし、その後も物価目標は達成できず、2016年1月、日銀は「マイナス金利政策」の導入に踏み切ることを決めます。金融機関が日銀に預けている「当座預金」の一部にマイナスの金利を適用する日銀史上初めての政策でしたが、次第に資産運用や金融機関の収益などに悪い影響が出るといった声が強まっていきました。

こうした「副作用」に配慮しつつ、物価目標をできるだけ早期に達成するため、日銀は2016年9月、金融緩和の「総括的な検証」を実施。短期金利はマイナスにし、長期金利をゼロ%程度に抑える金融緩和策の導入を決め、金融政策の主軸は「量」から再び「金利」へと移りました。

去年以降は、新型コロナウイルスの影響を受ける経済を下支えするために、金融緩和を一段と強化しています。こうした大規模緩和によって、日銀が保有する国債の残高は、去年12月末時点で545兆円と、全体の44%を占めるまでになりました。日銀が保有するETFの時価総額も、東京証券取引所1部に上場する企業の株式全体のおよそ7%に上っています。

ただ、日銀がことし1月に公表した経済と物価の最新の見通しによりますと、物価上昇率は2022年度もプラス0.7%にとどまるとされ、黒田総裁の任期である2023年4月までの目標達成は、極めて困難な状況となっています。