WHO 武漢調査報告書 中国は高く評価も 14か国の政府は懸念

WHO=世界保健機関は新型コロナウイルスの発生源などの解明に向けた調査チームの報告書を公表し、ウイルスが中国、武漢の研究所から流出した可能性は極めて低いと結論づけました。

この調査を巡り中国が「科学的な精神を称賛する」と高く評価する一方、アメリカなど14か国の政府は「完全なデータやサンプルにアクセスできていない」と懸念を示しています。

WHOは30日、新型コロナウイルスの発生源などの解明に向けて、ことし1月から先月にかけて中国、武漢で調査した国際的な調査チームの報告書を公表しました。

報告書では、ウイルスがコウモリからウサギなどを介し、ヒトに広がった可能性があるとしたうえで、その起源や発生場所の特定には至らなかったとしています。

一方で、アメリカのトランプ前政権が主張した武漢のウイルス研究所からの流出については、安全管理が徹底されていたなどとして可能性は極めて低いと結論づけました。

この調査を巡り中国外務省の報道官はコメントを発表し「専門家が示した科学的な精神を称賛する」と高く評価しました。

また「中国は武漢での調査が順調に行われるよう必要な協力をしており、このことは中国側の開放的で透明で責任ある態度を示している」としています。

一方、日本やアメリカ、イギリスなど14か国の政府は30日、共同声明を出し「国際的な専門家による調査が大幅に遅れ、完全なデータやサンプルにアクセスできなかったことに懸念を表明する」としました。

また、ホワイトハウスのサキ報道官は会見で「全体像の一部しか捉えておらず不完全だ」としたうえで、中国について「透明性がなく、十分なデータを提供しておらず協力的だとは言えない」と批判し、中国と欧米などとの評価の違いが鮮明になっています。

加藤官房長官「さらなる調査が必要」

加藤官房長官は午前の記者会見で「将来のパンデミックを防ぐためには、迅速で独立した専門家主導の干渉を受けないウイルス起源の評価が不可欠だ。今回の調査は、調査の実施の遅れに加えてデータや検体へのアクセスの欠如といった点を懸念している」と述べました。

そのうえで、さらなる調査について「WHOのテドロス事務局長も、今回の調査の分析範囲では十分ではなく、さらなる調査が必要だとの趣旨を述べている。共同声明に参加したWHOのほかの加盟国とも連携を取りながら、WHOで検討されるよう、政府としても働きかけていきたい」と述べました。

中国側の専門家「中国国内での調査は終わった」

新型コロナウイルスの発生源などの解明に向け、中国の武漢で、WHO=世界保健機関のチームとともに調査した中国側の専門家が記者会見し「中国国内での調査は終わった」と強調したうえで、今後は中国以外で調査すべきだという考えを示しました。

ことし1月から先月にかけて武漢で調査を行ったWHOのチームが報告書を公表したのにあわせて、ともに調査した中国側の専門家が31日、北京で記者会見しました。

この中で、代表を務める梁万年氏は「中国国内での調査は終わった」と強調したうえで「世界各地のさまざまな分野やルートから情報を収集することを提案する」と述べ、今後は中国以外の各国に範囲を広げて調査すべきだという考えを示しました。

また、WHOのテドロス事務局長が「調査チームのメンバーは生のデータを入手するのが難しかったと話していた」として、中国政府の協力が不十分だったという考えを示したことについて「データの中には中国の法律で持ち帰れなかったり撮影できなかったりしたものもあった」などと釈明しました。

WHOの報告書をめぐっては、日本やアメリカなど14か国の政府が「WHOが行った中国での調査に懸念を表明する」とする共同声明を発表しています。