生活保護費引き下げ訴訟 札幌地裁 きょう判決

生活保護費の基準額が段階的に引き下げられたことをめぐり、北海道の受給者が最低限度の生活を保障した憲法に違反するとして引き下げの取り消しを求めた裁判の判決が札幌地方裁判所で言い渡されます。同様の裁判の判決ではことし2月、大阪地裁が引き下げを取り消していて、今回の裁判所の判断が注目されます。

生活保護費のうち、食費や光熱費など生活費部分の基準額について、国は物価の下落などを反映させる形で平成25年から27年にかけて最大で10%引き下げました。

これについて北海道内の受給者およそ130人は「最低限度の生活を保障した憲法に違反する」として、自治体が行った引き下げの取り消しを求める訴えを起こしました。

裁判では、国が基準額を算定する際の方法や手続きに問題があったかどうかが争点となり、原告側は引き下げ幅が大きくなるよう恣意(しい)的な方法がとられたなどと主張しました。

一方、自治体側は、どのように算定するのかは目的に応じた政策的な判断であり、国の裁量権の範囲内で問題はなかったなどと主張し、訴えを退けるよう求めています。

この裁判の判決が、29日午後2時に札幌地方裁判所で言い渡されます。

原告の弁護団によりますと、全国で起こされた同様の集団訴訟での判決は今回が3件目です。

裁判 大きく2つの争点

裁判では、国が基準額を算定する際の方法や手続きに問題があったかどうかをめぐって大きく2つの争点がありました。

(1)物価下落率の算定
1つ目が、引き下げを決める際に考慮された物価の下落率の算定方法です。

原告側は、物価が特に高かった平成20年を起点に算定した結果、下落率が大きくなったうえ、算定の際に考慮した商品にもパソコンやテレビなど価格が大きく下がった家電製品が含まれていて、下落率を大きくするために恣意的(しいてき)な方法がとられたと主張しました。

被告の自治体側は、どのような数値を用いて算定するかは目的に応じた政策的な判断であり、国の裁量権の範囲内だと反論しました。

(2)専門家への諮問
2つ目の争点は、物価の下落率を反映させることを専門家でつくる厚生労働省の部会に諮らないまま決めた手続きについてです。

原告側は、部会に諮らないまま反映させた手続きには問題があると主張しました。

自治体側は、部会に意見を聞くことが法律上必要だとはされておらず、問題はなかったと主張しました。

ほかの裁判では 争点の判断分かれる

全国で起きている同様の集団訴訟でもこうした点が争いになっています。

訴えを退けた去年6月の名古屋地裁は「国の判断や手続きに誤りがあったとはいえない」としましたが、ことし2月に引き下げを取り消した大阪地裁は「物価が上昇した平成20年を物価変動を見る期間の起点にしたため、下落率が大きくなるのは明らかだ。国の判断や手続きに誤りがあり、違法だ」などと指摘しました。

原告「弱者は早く死ねと言われているよう」

札幌市内に住む後藤昭治さん(83)は今回の集団訴訟で原告団長を務めています。

後藤さんは17年前、大腸にがんが見つかり、入退院を繰り返したことでそれまで勤めていた土木工事会社を解雇されました。その後病状は落ち着いたものの新たな仕事に就けず、生活保護を受けることになりました。

これまでの支給額は季節によって幅があるものの、ひと月当たり5万5000円から7万5000円。妻の京子さん(79)の年金も使って、なんとか生活費をやりくりしてきました。

ところが、平成25年以降、毎月の支給額は5000円引き下げられました。

今では食費をできるかぎり切り詰めるとともに光熱費を節約するため、冬場の入浴は1週間に1回にとどめています。

これ以上、何を節約したらいいのか。頭を悩ませる毎日だという後藤さん。

「倹約できるのは食費しかありません。これでは『弱者は早く死ね』と言われているようなものです。生活保護費を増やしてほしいとは言いませんが、せめて元の金額に戻してもらいたいです」と話していました。