吉村知事「大阪市での聖火リレー中止すべき」重点措置の対象で

大阪府の吉村知事は、今月14日に大阪市で予定されている東京オリンピックの聖火リレーについて、大阪市を「まん延防止等重点措置」の対象地域とすることを踏まえ、中止すべきだという考えを重ねて示したうえで、近く、府の実行委員会で方針を決定し、大会の組織委員会に提案する方針を示しました。

今月14日に大阪市で予定されている聖火リレーについて、吉村知事は、今月5日から1か月間、大阪市を「まん延防止等重点措置」の対象地域とすることを踏まえ、大阪市での聖火リレーは中止すべきだという考えを示しています。

これについて、吉村知事は、1日夜、記者団に対し「不要不急の外出の自粛要請を大阪市に適用することなどを踏まえ、市内における聖火リレーは中止すべきだというのが僕の考え方だ」と述べました。

そして、みずからが会長を務める府の実行委員会で、大阪市での聖火リレーの中止の方針を近く決定し、大会の組織委員会に提案する方針を示しました。

吉村知事は「最後は大会の組織委員会の判断になろうかと思うが、大阪市で聖火リレーを行うことはないと思う」と述べました。

一方、吉村知事は、今月13日と14日に大阪市以外の府内の地域で予定されている聖火リレーについては、感染対策を徹底したうえで実施したいという考えを示しています。

大阪市 松井市長「残念だが見合わせていただく」

大阪市の松井市長も、定例の記者会見で、今月14日に大阪市内で行われる予定の聖火リレーについて「新型コロナウイルスの感染が急拡大している。全国の聖火リレーでは沿道に人が集まる様子もみられ、残念だが見合わせていただく」と述べ、市内での聖火リレーは中止すべきだという考えを示しました。

また、今月14日に大阪市中央公会堂前で予定されている、聖火を迎える式典「セレブレーション」については「子どもたちを招待していたが無観客で実施せざるをえない」と述べ、無観客で実施すべきだという考えを示しました。

組織委 府内の聖火ランナーリスト公表を延期

大会組織委員会の高谷正哲スポークスパーソンは「大阪の実行委員会と中止を決定したという事実はありません。実行委員会とは緊密に協議を行い、できるだけ早く決定したうえで速やかに公表できるよう努める」とコメントしています。

また組織委員会は、1日に予定していた大阪府内の聖火リレーのランナーのリストの公表を延期すると発表しました。

菅首相「大阪は中止されたのではないか」

菅総理大臣は、1日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「大阪は中止されたのではないか。組織委員会と大阪の聖火リレーの実行委員会の話し合いの結果、そうなったと、私は承知している」と述べました。

岡田官房副長官「組織委と府の実行委が協議し判断」

岡田官房副長官は記者会見で「大阪府での聖火リレーの実施形態については、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて、大会組織委員会と大阪府実行委員会が協議のうえ、安心・安全を最優先に判断されるものと考えている」と述べました。

東京 小池知事「不測の事態に備えてルール決まっている」

吉村知事の発言について記者団から受け止めを聞かれた東京都の小池知事は「聖火リレーは組織委員会と各都道府県の実行委員会の連携のもとでやっている」と述べました。

そのうえで、「不測の事態に備えていろいろなルールが決まっている。これに従って決めることになると思う。報道は承知している」と述べました。

聖火ランナー予定の人たちは

大阪市で聖火ランナーを務める大正区の会社員、大作邦弘さん(37)は、学生時代、陸上部に所属していて、かつて夢見た国際大会に少しでも関わりたいとの思いから聖火ランナーに応募しました。
大作さんは「聖火ランナーに選ばれるのは宝くじに当たるようなもので、家族などから祝ってもらっていました。中止になるのであれば残念です」としたうえで「感染が拡大していて医療も大変な状況で、苦しんでいる人がたくさんいるのも事実です。走りたい気持ちはやまやまだが、やはり命には代えがたいので、この判断は致し方ないことだと思う」と話していました。
聖火リレーで大阪市内を走る予定の元会社員、山本潤二さん(62)は、3年半前に脳梗塞を患い、一時は車いすでの生活を余儀なくされましたが、その後のリハビリで早歩きができるまで回復しました。
支えてくれた人たちに元気な姿を見せたいと聖火リレーのランナーに応募し、選ばれました。
吉村知事が大阪市内での聖火リレーを中止すべきだという考えを示したことについて、山本さんは「すでに福島をスタートしておよそ2週間後に本番が迫っていただけに、びっくりしました」と心境を語りました。
そのうえで「後遺症で今も左手は自由に動きませんが、聖火ランナーに選ばれてからは週に5日、つえを使わずに早歩きする練習や筋トレを続け、去年延期になったときも必ず開催されると信じて準備してきました。感染拡大という難しい状況ですが、中止ではなく無観客で行うなど、形を変えてでもなんとか実施する方法を考えてもらえれば」と話していました。
大阪市を走る聖火ランナーの1人、元競泳選手の島津眞理さん(57)は、吉村知事が大阪市での聖火リレーを中止すべきだという考えを示したことについて「感染者が急増して大丈夫かなと思っていましたが、沿道の応援だけでなく走ること自体の中止を検討するとは考えていなかったので、本当にがっかりです」と話していました。

島津さんは、41年前のモスクワオリンピックへの出場が有力視されていましたが、東西冷戦を背景に日本が大会をボイコットしたため出場の夢はかなわず、違う形でオリンピックに関わりたいと思い、聖火ランナーに応募しました。

去年は聖火リレーが始まる直前に大会延期が決まり、この1年、再び走れる日を待ち望み、近日中に本番で履く白いシューズを買いに行こうと思っていたということです。

島津さんは「人が密集して感染が広がることがいちばん恐れていることなので、しかたないですが、ランナーだけでも走らせてほしいです」と複雑な思いを話していました。