想定外!?コロナ禍で人気のカタログギフト

想定外!?コロナ禍で人気のカタログギフト
結婚式の引き出物などの冠婚葬祭や記念品・景品などとして利用されることが多いカタログギフト。贈る側からすると、相手の好みに対応しやすく、もらう側としても好きなものを選べる楽しみもあります。
コロナ禍で人々の生活が変化するなか、これまでとはちょっと違った、あるカタログギフトが、作った人が「想定外」というほど、販売が伸びています。
(長野放送局 記者 田中顕一)

生産者のストーリーも贈る

そのカタログギフトとは、宮城県三陸町の「サーモン塩辛」や福島県須賀川市の「自然米」…。東日本大震災で被災した、岩手、宮城、福島の生産者の逸品を集めたものです。

箱に詰められたカード型のカタログギフト。カードの表には商品と作り手の写真が掲載され、裏には、それぞれの作り手が語る商品の魅力や作り出すまでの物語が書かれています。
『無添加無着色がこだわりだ!』。そう「サーモン塩辛」を紹介するカードには、加工会社の社長とその甥(おい)が笑顔で並んでいます。震災後、津波で流された工場を再建し、生産しています。

どのカードも、商品の魅力だけでなく、生産者の人柄やこだわりが感じられるつくりとなっています。

このギフトでは、モノと一緒に、ストーリーも届けるのです。

考案者は農家の息子

カタログギフトを販売しているのは、長野県上田市にある「地元カンパニー」。

代表取締役の児玉光史さん(41)は、生産者を応援したいと9年前(2012年)に東京で起業。6年前に生まれ育った上田市に拠点を移しました。
児玉さんは、アスパラガス農家の長男です。東京大学を卒業後、IT企業に勤めましたが、4年で退職。その後、ネットを通じて知り合った若手の男女で「セガレ(=男性)・セガール(=女性)」というグループをつくりました。

メンバーは、農家や酒蔵などの家業を継がず、ちょっと後ろめたさを感じながら東京で働いている人たち。物産市などでそれぞれの実家の産品を販売する活動を始めました。

こうした中、結婚することになった児玉さんは、結婚式の引き出物として、オリジナルのカタログギフトを配りました。

実家のアスパラのほか、グループのメンバーの実家の野菜や果物、酒などをギフトの商品にしたところ、想定外に喜ばれました。

当時は食品を扱うカタログはめずらしく、地方の逸品を消費者に届ける新たなチャンスがあるのではないかと感じ、起業を決意したといいます。
地元カンパニー 児玉光史さん
「当時、ものがあふれるなかで、カタログギフトを受け取る側が、地方の知らないものをもらったほうがなんとなく楽しいと思うようになっているのではないかとも感じていた。ある日、今まで接点がない消費者のもとへ商品が届いて、そこから消費者と生産者の新たなつながりが生まれるのが楽しいと思う」

被災地を応援

最初は、地元の上田市周辺の産品を集めたギフトを作り、徐々に扱う地域を広げていきました。

そんな時、取引先から、被災地を応援するカタログギフトを作れないかと持ちかけられます。

児玉さんは、発注した会社の人と一緒に南三陸町などを訪れて、生産者を取材、商品を選定してギフトを完成させました。

児玉さんは、掲載する商品を選ぶ際には、生産者とのやり取りを大事にし、生産者の顔が見えることにこだわっています。そして、生産者が地元のものを原材料に使っているか、事業を拡大したいという意向と、それを支える出荷体制が備わっているかどうか、という点を重視しています。
地元カンパニー 児玉光史さん
「もちろん、生産者や事業者さんの力になりたいというのはありますが、地方で事業をする人たちの営みとか息遣いが、都会で生活をしていたり、孤独を感じている人に届いて、ほっと一息ついてもらえればいい」

コロナ禍 前年3倍以上に

起業から9年目を迎えた去年。児玉さんのカタログギフトは、大きく飛躍します。去年の販売部数は4万5000部余りと、前の年のおよそ3.5倍に拡大。新型コロナウイルスの感染拡大で新たなニーズが生まれたのです。

感染対策のため、多くの企業や団体では、社員旅行や忘年会など親交を深める場が軒並み中止に追い込まれました。

「そうしたなかでも、社員や仲間をねぎらいたい」

そう考える経営者や団体などが、福利厚生の1つとして児玉さんのカタログギフトを選びました。
さらに、病院がコロナ対応に追われ、疲弊する職員に“お疲れさま”を伝えようと、ギフトを贈るといったケースもありました。

企業がある事業者や地域に特定して、一つのものを購入するのは難しい面もありますが、被災地支援のカタログギフトであれば、地域や商品を広くカバーしているため、選びやすいということも、魅力となっています。

児玉さんも想定外だったいうこの人気。企業や団体の注文だけに大口であることが多く、一度に1000部を超える注文もあったということです。

車の内装品などを手がける「トヨタ紡織」の課長職でつくるグループは、自主的に行っていた社会貢献活動がコロナ禍でできなくなり、カタログギフトに目を向けたといいます。
トヨタ紡織 課長会 入山靖史さん
「国内の社会貢献活動や会員間の交流活動というものを企画していますが、去年は、新型コロナウイルスの影響でイベントがすべて中止になってしまいました。代替イベントを計画するにあたり、復興支援のギフトであれば社会貢献にもつながると考えました」

コロナ禍“乗り切る”ギフトも

児玉さんは、2月から新たなカタログギフトの販売にも乗り出しました。その名も「みんなで乗り切るギフト」。コロナ禍の影響を受ける生産者を応援するものです。
地元、長野県の生産者も掲載しています。その一つが、長野を代表する郷土食「おやき」の店。善光寺の仲見世に店を構えていますが、観光客が激減。店舗での売り上げは、およそ4割減少していて、期待を寄せています。
おやき販売会社/いろは堂 伊藤拓宗専務
「現地に足を運べないお客様に商品を届けられるという意味で非常にありがたい。お客さまに知っていただくきっかけができれば、このコロナが収束したあとに長野にも足を運んでいただけることにもなるかなと思っています」

“みんな”をつなぐギフトに期待

コロナ禍で需要が高まっているのは、ギフトという形で感謝やねぎらいの気持ちを伝え、きずなを保ちたい。さらに被災地などで苦しい状況に直面する人たちの役に立ちたい、という人たちの心をつかんだからだとも言えるでしょう。
児玉さんは、カタログギフト事業の魅力は、もともと接点のない生産者と消費者がギフトを通じて結び付き、魅力を感じれば、新たな関係が生まれていくことだと考えています。

注文は、生産者にとって事業の柱となるほど多くはないということですが、新たな関係がじわじわ増えることによって、地方で事業を続ける生産者の後押しになる、そして都会などで暮らす消費者が地域の魅力を再発見することにもなります。

取材の中で、児玉さんが「地方の食と企業などの資金が、うまく循環する仕組みをつくることを目指したい」と話していたのが印象的でした。

長野のような地方では、コロナ禍で観光客などが激減し、生産者は、膨大な在庫を抱えて途方に暮れていたり、販路拡大の機会を失っていたりしています。

この社会貢献型のカタログギフトが、苦境を乗り越える助けの1つになることを期待したいと思います。
長野放送局 記者
田中顕一
2003年入局・ニューデリー支局、ワシントン支局などを経て2018年から現職