東日本大震災 津波被害の干潟 “生態系おおむね回復”

東日本大震災から10年がたち、津波で大きな被害を受けた東北沿岸の主な干潟では貝やカニなどの水生生物の種類が震災前より増え、おおむね生態系が回復していることが東北大学などの調査でわかりました。

福島・宮城・岩手の主な干潟11か所 水生生物の調査

東北大学の占部城太郎教授らの研究グループは、東日本大震災の津波で影響を受けた沿岸の生態系の変化を調べようと、福島県と宮城県、それに岩手県の主な干潟11か所で、震災の年から毎年、市民の協力を得て、貝や小型のカニなどの水生生物の調査をしてきました。

11か所すべての場所で震災前より生物の種類増える

その結果をまとめたところ、確認できた生物の種数は、11か所の平均で、
▽震災後の平成23年は震災前より2割ほど減って32.3種類でしたが、
▽2年後の平成25年には58.8種類に急増、
その後再び減ったあと徐々に増えて、▽おととしの令和元年は56.5種類でした。

これは、震災前のおよそ1.4倍で、調査した11か所すべての場所で震災前より生物の種類が増え、おおむね生態系が回復していることがわかりました。
このうち、宮城県利府町にある「櫃ヶ浦」(ひつがうら)の干潟では、津波の影響で平成23年には2割近く種類が減りましたが、その後、ガザミやナミイソカイメンなどの新たな種も加わって大幅に増え、おととしには、カワアイやイボウミニナといった環境省の絶滅危惧種に指定されている貝など、震災前よりも多い44種類が確認されました。
占部教授は「津波によって生態系が干潟の環境ごといったんリセットされ、逆に多くの生物が住みやすい環境になったり、温暖化でこれまでいなかった種がすみ着くようになったりした可能性などが考えられる。干潟は、さまざまな海の生き物の子どもの広域にわたる供給源となっている貴重な場所で、調査を続けていく必要がある」と話しています。

「底生生物」は生態系の状況を知る重要な指標

研究グループが調査してきた、貝や小型のカニなどの水生生物は、「底生(ていせい)生物」と呼ばれ、その場にすみ着き、環境変化の影響を受けやすいため地域の生態系の状況を知る上で重要な指標となっています。

ただ、「底生生物」は種類が多く、種を特定するにも専門的な知識が求められ、調査する人によって結果に差が出やすい上に、人材や費用の面からも多くの場所で調査を継続するのは容易ではありません。

そこで、研究グループでは、手法や時間を統一して市民と共に調査する方法を開発し毎年、沿岸の複数の地点での大規模調査を行って、各地点の結果を比較したり、変化をより正確に分析したり出来るようにしてきました。

今回の調査は、被災地の沿岸の生物を、各地で、同じ方法で、継続的に調べた唯一の調査となります。

これまでの調査をまとめた結果、干潟に生息する生き物の種類は、10年たって、震災前のそれぞれの場所の状態にほぼ戻りつつあるとがわかりました。
ただ、いずれの場所でも完全に元と同じではなく、確認できた種の7割ほどは定住しているものの、残りの3割は、ときどき現れるが定着しない種やごくまれに現れる種で、新しい環境の中で生態系の回復が進んでいることがわかりました。