“1人じゃもう限界” コロナ禍でつながるママたち

“1人じゃもう限界” コロナ禍でつながるママたち
「産んだ時からコロナの影響受けまくりでなかなかママ友できません(;;)」
「コロナ禍出産 ワンオペ育児 育児相談したいです」 

長引くコロナ禍で、いまママ友づくりを目的とするマッチングアプリが大きく登録者数を増やしています。取材してみると「感染が怖く家に引きこもりがちで孤独」「支援施設にも制限があり育児のことを話せる人がいない」など、ママたちが孤独を抱える深刻な背景が見えてきました。
でもオンラインでママ友と出会うって、不安はないの?
お母さんたちの新しいつながり、いったいどんなものなのでしょうか?

(報道局 映像センター 小野沙織)

コロナ禍で難しい子育て支援

取材を始めたきっかけは、友人の「コロナ禍での出産、育児、本当に孤独…」ということばでした。親や友人にも会いにくいうえに、地域の支援施設も人数制限で予約が取れず、イベントも中止。誰とも子育ての話を共有できないことに、とても孤独を感じているということでした。

コロナ禍の子育て支援はいったいどうなっているのか。

まず取材したのは自治体の取り組みです。調べてみると東京都では、ことし1月から妊産婦向けのオンライン相談を始めていました。
妊娠、出産、生まれてきた赤ちゃんのことなど、子育て全般の悩みを助産師にオンラインで相談することができるそうです。

昨年春の感染拡大時に一度実施していたと言いますが、冬の感染再拡大を受け、再びオンラインでの母親たちの支援を決めたといいます。
東京都福祉保健局 宿岩雅弘 事業調整担当課長
「昨年春の緊急事態宣言下において区市町村の両親学級や乳幼児健診の中止・延期など、従来の母子保健事業が限定的になってしまったこと、外出や対面での接触に不安を抱えるお母さんも多いと想定されることから、オンラインで相談できる機会を設けようと実施しました。冬の感染拡大により再び必要性を感じ、再度実施を決めた形です」
NHKが去年秋、自治体などが運営する都内23区643の「地域子育て支援拠点」の施設について調べたアンケートでも、多くの支援の場が縮小を余儀なくされたことがわかっています。

去年の4月から9月までの間に施設を利用した親子の人数は延べおよそ105万人で、おととしの同じ時期に比べ3分の1以下に減少したことがわかりました。
現在は再開した母子保健事業も多いということですが、都では今後も新型コロナの感染状況が見通せないとして、オンライン相談の期間を来年3月末まで延長して行うことを決めたそうです。助産師さんは外出自粛が続き人に会いにくいコロナ禍においては母親たちの孤立や負担の増加が心配されるといいます。
東京都助産師会 理事 伊藤仁子さん
「一番多いのは、地域の子育てイベントの中止などにより、夜泣きのこととか授乳のこととか、本当にささいなことを聞いてほしいという相談です。『ささいなこと』といってもそれを毎日抱えながらすごすお母さんにとってはとても大きいこと。産後のお母さんはホルモンバランスも不安定になっており、最悪の場合抑うつ状態になったり子どもに手をあげてしまうといったことも心配されるので、可能なかぎり1人でため込まず誰かに話してほしいと思います」
伊藤さんは「オンライン相談の中では『頑張っているね』『そうだよね』という言葉をかけると涙されるお母さんも多いですよ」と話してくれました。「母親なんだから弱音をこぼさず頑張らなきゃ」と1人で苦しい思いを抱えているお母さんは、相談に訪れている方以外にもたくさんいるのだろうと感じました。

母親どうしつながる動き

取材を進めていると、ある民間のアプリがコロナ禍で大きく利用者を増やしているということを聞きました。

それが、お母さんどうしがつながるマッチングアプリです。
利用者は「子どもの月齢」や「住む地域」「趣味」「子育ての悩み」などを入力。同じくらいの子どもを育てるお母さんや、「イヤイヤ期」「寝かしつけ」など同じ悩みを持ったお母さんなどとつながることができます。

お互いが「話したい」という意思を示したらマッチング成立。その後は個別にメッセージのやりとりをすることができます。

おととし10月のリリース以来、18万件以上のマッチングが成立。北海道から沖縄まで、全国の母親たちの登録が増えているそうです。

子育て経験から生まれたアプリ

このアプリを開発したのは、都内に住むカーティス裕子さん。

3歳と0歳の2人のお子さんを育てるお母さんです。
みずからの子育て中に感じた「自分と似た価値観を持っていたり、共通点があるママと出会うのが難しい」という思いから、アプリの開発に乗り出しました。

リリースしたよくとしに新型コロナの感染が拡大。その需要はさらに高まっていると感じるといいます。
カーティス裕子さん
「子育て中はただでさえ社会から孤立したような思いを感じることがありました。コロナ禍で気軽に出かけられない、人と会えない中ではさらにお母さんたちのストレスも大きくなっていると思います。会ったことがない人でも同じ状況にいることがわかるだけで気持ちが楽になることもあると思うので、1人で抱えているお母さんのつながりづくりにぜひ利用してほしいです」

先輩ママのことばに救われた

実際にこのアプリを利用しているお母さんにお話をうかがいました。

千葉県に住む早弥香さんです。
娘が生まれたのは去年3月。コロナの感染拡大下での出産となり、実家の親とも会いにくい状況でした。

感染の不安から、家にこもりきりの生活。地域のイベントや健診も中止となり、同世代の子どもを持つお母さんとの出会いもなかったといいます。
早弥香さん
「同じように子育てをしているママ友をつくりたいと思っていたけど、どこに行ったら同じくらいの子を持つお母さんと会えるかわからなかったです。感染が怖く支援センターなどに行くのもためらわれました。初めての子育てで分からないことも多く、孤独でした。私のイライラが娘にも伝わり、泣いてしまったりして、どうしたらよいか分からずいっぱいいっぱいでした」
早弥香さんは保育士ですが、現在は育児休業中です。

