米IT大手アマゾンで労働組合の結成是非問う投票実施

アメリカのIT大手アマゾンで、賃金などの待遇改善を求める従業員の呼びかけで労働組合の結成の是非を問う投票が行われ、30日から開票作業が始まりました。所得格差が社会問題となる中、業績の拡大が続くアマゾンでも従業員から格差の是正を求める動きが出た形で、結果に関心が集まっています。

労働組合の結成を目指しているのは、南部アラバマ州にあるアマゾンの配送センターで働く従業員たちで、経営者などが高額の報酬を得ているのに対し、自分たちの賃金が低すぎるうえ、休憩時間も厳しく制限されているとして、待遇の改善を訴えています。

こうした従業員の呼びかけで先月から今月にかけて配送センターで働く5800人余りの従業員を対象に労働組合の結成の是非を問う郵便投票が行われました。

開票作業は30日から始まり、投票総数の過半数の賛成が得られれば、アメリカでは初めてアマゾンの労働組合の結成が認められることになります。

一方、アマゾンはウェブサイトなどを通じて、従業員に反対を呼びかけ、現地のメディアはアマゾンが投票結果に異議を申し立てたり、組合との協定の締結を拒否したりする可能性もあると伝えています。

アメリカのIT大手では、業績に応じて個別に賃金などを決める形が定着しているだけに団体交渉を行う労働組合が結成されれば、大きな変化となります。

アメリカで所得格差が社会問題となる中、業績の拡大が続くアマゾンでも経営陣に対し、現場の従業員から格差の是正を求める動きが出た形で、開票の結果に関心が集まっています。

従業員「パンデミックのさなかに時給15ドルでは見合わない」

待遇改善のため、労働組合の結成を目指しているアマゾンの従業員、ダリル・リチャードソンさん(51)です。

南部アラバマ州にあるアマゾンの配送センターで1年前から働いていますが、職場では業務が多忙なうえ、トイレに行く時間も計測されているとして、勤務管理が行き過ぎていると考えています。

また、リチャードソンさんの時給は15ドル余りで、年収は300万円余りにとどまるのに対し、社内の事務職やエンジニアなどの従業員の平均年収は1500万円余りと、大きな格差があります。

リチャードソンさんは「パンデミックのさなかに働いているのに、時給15ドルでは見合わない。ベゾスCEOはわれわれに敬意を表してほしいし、賃金も上げてほしい」と改善を訴えています。

これに対して、アマゾンは医療保険などの福利厚生もあり、過酷な労働環境だという指摘はあたらないと反論しています。

さらにアマゾンは専用のウェブサイトを作り、この中で労働組合に加入すれば、組合費の負担などが生じるとして結成に反対するよう呼びかけました。

バイデン大統領も従業員たちへの支持を表明

一方、今回の投票は労働組合の結成を求める従業員たちと、反対姿勢を示す会社との対立にとどまらず、政治も巻き込む形で高い関心を集めています。

バイデン大統領は先月、ソーシャルメディアにビデオメッセージを投稿し「いまアラバマやアメリカ各地で労働者たちが労組結成を問う投票を続けている。いかなる脅しも、反労組の宣伝活動もあってはならない」と述べ、社名こそ言及しなかったものの、アマゾンの従業員たちへの支持を表明しました。

さらには与党・民主党のサンダース上院議員や野党・共和党のルビオ上院議員なども相次いで従業員への支持を打ち出していて、選挙に向けて、労働者層の支持を取り付けようとアピールするねらいもあるとみられます。

従業員の権利保護への関心が高まる中で変化も

アメリカのIT大手では、これまで労働組合は結成されてきませんでしたが、所得格差が社会的な問題となり、従業員の権利の保護への関心が高まる中で、変化も出てきています。

今回、労働組合の結成の是非を問う投票が行われたアマゾン以外では、ことし1月にグーグルや持ち株会社のアルファベットの従業員らが労働組合を結成しました。

参加者の数は現在、800人余りと全従業員の数と比べれば、わずかな規模にとどまりますが、従業員の不当な解雇などに団結して対応するとしています。
IT企業の労働運動に詳しいサンフランシスコ州立大学のジョン・ローガン教授は「アメリカではサンダース上院議員や、人種差別の根絶を訴える『ブラック・ライブズ・マター』の運動に共鳴して、職場でも格差や差別の解消を求める人々が増えている。アマゾンで労働組合が結成されることになれば、IT企業の従業員による労働運動は一層盛んになるだろう」と話しています。