高校 新必修科目 精神疾患や防災教育など実践的な内容に

来年4月から高校で使われる新たな必修科目「情報1」や「公共」などの教科書の検定が、30日終了しました。今回の教科書では、精神疾患について40年ぶりに必ず扱われることになったほか、防災教育も充実されるなど、実践的な内容が多く盛り込まれています。

30日終了した今回の高校の教科書検定では、来年春から導入される新しい高校の学習指導要領での大幅な科目再編に伴い、新たに必修科目となった「情報1」や「公共」、それに「歴史総合」や「地理総合」などの教科書が合格しました。

全体的に生徒が主体的に考え、対話を通じて深める学びが特徴となって、実際の社会につながる内容が重視されています。

すべての生徒が学ぶ保健体育では、新しい指導要領で40年ぶりに精神疾患について必ず扱うようになったことに伴い、合格した3点の教科書いずれも運動や食事、それに睡眠の調和が取れた生活や、心身の不調に気付くことの重要性など、予防や回復について学ぶ項目が盛り込まれました。

新たな必修科目「地理総合」の教科書では、さまざまな自然災害に対応したハザードマップや過去と現在の地形図など地理情報を収集して読み取る力を身につける内容や、学んだ知識をもとに実際に災害に強い都市計画を考えさせる内容などが多く扱われています。

このほか、「ネットリテラシー」や「フェイクニュース」についても、情報や国語、それに理科や外国語など幅広い教科に盛り込まれました。

保健体育 40年ぶりに精神疾患について記載

新しい学習指導要領では、必修科目の保健体育で40年ぶりに精神疾患について必ず扱うことになり、予防と回復に関する内容がすべての教科書に記載されました。

この中では、精神疾患とはどのような病気なのかを紹介する記述から始まり、環境の変化などでいつでも、誰でもかかりうることや日常生活を送ることが困難な「ゲーム障害」も精神疾患の一種だと説明しています。

そのうえで、心や体の発するサインに気付くためにも正しい知識を身につけることが大事だとして、うつ病や摂食障害、それに統合失調症などの特徴がそれぞれ記されています。

また、精神疾患に対する差別や偏見は、患者を傷つけるだけでなく、みずからの心の不調に早く気づけなかったり、援助を求めたりしにくい状況を生み出すとして、正しい知識を持ち、多様性を尊重して心の不調や精神疾患があっても幸せを感じながら暮らせる社会の実現が大事だとする内容になっています。

地理総合 災害発生のメカニズムなど学ぶ

新たに必修科目となり、すべての生徒が学ぶ地理総合では、ハザードマップなどのさまざまな地理情報を収集して読み取る力を身につける内容も盛り込まれます。

今回、検定に合格した6点の地理総合の教科書では、「自然環境と防災」の章を立て、災害が発生するメカニズムなどを学びます。

教科書会社の東京書籍は、今回の地理総合の教科書で防災に関する内容を現行の教科書より10ページほど増やし、30ページにしたということです。

この防災に関する内容は、旅先で地震にあったときの避難場所や経路を考える「災害想像力ゲーム」から始まり、時間や天候、それに避難者の年齢などの条件を組み合わせて避難経路を考えるもので、身近な問題と捉えられるようになっています。

10年前の東日本大震災の津波や、都心部でゲリラ豪雨が発生している雨雲の様子など、多くの写真が掲載されているほか、生活圏のハザードマップも読み取るよう促す内容になっています。

また、実際に災害に備えた行動に移せるよう、ふだんから懐中電灯や衣類、軍手などをリュックサックに用意し、部屋の家具は固定すること、災害が起きた際には避難情報に注意することなども盛り込まれています。

東京書籍の高校社会第一編集長の三光穣さんは「教科書は全国で使われるので、生徒が住んでいる地域によって起こりうる災害への対応も違うため、その点を意識して反映させた。日本ではさまざまな自然災害が毎年発生していて、今後も起こる可能性がある。自分事として捉え、防災を学ぶために教科書を活用してほしい」と話していました。

専門家「教わる内容が次の未曽有の危機の判断材料になるかも」

子どもや若者の支援を行うNPO「カタリバ」の代表理事で文部科学省の中央教育審議会の委員も務める今村久美さんは、今回の教科書について「これまで学びと自分との距離感というのは、誰かにお題を設定されて『やらなきゃいけない』『覚えなきゃいけない』から学習するというものだったかもしれませんが、これからは、『こんなことを知りたい』『もっと深く知りたい』と、興味をどんどん開発していけるようになっていくのではないか」と期待を寄せています。

災害への対応や精神疾患の予防といった実際の社会で必要になる内容が意識されている点について「全国で起きている災害や新型コロナウイルスに対応する中においても、当たり前だと思ってきたことがそうではないかもしれないとみんな実感させられている。これからの時代はルールを標準化することより、臨機応変に周囲の人と『今、この瞬間に何を判断したらいいだろう』と自分で考えて動くことが重要になる。教わる内容が次の未曽有の危機の判断の材料になるかもしれず、教科書がこれからの社会を生きるうえで影響するような存在になってほしいと思います」と話していました。