子どもと向き合うことには自信がありましたが、自分の子育てとなると分からないことも多かったといいます。

気軽に相談ができるママ友がほしかったと話す早弥香さん。特に娘がよく泣くことを心配していたそうですが、アプリで出会った同じような悩みを経験したお母さんに話を聞いてもらえたことで心が軽くなったと言います。
早弥香さん
「よく泣く子だったので心配だったんですが、自分の子どもより大きな子を育てているお母さんが『うちの子もそうでしたよ』と共感してくれたんです。自分の子どもだけじゃないんだと分かっただけですごく安心しました。みんな同じ状況で子育てしているんだなということが分かって気持ちが救われました」

直接会うママ友に

アプリを通じて知り合ったママ友と実際に会い、支えられているお母さんもいます。

兵庫県に住む千尋さんです。
夫の転勤で地元の新潟県から引っ越し、1歳の娘の子育てをしています。知り合いのいない土地で、楽しみにしていた地域のイベントもコロナで中止になり、家に引きこもりがちになっていたという千尋さん。

近所に住むお母さんたちをアプリで探し、数人のママと実際に会うこともできました。
千尋さん
「同じように初めての子育てをするお母さんと出会いました。区役所でどんな情報が得られるかといった具体的な地元の情報を交換したりしました。『共に戦う仲間』に出会えた感じです。気兼ねなく心のうちを話したり、子どもの成長を喜び合ったりできるママ友の存在に精神的に支えられています」
一方で、アプリで知り合ったお母さんと初めて会う際には子育て支援センター内で会う約束をしたり、はじめは子どもの名前を出すのを控えたり、慎重に出会うようにしたとも話してくれました。

2人のお母さんが共通してお話ししてくれたのは、アプリで「自分に共感してくれる人」と出会えたことがとても大きかったということでした。

直接会うことはできなくても、昔からの友達でなくても、同じ子育てを頑張る母親どうしでつながり励まし合うことができる。オンラインでの出会いという新しい選択肢がお母さんたちの中に生まれているように感じました。

オンラインでのつながり正しく利用して

コロナ禍で活発化する、オンラインでのお母さんどうしのつながり。こうしたオンラインでのつながりを正しく利用するにはどうしたらよいのでしょうか。

情報を健康のためにうまく活用する「ヘルスリテラシー」を専門とされている聖路加国際大学の中山和弘教授にうかがいました。
聖路加国際大学 看護情報学 中山和弘教授
「オンラインの場では、自分の境遇と似た環境にいる人たちとすぐにつながることができるというメリットがあります。このようなコミュニティでは、他の人の話を聞いて悩んでいるのは自分だけではないということを知って安心することができたり、他人の経験を聞いて他の人はどうしたらうまくいった、といったことを自分の学びにするという観察学習ができることなどが期待されます。孤立や孤独は人間にとってとてもつらいことで、メンタルヘルスの面でもこうしたゆるいつながりを持つということは1つの手段としてとてもよいと思います」
一方で、オンラインでつながることのリスクもまた、しっかり認識して使うことが必要だといいます。
聖路加国際大学 看護情報学 中山和弘教授
「自分が誰である、どこに住んでいるなどの情報は、断片的にでも集めて考えれば個人が特定できてしまう可能性もあります。また、一度ネットに上がった情報を完全に削除することは難しいという怖さもあります。オンラインというのはそういうツールだと認識して使うことが非常に大切です」

「また、基本的にはオンラインの情報は本当のことかどうか分からないと思いながら利用することが大事で、医学的な判断が必要な場合はしっかりと医療機関を受診することが必要です。体験談は、専門家の判断と合わせて利用することが非常に大事になってくると思います」

広がる母親たちの「オンライン」のつながり

母親たちをつなぐオンラインの場。いまコロナ禍でさまざまなニーズに合わせた選択肢が生まれています。

全国のお母さんがつながるオンラインお茶会です。
平日15時から毎日15分間、全国のお母さんたちをつないだオンラインによるお茶会が開催されています。妊娠・出産・育児の情報サイトを運営する会社がコロナ禍で母親どうしのつながりを求める声を受けて始めました。

私も実際に参加してみましたが、赤ちゃんやお子さんと一緒に参加されている方も多く見られ、毎回100人以上が参加するそうです。

印象的だったのは皆さんの表情の柔らかさと笑顔。同じお母さんたちとつながる時間が毎日の育児の中でほっと一息つける大切な時間になっていることを感じました。
子どもを預ける保育所を探す「保活」を協力しておこなうアプリも。

見学に行った保育所のデータやメモを共有することで、同じ地域で「保活」をするお母さんたちとつながることができるそうです。

コロナ禍では現地に足を運びにくかったり、園内の見学が制限されたりしているといいます。オンラインでのつながりが、「お母さんどうしの協力体制」となっているのもコロナ禍ならではの特徴だと思いました。
取材を通じて複数のお母さんたちとお話ししましたが、皆さん想像以上の孤独と向き合いながらコロナ禍での育児を頑張っていることが伝わってきました。

同じ境遇にいる人と共感しあえることの重要性を強く感じると共に、場所も時間も選ばず話したい人とつながれるオンラインでの出会いは、コロナ禍以降も“選択肢”の1つとして広がっていくのではないかと思いました。

こうした選択肢は正しい知識を持って利用することができれば、孤独を抱えるお母さんたちを救うことができるのではないかと感じました。
映像センター制作グループ
小野沙織
平成24年入局
名古屋局、沖縄局を経て
映像センターでニュースの制作などを担当