“新しい時代”の教科書 高校 新必修科目の内容が明らかに

来年4月から高校で使われる教科書の検定が終了し新たな必修科目「情報1」や「公共」などの教科書の内容が初めて明らかになりました。プログラミングや主権者教育に加え、生徒が主体的に考え対話を通じて学びを深める内容が特徴となっています。

新必修科目に「情報1」「公共」

今回の高校の教科書検定には298点の教科書が申請され、文部科学省の検定意見による修正を経て「歴史総合」で不合格の1点と「英語コミュニケーション1」で申請を取り下げた1点を除き合格しました。
今回の検定では来年春から導入される新しい高校の学習指導要領での大幅な科目再編に伴い、新たに必修科目となった「情報1」の教科書が登場し、プログラミングの基本やデータ活用などについて学ぶ構成になっています。

また、40年続いた「現代社会」の廃止に伴い公民の必修科目となった「公共」は主権者教育に加え生徒みずから実際に社会にある課題の解決を考えられるよう多様なテーマが扱われています。

地理歴史では日本と世界の近現代史を中心に学ぶため再編された「歴史総合」のほか「地理総合」も必修科目になり初めての検定が行われました。

今回の教科書では生徒が主体的に考え対話を通じて学びを深める「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる学習方法に対応し、さまざまな資料を題材に議論を促す内容が特徴となっています。

北方領土 尖閣諸島 竹島 「日本固有の領土」

また、領土については学習指導要領の改訂で「地理総合」と「公共」「歴史総合」で北方領土や沖縄県の尖閣諸島、それに島根県の竹島について扱うべき内容が明記されました。今回の検定では、これに伴う意見が19件つき記述の修正を経て「地理総合」と「公共」で初めてすべての教科書に「日本固有の領土」と記載されました。

コロナ 東京五輪・パラ ジェンダーも…

このほか新型コロナウイルスの記述が初めて盛り込まれたほか、延期された東京オリンピック・パラリンピックそれにSDGsやジェンダーに関する記述も多く見られました。

合格した教科書は各地の教育委員会などの採択をへて来年4月から全国の高校で使われます。

コロナ 教科書に初記載

今回の教科書では世界中で感染が拡大した新型コロナウイルスについても初めて記載されました。新型コロナウイルスについては6教科8科目の27点の教科書で扱っていて社会への影響も幅広く紹介されています。
このうち「公共」や「情報」では新型コロナウイルスの感染拡大でSNSに紙類が不足するという誤った情報が流され、店頭のトイレットペーパーやテッシュペーパーの品薄になったことが取り上げられています。
また、緊急事態宣言によって不要不急の外出自粛要請やショッピングモールや映画館など多くの人が訪れる施設への休業要請が行われ、百貨店が臨時休業を決めるなど経済への影響も紹介されています。

このほか「歴史総合」では「パンデミックの脅威」と題し14世紀に世界各地で流行したペストや、第一次世界大戦中に流行したスペイン風邪などとともに新型コロナウイルスが紹介され、空港でサーモグラフィーで発熱をチェックする様子なども盛り込まれています。

アイドル ヒット曲 アニメ… 身近なテーマから学ぶ

今回の教科書では民主主義や近隣諸国との関係をアイドルグループやヒット曲から考えたり、戦争を題材にしたアニメを通じて学ぶなど身近なテーマとして引き付ける工夫も見られました。
歴史総合のある教科書では、民主主義を考える特集の中でアイドルグループ櫻坂46に名前を変える前の欅坂46の写真とヒット曲「サイレントマジョリティー」の歌詞の一部が掲載されています。

この中では「『声をあげないことは賛成しているのと同じ』であること、意思表示せず『大衆』でいることへの疑問を投げかけるメッセージを伝えている」と紹介されています。

また、ほかの歴史総合の教科書では女性アイドルグループ「TWICE」が取り上げられ、韓国、日本、それに台湾出身のメンバーで構成されていることが紹介されています。

ここでは「日韓の間では、植民地支配をはじめとする歴史認識をめぐって対話と葛藤が続いている」としながら、大衆文化を通じて世界の人々の相互理解は深まっていくのか考えさせる内容となっています。
一方、映画「この世界の片隅に」や「火垂るの墓」の1シーンを紹介する歴史教科書もあり、この中では戦争が人々の生活にどのような影響を与えたか考えるよう投げかけています。

専門家 “主権者 市民としてみずから考え議論する経験を”

東京大学大学院 教育学研究科 小玉重夫教授(主権者教育に詳しい)
・新しい学習指導要領を反映した今回の教科書について
「みずから探究し対話的で深い学びを実現していくという方向で学力の捉え方や授業の構造の捉え方を大きく変えていくことになります。特に新しい科目、公共では生徒自身が将来、主権者、市民としてみずから考え議論することが経験できるよう授業が変わるので、教科書もそういった工夫がなされているのではないか」
・生徒どうしや先生との議論や対話が増えることについて
「身近な貧困や差別それにジェンダーや性的マイノリティの問題など日々暮らしている中で疑問に思っていても、声をあげづらかったり人の意見を聞く機会がなかったりする問題も実は声に出してみることができるんだということに気付いてほしい」
・政治的な問題を扱う授業は選挙年齢が引き下げられるまで国が制限をしていたことについて
「政治を取り上げないことが政治的中立性だと考える向きもありますが、むしろ世の中には対立がありそれを認識することが本当の意味での政治的中立性です。高校の先生は萎縮せず、これを機に世の中で起きている論争的な問題や政治的な課題も生徒に示し議論していくことが重要で、教育の自由を広げていくきっかけとなればいい」

韓国 「日本固有の領土」記載に抗議

韓国が「トクト(独島)」と呼んで領有権を主張している島根県竹島について「地理総合」と「公共」で初めてすべての教科書に「日本固有の領土」などと記載されたことを受けて、韓国外務省の報道官は30日午後、声明を出しました。

この中で「歴史的、地理的、国際法的に明白に韓国固有の領土であるトクトに対する荒唐無稽な主張が含まれた教科書について日本政府が再び検定を通過させた」などと強く抗議し、即刻是正するよう求めました。

また韓国外務省はソウルにある日本大使館の相馬総括公使を呼んで抗議しましたが、相馬総括公使は日本の立場について説明したということです。