アジア系の住民をねらったとみられる暴力事件 後を絶たず

アジア系の住民をねらったとみられる暴力事件は後を絶ちません。

今月29日にはニューヨーク中心部のマンハッタンの路上で、65歳のアジア系の女性が前から歩いてきた男に突然、蹴られるなどの暴行を受け、大けがをしました。

防犯カメラの映像には女性が男に蹴り倒されたあと、頭などを何度も踏みつけられる様子が捉えられています。

ABCテレビによりますと、女性は男から「お前はここにいるべきではない」などと、ことばをかけられたということです。

ニューヨーク市警に去年8月に設置された、アジア系への差別を取り締まる対策チームによりますと31日、38歳の男が憎悪に基づく暴行の疑いで訴追されたということです。

また、この事件では現場の通りに面した建物の中にいた複数の男性が、暴行が目の前で行われていたにもかかわらず女性を助けず、さらに、このうちの1人が扉を閉めて無視する様子も映されていて、男性たちの対応にも批判が集まっています。

アジア系をねらった事件をめぐっては、今月16日に南部ジョージア州で21歳の男が、銃を発砲してアジア系の住民6人を含む8人が死亡しました。

犯行の動機は明らかになっていませんが、事件を受けて、バイデン大統領はハリス副大統領と共にジョージア州を訪れ、演説で事件が相次いでいることを非難するとともに差別や偏見の解消を訴えました。

アジア系に対する差別を監視している団体によりますと、アメリカ全体で先月までの(2月)およそ1年間に、差別や暴行の被害を受けたという報告は3795件にのぼるということです。

また、カリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校の「憎悪・過激主義研究センター」によりますと、全米の主要都市を対象に行った調査では、アジア系が被害者となったヘイトクライムとみられる事件はおととしが49件だったのに対し、去年は122件とおよそ2.5倍に増えているということです。

都市別ではニューヨークで9倍余り、東部ペンシルベニア州のフィラデルフィアと中西部オハイオ州のクリーブランドで3倍、ロサンゼルスで2倍余りとなっていて、こうした傾向はことしに入ってからも変わらないということです。

専門家「目立つためターゲットに」

アメリカの現代政治が専門の上智大学の前嶋和弘教授は、アジア系をねらったとみられる暴力事件が相次いでいる理由として、アジア系が新型コロナウイルスを持ち込んだという偏見が広がっていることが大きな要因だと指摘し「アジア系は全米の人口に占める割合は小さいが、見た目などから目立つためターゲットになりやすく、社会のストレスのはけ口となっている」としています。

さらに、多様な人種で構成されるアメリカ社会においても黒人やヒスパニック系と比べ、アジア系は「『フォーエバー・フォーリン=ずっと外国人』という偏見が根強い」と指摘し、こうした偏見も攻撃対象となっている背景の一つであるという見方を示しました。

また「憎悪というのは人々の心の問題で、政権が変わったからといってすぐに大きく変わるものではない。差別や偏見がとんでもないことだと政治のリーダーがしっかり示し続けていくことが重要だ」と指摘しました。

そのうえで「これまで声を上げてこなかったアジア系が団結している。社会におけるアジア系に対するイメージが変わっていくと思う」とも述べ、各地で行われている一連の抗議活動が社会を動かすきっかけになりうるとの見方を示しました。