養子縁組み 実親の記録不明に 専門家「一元管理必要か」

「特別養子縁組」のあっせんをしていた団体が、東京都に事業の許可申請の取り下げを申し出て、事業を停止して以降、連絡が取れなくなり、それまでにあっせんした子どもの実の親に関する記録などの行方が一部分からなくなっている問題で、専門家は「子どもの生い立ちの記録は国や自治体が関与して一元的に管理することが必要ではないか」と話しています。

「特別養子縁組」のあっせんを行っていた「ベビーライフ」は、去年7月、あっせん事業の許可申請の取り下げを都に申し出て、事業を停止して以降、連絡が取れなくなっています。

「ベビーライフ」は申し出の翌月の去年8月に、あっせんに関わる記録の文書を都に送ってきましたが、記録は一部にとどまっていて、すべての子どもの実の親や成長の記録などは引き継がれず、行方が分からなくなっています。

これについて、「特別養子縁組」に詳しい日本女子大学人間社会学部の林浩康教授は「民間のあっせん業者が廃業した場合、子どもに関する情報を確実に保管したうえで、どこが管理し、引き継いでいくのかというのは、子どもの生い立ちを知る権利を保障するうえでいちばん重要なことだ」と話しています。

そのうえで「子どもの生い立ちの記録は国や自治体が関与して一元的に管理することが必要ではないか」と指摘しています。

さらに「特別養子縁組」に関する法律では、民間団体があっせんを行う場合、都道府県の許可を受けることになっています。

林教授は「許可を行う行政機関が、運営体系だけでなくどのようにあっせんを行っているのか、子どもを委託したあとの状況などをきちんと責任を持って監査していくことが必要だと思う」と話しています。

「特別養子縁組」による親のもとで育った男性は

この問題について、「特別養子縁組」による親のもとで育った当事者の男性は「自分がどのように生まれたのかはアイデンティティーの土台の部分であり、子どもが自分の情報を知りたいと思ったときに出自を知る権利が守られる制度が必要だ」と訴えています。

「特別養子縁組」による親のもとで育った都内に住む20代の男性が、自分の生い立ちについて知ったのは高校生のときでした。

何気ない親子げんかから事実を知った男性は、その後、出自について知りたいという思いが強まったと言います。

その思いについて「自分が誰からどのように生まれたのかというのはアイデンティティーの土台の部分である。ほかの人たちは当たり前に知っていることを自分は知らない、そして自分がこれまで信じてきた土台が実は違っていたことで、気持ちが揺らぎ、そこをどうにかして埋めたいという気持ちは自然なことだと思う」と話しています。

男性は大学に進学し、1人暮らしを始めた頃から自分の出自について調べ始めましたが、まず、どこの機関に聞けばよいのかさえ分からず苦労したといいます。

東京都で「特別養子縁組」のあっせんを行っていた団体が事業の許可申請を取り下げ、子どもの実の親に関する記録などの行方が一部分からなくなっている問題について、男性は「どこかの支援機関がつまずいただけで子どもの出自に関する情報が引き継がれなくなるということは正直、あまりにもずさんだ」と指摘したうえで「自分の情報を知りたいと思ったときに、情報を管理しているのが民間の団体だろうと行政だろうと、子どもにとっては関係がなく、子どもの不利益にならないような制度作りをしてほしい」と話していました。

男性は今「みそぎ」というペンネームで「特別養子縁組」の当事者として団体を立ち上げて、子どもの立場から情報発信を始めています。

男性は「『特別養子縁組』の子どもたちが抱える悩みに寄り添い、自分の出自や育ちを安心して話せる環境作りを進めていきたい」と話していました。